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「あおげば尊し」 重松清 小説新潮4月号掲載 - 2003年04月18日(金)

「小説新潮」2003年4月号に掲載された中編です。「まゆみのマーチ」とともに早く単行本化してほしいです。
作品のテイスト的には『小さき者へ』『カカシの夏休み』よりもう少しシリアスなものとなっている。

主人公は40才。小学校の先生をしている。ガンに冒され死を直前に控えた父は元高校教師。厳しさをモットーとしすぎた為に、教え子は誰もお見舞いに来ない。その父を自宅で引き取ることとなるのだが・・・

またまた心に響く作品である。なんといっても主人公の教え子の康弘君がいい。少し複雑な家庭環境であることが後半わかってくるが、この少年がある意味で物事をまっすぐに捉えてるところが主人公と共通している点が見逃せない。

重松さんの主人公はおおむね少し気が弱くてお人よしだ。一方で頑固で情が深い面もある。エンディングでいつも一歩成長した姿を見せてくれる。そこがある時は微笑ましくある時は涙を誘う。
小説を通してリアルに読者に問題を提起してくれる。今回は“親の死”によって“親を看取る”という誰もが経験しなければいけないシチュエーションを用意してくれた。

主人公は父の病状を自分の生徒たちに見せてあげます。確かに教育者としては間違ってるかもしれないという気持ちを持ちながらも、父の人生自体を正当化します。最後の親孝行といったらいいのでしょうねきっと・・・
でも残ったのは康弘君だけでした。

父の最後の教え子である康弘君、願わくばずっと『あおげば尊し』を歌ってあげてください。

評価9点。オススメ!


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