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『一の富 並木拍子郎種取帳』 松井今朝子 角川春樹事務所 - 2003年06月08日(日)

5編からなる連作短編集です。
主人公の拍子郎は武士であるが、狂言作者になりたい為に人気狂言作者の並木五瓶に弟子入りする。
サブタイトルの“種取帳”からもわかるように芝居のタネになる話を師匠の五瓶に毎回持ってくる。
それぞれの話が、芝居の話とリンクしておるので芝居話等に興味のある人は結構楽しめるかもしれませんが・・・

普段、宇江佐真理さんの平易な文章をたくさん読んでるので、どうしても読みにくいなあという先入観を持って読んでしまったのが残念な気がする。

内容も、本作(捕物帖)のようなタイプの作品はどうしても登場人物のキャラが一番その作品を左右するポイントとなるのだが、正直言って拍子郎の存在感が薄すぎて少し物足りなかった。
一方、ヒロインのおあさは元気が良くなかなかいい感じであるが、2人のバランスが取れてないだけに残念。

だんだん、惹かれ合って行く拍子郎とおあさだがもっと2人の恋愛部分を熱く語ったほうが良かったような気もする。
捕物要素が強すぎるかな、ちょっとありきたりな感じは最後まで拭えなかった。
基本的に長編の方が持ち味の出る作家さんだと言えそうですね。

ただし、最後の表題作「一の富」が良かっただけに、続編も出た(タイトル名『二枚目』)みたいなんでそちらも機会があれば読みたいとは思う。

そうそう、おあさの作る料理の描写は季節感が滲み出てたと思います。

評価6点。


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