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『ボランティア・スピリット』 永井するみ 光文社 - 2003年01月10日(金)

地方都市の市民センターにて、週2回行われている日本語教室。先生側は特に資格もいらず、一方生徒側も月に500円の管理費で習える。そこで起こる日常の事件をミステリータッチで描いた、9編からなる連作短編集です。

初読みの永井するみさん。本作品は4年余り雑誌に連載されてたものだが、全体の構成もよく、主要登場人物が上手く繋がっており、読み進めていくうちに、徐々に筆者の筆力アップが垣間見られたような気がした。文章は読みやすくサクサク読めました。

まず、先生側の日本人と生徒側の外国人とのお互いの視点のバランスが絶妙!
生徒の配偶者や恋人の行動も滑稽に描いている点も見逃せません。

女性3人(道子・静乃・香美)それぞれの志願動機からして三者三様で面白い。
特に道子のキャラ設定は全体を通して最も光ってるように思える。
ひとことで本作品の特徴を言えば、人間のいやらしさ・醜さ・弱さを『ボランティア=善行』という鏡を通して鋭く抉り出している点だと思う。

各編におけるラストの締め方も適度にぼかして、却って印象的なものとなっている。
読後、偏見や差別に対する認識が変わった人も多いはず。
永井さんのネットでのレビューを見れば、長編の方が面白いとの意見が多いので、是非読み進めて行きたく思う。

評価8点。


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