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随筆
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2006年06月03日(土) レビュー〜沈黙の王〜文春文庫

ネタが尽きている時の逃避になりそうです。
宮城谷さんの中では数少ない短編集ですね。
一つ一つは短いので読みやすいです。
私は長文の方が好きなのですが。
一つずつ短めにレビューしていこうと思います。

表題にもなっている、『沈黙の王』
中国で初めて文字を作った王様の話です。
うまくしゃべれない、次の王様候補が、言葉を求めて旅をするのです。
旅の途中、夢の中でお告げを見ます。
それを信じて旅をし、ついに自分の心の声を聞いてくれ、それを周囲に伝えてくれる傅説(ふえつ)と出会います。
傅説と会ったときもそうですが、未来の王妃様と会ったときなど、出会いの場面が素敵に描かれている作品です。
『そんなうまい話あるか』とか思っちゃだめです。

次は『地中の火』
天空の舟よりも前の時代の作品なんですよ。すごくね?
資料も何もあったもんじゃないと思うんですが・・・。
夏王朝を一時的に滅ぼした后羿(こうげい)に仕えていた寒浞(かんそく)という人が、后羿を殺して、更に夏の王様もだまし殺して、王様になるが、結局夏の王様の遺児に殺され、夏王朝はそのまま存続するという、三日天下的お話。
どうもこの寒浞が好きになれず(自分を拾ってくれた人を殺すんだもんなぁ)さらっと読んでしまいました。
でも、このタイプの話は珍しいかも知れません。
非常に人間臭い主人公でした。

『妖異記』
周王朝滅亡の時を様々な人の視点で追うお話。
褒娰という、笑わない王妃様の事は何かで知っていたのですが、多分絵本だったかなぁ?
いつも笑わないのに、王朝が危ない!って意味ののろしをあげて、皆が集まったときだけ笑うのですよ。
で、王様はこの笑顔が見たい為だけに、危なくもないのにのろしを上げ続け、しまいには誰も来なくなって滅ぶという、なんとも間抜けな・・・日本で言うと『狼が来た!』って嘘つく少年の話に似てるかも。

そんな間抜けな滅亡の時に、最後まで格好良かったのは、伯陽っていう、書物を守る人。
『王様の最後を見届けて文字にする』と言って、軍人でもないのに最後までお供した人でした。
結局王様は何も言わずに死んでしまって、それを見届けた瞬間に彼も死ぬんですが・・・。
王様、もっと頑張れ。

『豊穣の門』
『妖異記』に引き続き、周滅亡。
今度は、これまた伯陽と共に最後まで王様に従って亡くなった、友(ゆう)という人望の厚い地方の王様(?)のお話。
すんごくいい人なんですが、自分の国を守る為に、自分は滅亡する王様の下につき従い、子供や領民は色んな所に四散させておく、周到な面を持ち合わせた人でした。
でも、それがとても必要だったんだろうなぁとも思います。
最終的に、友を殺した人に頭を下げて国を守った長男の悔しさなんかも垣間見えます。
けどこの長男も結構したたかな人で・・・そこまでは詳しく書かれませんでしたが、なんにせよ、この父子は強いなぁって感想。

『鳳凰の冠』
群雄割拠の時代の群雄の一人、叔向の話。
ちょっと恋愛が混ざったミステリーって色合いもあります。
ちょっと最後に『あれ?』みたいな。
ものすごく真面目な人でしたが、この人の母親がものすごくヒステリーに書かれていて、対照的すぎ。
でも、この人の母親って、こう書かれるとヒステリーの一言で嫌いになりますが、よくよく考えるとものすごく普通の人に見えます。
そう見える私はダメ女ですか。
よくあることじゃないのか。夫に出来た美人の愛妾(この頃一夫多妻制ね)とか、自分の息子が嫁にしたい美人で評判のよくない女の娘とかに嫉妬すんのって。
頑固すぎて、自分の息子が好きすぎて、息子に嫌われるタイプの人で、ある意味かわいそうでした。
いい人間になるのは難しいなぁ。


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