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『花の下にて春死なむ』 北森鴻 講談社文庫 - 2003年01月08日(水)

satomi委員長おすすめの普及委員会の作品です。
初読みの北森鴻さん、連作短編集の名手たる所以が十分に理解できる1冊となっている。

三軒茶屋にあるこじんまりしたビアバー「香菜里屋」のマスター、工藤哲也を探偵役としたちょっぴり切ないが深みのある6編からなる連作短編集で、日本推理作家協会賞の受賞作となってます。

まずマスター工藤のキャラクターがとってもいい。気配りがとっても効いて謎にも包まれている。もちろん料理も美味しく振る舞ってくれて気持ちが和やかになります。
1編ごと進んで行くうちに徐々に常連客も紹介され、皆が家族みたいに打ち解けて行く展開も秀逸。料理はもちろんのことアルコール度数の違う4種類のビール、気分に応じて飲み分けたくなったのは私だけじゃないはずです。

特に、片岡草魚と飯島七緒が登場する最初と最後の2編は人生の悲哀が凝縮されていてせつなさとミステリーの楽しさを両方堪能出来ます。
あと「終の棲み家」も泣ける話です。
ただ恋愛度においては『ふたたびの虹』の方が楽しめるとは思います。逆にミステリー度では本作の方が上のような気がしました。

評価8点。


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