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『甘露梅 お針子おとせ吉原春秋』(再読) 宇江佐真理 光文社 - 2003年06月14日(土)

連作短篇集の名手、宇江佐さんの上手さが際立った作品です。
初めて読んだ時より感動が深かったような気がしました。
切なくて感動的な物語だ。読後感もいい。
とにかく、普通の長編小説じゃなくって1篇1篇楽しめる。特に各篇のエンディングがとっても印象的で上手くまとめている。

宇江佐さん著作リスト《こちら》

新吉原という遊郭を舞台とした命がけの恋が描かれてます。
岡引の主人をなくした後家さんの“おとせ”が「海老屋」という遊女屋でお針子として奉公する一年あまりを季節感たっぷりと描いています。
あんまり深読みすると落藉などの話も出てくるので悲しすぎるかもしれませんが・・・

内容はあえて詳しくは触れませんが、禁じられた恋の“喜蝶と筆吉”と“おとせと凧助”。この2組の恋の行方がどうなるかがポイントで目が離せません。
どの話もいい話ばかりだが、特に「くくり猿」と最後の「仮宅・雪景色」は圧巻です。

宇江佐さんの人物造型の確かさは定評のあるところであるが、本作は特に“おとせ”が人間らしくてとっても共感できる。
最後の“おとせ”の決断には女としてのいとおしさが漂ってるように思えます。ちょっとした女心の変化を自然とした流れで描き出している点は見逃せない。

人を想うという素直な気持ちを想い出させてくれる秀作です。
宇江佐さんの作品の中ではもっとも情感溢れた作品といえるかもしれませんね。
読者が同性であれ異性であれ主人公に恋をする物語です。
おとせのやさしさと哀しさ、是非味わってください。

評価9点。オススメ


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