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『真夜中のマーチ』 奥田英朗 集英社 - 2003年10月12日(日)
奥田さんの新刊は『イン・ザ・プール』に似た感じの作品と言えるかな。 《bk1へ》 《Amazonへ》 違いは本作の方がスピード感が溢れている事。あと、逆にキャラクター的には伊良部先生みたいな絶対的な(ボブ・サップのような)人物は出てきません。 どちらかと言えば等身大に近い感じでしょうかね。
スピード感溢れる展開とウィットに富んでてユーモラスな会話が魅力の作品となってる本作は、同じ犯罪に焦点を当てた『最悪』とは全然内容が違う。 登場人物の深刻感というか悲壮感が全くなく、楽観的なキャラクターの代名詞のような登場人物(いや、犬もいます)が活躍するので気軽に読めること間違いなし。 読者の周りにもいそうな人物が登場するのが本作を身近に楽しめるものとしている。 きっと奥田さんにしたらとは180度違った軽い犯罪小説を書きたかったのでしょうね。
あと、読んでて気づいたのは車や音楽の趣味なんかに関しても奥田さんのきめの細かい心配りが生かされ、よりストーリーを洒落たものとしている点も見逃せない点である。
構成的には3章に分かれていて、各章とも主人公と言うか話が3人の登場人物がバトンタッチで語られている。 知らずのうちに3人が打ちとけあって連帯感が芽生える点は見事ですね。 ちょっとそれぞれの過去の生い立ち等のエピソードが少ないのが残念ですが、この手の小説にはあんまり必要ないのかもしれませんね(笑) 読み始めは馴染みにくかったヨコケンとミタゾウ。次第に応援する立場と変わるあたりは読んでてビックリ。
ヨコケンとクロチェの恋模様も気になりましたがもうちょっと書いて欲しかったけど、これもこの手の小説には必要ないかな。 ちょっと評価の分かれる点かもしれませんね。 でも、適度にギャグをまじえてるあたりは師匠(?)の浅田次郎さんのお笑い系に通じるものが十分に感じられた。 引用しますね。 『向こうの若い衆が出てくるさ。こっちは支持してりゃあいい。それよりタケシ、床屋へ行ってこいって言っただろう』
『だって、もう少し伸ばしてベッカムみたいにしたいんだもん』
『誰だそれは。競馬のジョッキーか』
果たして完全犯罪はなるのでしょうか? 読んでのお楽しみと言う事で・・・ でも映画を観てるような感覚にされる作品なんで居眠りは厳禁ですよ。 一気に読んでくださいね。 (レビューもウィットに富ませました)
評価8点
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