HIS AND HER LOG

2007年07月25日(水) ニケの子ども

「目、つぶんな」
「あ、え…」
「ほら、力抜いて、寝るのに緊張してどうすんの」
「あ、あのっ」
「よしよし」

ふと、三橋は頭に熱を感じた。
そして、それが涼子の手であることに気付いた。
かきまぜるように、慈しむように、彼女は彼の髪に触れていた。

「おやすみ、三橋」

頬と、頭の上から伝わる自分のものでないその温度に、
三橋の身体は少しずつ柔らかく融けていく。
例えばそれは、遠い昔に母親に抱かれて眠ったときのように、
更に言えばその子宮の中で揺られて覚醒を待ったときのように、
安らかな感覚であった。
三橋は、自分の意識が段々と「向こうの方」に消えていくのを何となく感じた。


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