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『誰そ彼れ心中』 諸田玲子 新潮文庫 - 2003年11月22日(土) 新潮文庫から文庫化された作品で、宇江佐真理さんが解説を担当されてます。 《bk1へ》 《Amazonへ》 諸田さん著作リストは《こちら》 本作は諸田さんの初期の代表作といえそうな作品だと思います。 最初に好きなシーンを引用しますね。 『父上は母上が大事ゆえ、後添えをもらわなかったと申されました。あのときはようわかりませんでしたが、今はわたくしにもわかります。心から思うたお人はこの世にひとり。死ぬも生きるも、思うたお方と共にあることが、女子の一番の幸せにございます。』 女性の繊細な心模様を確かな筆致で楽しめる作品と言えそうです。 一気に読ませてくれるラブ・サスペンス調のミステリーって感じでしょうかね。 主人公の瑞枝の心の動きの描写が花にも例えられて本当に素晴らしい。 御家人の家から旗本の家に嫁いだ主人公が、夫の様子の変化に気づき悩む姿が共感を呼びます。 孤立した瑞枝に救いの手をさしのべる、小十郎・おはる・大島・・・ 夫が本当に入れ替わったかどうかというミステリー的興味と、身分違いの小十郎との禁断の恋という2本の柱が読者を襲ってくれるので一気に読めること間違いなし。 とっても印象的なのはやはり誰の子供かわからない状況で堕胎を決心しようとするシーンでしょうね。 近作、『恋ほおずき』でも似た題材で語られてますが現代社会にも通じる問題なんですが、生死を賭けたという意味合いにおいては当時の人の大変な決心が読み取れます。 あと、実家の妹多美の結婚が顔見知り同志で行われる点に瑞枝がとっても羨ましく感じているシーンを書き留めておきたく思います。当時の世相を反映した場面ですね。 ただ、結末に関してはいろんな捉え方が出来そうですが、瑞枝の状況を考慮したら仕方がないような気がします。 切ないがこれが幸せなんだと信じてページを閉じてもらいたいですね。 きっと女性が読まれたら小十郎への想いが募って行く過程が楽しめると確信しております。 評価8点。 ...
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