Kyoto Sanga Sketch Book
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2006年01月29日(日) 【水戸戦第37節・甲府戦第44節】〜紫と青の万華鏡(三度目の昇格)

ゴール裏でレプリカユニと旗とマフラーとが踊り、ぐちゃぐちゃになる。
ピッチでは選手たちが抱き合う。
そんな毎試合繰り広げられているような光景も、
昇格の日は特別な出来事になる。たとえ三度目でも。


最終節。
晩秋の京都の冷たい風の中で、
アウェイの青い選手たちが攻め続けていました。
そしてゴールの瞬間、
対岸のアウェイゴール裏の甲府を表す2色、青と白。
その色の数百のユニと旗が躍動し、
その色がサイケデリックに、まるで万華鏡のように混ざって。

「1ヶ月半前にもテレビの中で、似たような光景を見たなあ」
あれも同じ西京極。あの時は紫。





■第37節水戸戦。紫のゴール裏。


あの時、10月22日水戸戦。
試合前の監督の言葉は印象深いものでした。
「君達はプロフェッショナルだ。
だからお金を払ってきている客が満足するプレーを。それは勝利。
ほかのことは気にせず、勝利に向かってプレーしなさい」

J2でひたすら首位独走をした降格2年目の秋。
今日、勝たなくても昇格が決まるかもしれない。
だからこそ、その言葉はかえって重いもの。
今日の大切さを伝えるもの。

爆走する今年の京都は、このリーグでは特別な存在。
だから今日は勝って昇格を決める。


<前半>

2年かかって作りあげた京都の攻撃が、
深く守る水戸を攻めていました。

最終ラインのリカルドが悟のフォローを受け、少し前に出てボールを送る。
中心の斉藤や米田に素早く操られたボールが右を駆ける大志に渡る。
左から中に切れ込む中払。
サイドバック和裕や三上は、どんどんMF達を追い越していく。
前線のパウとアレモンは献身的に守備をしながら、いつでもゴールを狙う。

そしてまたパウリーニョの低い球がゴールに直進する。

J2サッカーのスピードのなかで、
ボールと11人の選手が正確に動いている。
第1クール、第2クールの時とは違う。全員がチャンスは攻撃に向かう。
あとはゴールを決めるだけ。しかし…

中払のシュートはゴールのわずか上。
三上のシュートはDFにクリア。
アレモンのシュートはクロスバーに弾かれて、
悟の頭はコーナーキックに合わない。
中払の無人のゴールへのシュートもクロスバーに。

水戸の人数をかけた守備にも跳ね返され、
京都のシュートはきまらない。
サポーターの声もだんだんやけくそに。

そして前半42分。その瞬間、
なんと「四人」もの京都選手がゴールに向かっていた。

右からリカルドと大志、
中央からアレモン、そして左からパウリーニョ。
中払が中盤で奪い、米田がそれを受けて右に流れた。
そしてそれはパウリーニョへ。

京都先制。京都1−0水戸


<後半>

雨にピッチが少し濡れて光っている。
この緊張感すら心地よい感じ。

水戸の攻めの時間。
京都のDFのマークがずれ、何度か危機を招く。
押され出したDFの集中が切れ出す。

しかし後半14分。
大志がゴールに向かって切れ込んだ。
パウリーニョがダイレクトシュート。京都2−0水戸。
スタジアムに橋を架けるような大きな虹に、
歓声が響いているのが聞こえる。

後半21分。
水戸ファピオの得点で1点返された。京都2−1水戸

しかし田原と星、美尾が投入されていた。京都のスローイン。
左から相手二人の挟み込みをかわした美尾が、
そのままラインを超えてしまう勢いで突進。
ゴール前中央にフリーで走りこんだ星。そのボールを蹴り上げた。

3点目。ついに京都は突き放した。

美尾が走りながら、カモンカモンと右手で煽る。
星を先頭に選手たちがベンチに向かって走っていく。
ベンチから黒いコートの選手たちも出てきました。

そして4年前、9年前と同じ光景が。

今の選手たちが抱き合い、肩を叩き合っている。
ひるがえるゴール裏の紫の旗。ぐちゃぐちゃになる紫のユニフォーム。
スタジアムDJの叫び。
ブラウン管に映るサポーターのゴール裏は、
紫が小刻みに揺れて、次第に大きく渦のようになっていく。
ベンチから飛び出す黒いコートの選手たち。

両手を広げ、監督に体ごと飛んで抱きつく星に、
黒いコートの控え選手たちが抱きつき、美尾が飛びのり、
斉藤やパウリーニョも彼を祝福。
よろめく監督の腕から星が落ちる。
それでも選手たちが星に覆い被さって騒いでいました。


昇格を決めた時の騒ぎは、J1での勝利とはまた違うもの。解放されて前に行ける喜びだから、ってことかな。



■最終第44節。青いアウェイゴール裏


それから1ヶ月半後。私も今日はここ、西京極で甲府を迎えて生参戦。
もう京都はずっと前に優勝を決めている。
冬を迎える西京極の風は冷たくて、凍えそう。

「ヴァ−ンフォーレ、ヴァ−ンフォーレ」。
アウェイサポーターたちの熱気のこもった声。
彼らが入れ替え戦参加権を得るには、今日J2王者に勝たなくてはならない。
しかも仙台が今日引き分け以上ならその望みはない。

雨が降りそう。
でも恐ろしいことに、この寒さの中でも甲府選手たちはほぼ半袖…!
(後から気がつきました)

甲府の攻めに、深いところで網を張るように待ち伏せる京都。
攻められている時は、FWのみ前に置いて
全員が次の攻撃の為にセーフティに引くのが今年の京都。

今まではカウンター攻撃もできる今年だからこそ、それもワクワクして見れた。
でも、今日は甲府の攻めに、京都はあまりに防戦一方。

バレーを封じても、長谷川が、藤田が、次々と攻めて来る。

互いのサポーターの歌が響くなか。
やっと、鮮やかな紫の選手たちがピッチを大きく使うように広がった。
やっと大きくボールを回し出す。ここから攻撃が始まるはずだったのに…

最終ライン、リカルドのミス。
次の瞬間、
遠く向かい側のアウェイゴール裏の青い旗がひるがえった。

甲府サポーターの白いシャツとその上に着た青いユニ、
青いタオルマフラーの白抜きの文字。
その対岸の青と白が躍動し、
その色がぐちゃぐちゃに、万華鏡のように混ざっていく。

甲府が追加点。京都1−2甲府
J1で熾烈な優勝争いが繰り広げられていた日のことでした。

試合終了。
甲府選手とサポーターは足早に、西京極を見る見る去っていく。
甲府に帰るバスはすぐに西京極を発つとか。

「4年前に仙台サポの時と同じように、
おめでとう、と言いたかったんだけどな」





…にしても、今日は寒すぎ。
監督らの挨拶。選手が一周してボールをスタンドに投げ入れる。
昇格&優勝を祝して全員で紫のテープを投げ入れたり、
風船を飛ばしたり。しかしこの寒さに人がどんどん減っている。

そりゃ嬉しい。でも昇格も優勝も義務だったんだもの。
もうここには帰ってこない…はず。

「甲府、この勢いなら柏に勝っちゃうかも。」
「ありえる、ありえる。」そんな声があちこちで。

昇格できるチームが持つのは、選手スタッフの個々の力、クラブの堅実な尽力、
そして人々の昇格への執念。
(では降格しない為には…?エレベーターな時もあったね、と笑えた時にまた(笑))


そういえば、仙台サポが甲府の追加点を知った時の叫びにこんなのが。
「ついに京都にふられたあーーー!!!」
←ごめんね、5年間の同士よ。でももうどこと一緒だろうが、こんな恐ろしいリーグにいたくないよぉ。。



翌週。京都、福岡に続けて甲府のJ1昇格が決まる。


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