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| 2003年06月17日(火) |
漫画描きにとっての原画 |
まず ほとんどの漫画描きにとって とても悲しい事件が起こっているようです。
いつも見に行っていたとある漫画家さんの日記。 事は漫画界全体におよぶお話。
編集部から未返却だったご自分の漫画の原稿が まるごと なんと30本以上 漫画専門古本屋にて売られていたのだそうよ。 (その編集部はかなり前に倒産してもうないそうです)
一本、32ページなら32ページ まるごと いくら、と。
読者さんからの知らせで 問題の古本屋に 「それは盗品だから売らないで下さい」と言っても とりあって下さらなかったそうです。 「まず警察に行って盗難届をどうぞ」
そして 警察に駆け込んだ時 盗難届さえ出させてくれなかったそうです。 そして ある警察官はこう言ったと。
「あなたにとってそれは財産かも知れないけど 興味ない人にとってはただの紙切れですからね」
それをおっしゃるなら 美術品のたぐいだってそうじゃないの? 極端な話 紙幣だってそうじゃないの?
もちろん名のある芸術家と 名もない自称芸術家の作品とに 値段における 価値の違いがあるのはあたりまえのこと。 でもそれがその本人のものであり、 盗んだら犯罪、と言う事は同じではないかしら?
世界一といわれるほど漫画文化が進んでいる この日本のお話で こうなのね。 知ってたけど。
漫画家の地位と言うのは ある一部の大御所を除いて驚くほど低いのね。
その、日記の漫画家さんは 漫画家がこれ以上なめられないために 今 懸命に戦おうとしていらっしゃいます。
これは あたくしがラフ画をばらまこうとしているのと わけが違うのです。
わけが違うけれど あたくしがやろうとしていることが この事件を解決しようとする事の 足を引っ張ったりは ちょっとでもしないだろうかと 心配になったのも事実です。
原画 特に漫画原稿というものを 手放す作家はまずいません。 たとえそれが もうコミックスにもなり これ以上は商品として価値がない と言う事になってもです。 原稿というものは漫画家にとって 特別なものなのです。 世界にただひとつの手作りの品ですしね。
ごくまれに 原稿を売る漫画家さんもいらっしゃいますが 漫画家の中で語り継がれちゃうくらい 珍しい事なのです。
それが たくさんの漫画家の 大量の作品が一ケ所で売られてるなんて ありえないことなのです。
出回った経緯がはっきりしているのでなければ 買わないで下さい。 それは盗品の可能性がとても高いのです。
漫画家としては 警察がとりあってくれず 売っているお店もとりあってくれないのなら 自分の子供が目の前で叩き売られていても できる事は その値段でその子を買い戻す事だけなのです。
なんだか 誘拐された子供を取りかえそうと 警察に駆け込んだら 「身代金をはらえば?」と言われたような気分です。
警察が動けないのも それなりの理由があるでしょう。
漫画の原稿を出版社に渡す時 契約書というものは まず発生しません。 信用取り引き 口約束で 「何月に何ページお願いします」というだけなのです。 この御時世に 信じられない話ですけど それがこの世界の慣例なのです。 コミックスになる時、はじめて契約書が出て参りますが それもない出版社も珍しくはありません。
世の中ではたぶん もしかしたらごく一部の編集さんでさえ、 原稿料は原稿を買い取った値段だと 認識している事が多いみたいです。
そうではなく その原稿を印刷して出版する権利を やりとりしているのです。
あたくしもプロの編集さんとではなく 漫画の出版をしたことのない団体のお仕事も けっこうしてきましたが、 原稿そのものを買い取ったのだと思っている方は やはり多いようでした。
原稿そのものと 著作権は その作家のものなのです。
けれど契約書が存在しない場合 警察にそれをどう証明できるでしょうか。 大手の出版社や大漫画家さんたちが 声をそろえて 「それがこの世界の常識なんだ〜」と 叫ぶしかないのでしょうか。 ないのかも。
今 あたくしは かたずをのんで この事件の行方を見守っています。 たくさんの漫画家さんもそうだと思います。
あたくしが今回やらかそうとしてる ラフ画を差し上げますという企画ですが。
漫画家が原稿を手放す事など まずありえません!という主張をするには 説得力のない所業かもしれませんが これは「漫画原稿」ではありません。 完成した「漫画原稿」が他にあるからこそ できる事です。
先に言っておいちゃいますが 始めから売る目的で 申し込みするのは勘弁してやって下さい。 あたくしのラフ画なんざ売れるシロモノではありません。 あたくしの作品を愛して喜んで下さる読者ちゃんとの コミニュケーションのひとつとして企画しました。 ほとんどの方は それをわかって申し込んで下さっていると思います。 けれど ごく一部の好意でない方もいらっしゃるかもしれません。
でもね そのごく一部の あるかないかわからない 「好意じゃない思い」の危険性の為に これをやめようとは思いません。 1人の困ったちゃんのために 10人の良い子ちゃんがつまらない思いをする、 というのは あたくし的には納得がいかないのです。 好意を持っていない人より 好意を持って下さっている人の方を大事にしたいのは 人情というものでございます。
こういう事を書く事自体が 「あたくしを疑っている?」と 申し込んで下さった、 あるいは申し込もうとしている 読者ちゃん達を不愉快にさせると思います。
そうではないとわかって下さいまし。
読者ちゃん達と一緒におもしろがりたいのです。
今回 ラフ画をお送りする方々には これが あたくし本人から出たモノであると 証明するサインをつけます。 大袈裟で、はずかしいですけど 万が一にも 盗品だとか ゴミ箱からあさったものであるとか 思われないように。(そういう事件もあったそうです)
ああ、なんだか ほんのお遊びのつもりのものが 大袈裟になってしまったようで ほんとに恥ずかしいんですけれど ほんのお遊びが ナニカの火種になるようなことは ぜひとも避けたいので。
今回、 自分の原稿を売りさばかれてしまい もうたぶん2度と手元にはもどらないであろう 漫画家さんたちの心労を思うに 漫画家が気楽に原画を手放すものと 誤解を与える事のないようにとの願いからです。
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