『図書館の神様』 瀬尾まいこ マガジンハウス - 2003年12月21日(日) まさに、“人生の分岐点となる1冊”なのかもしれません。 《bk1へ》 《Amazonへ》 デビュー作の『卵の緒』で独自の瑞々しいタッチでその才能を世間に知らしめた瀬尾さんの第2弾ですが、デビュー作以上にその持ち味を発揮してるような気がする。 過去のトラウマや不倫に悩みつつも地方の高校で講師として働く清(きよ)。 顧問となった文芸部において柿内君と知り合い、文学にも馴染む事によって彼女の人生観は変化していく・・・ 瀬尾さんの描く主人公ってしっかり物のようで気弱な人物が主流となっている。 本作は浅見さんとの不倫に悩む姿は少しリアルな面もあって、前作(『卵の緒』)より深い踏み込みを感じた。 あいかわらず食べ物の描写のたとえなんかは絶品で、楽しく読めることは間違いのないところだと思う。 主人公の一年を通して成長して行く姿が私にはいいクリスマスプレゼントとなりました。 瀬尾さんのいいところは他の女性作家にありがちな“現実離れしすぎた描写”じゃなくって、“新鮮な発想によってもたらされる瑞々しい描写”だと思う。 誰もがちょっとした気持ちの持ちようで叶うようなことを読者に教えてくれる点は称賛に値する。 あと、文体が溌剌としていて非常に読みやすい点も歯切れが良く好印象だ。 そう、タイトルに図書館って書いてあるけど決して図書館で借りないでいつも本棚に飾って読み返して欲しい作品だ。 本好きな人のというか小説好きな人の考えを瀬尾さんが代弁してくれてるシーンを引用したく思う。 文学を通せば、何年も前に生きてた人と同じものを見れるんだ。見ず知らずの女の人に恋することだってできる。自分の中のものを切り出してくることだってできる。とにかくそこにいながらにして、たいていのことができてしまう。のび太はタイムマシーンに乗って時代を超えて、どこでもドアで世界を回る。マゼランは船で、ライト兄弟は飛行機で新しい世界に飛んでいく。僕は本を開いてそれをする。 今回は驚くべき感動の結末が用意されている。長編ならではのはからいだ。 最後のせつない手紙にジーンと来た人のすべてが、明日からの前向きな生活を迎えられることを願って書かれたと信じてやみません。 愛する女性がいる人は是非プレゼントしたい作品です。自信を持ってオススメします。 評価10点。超オススメ ...
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