HIS AND HER LOG

2007年03月27日(火) ブラック・マリア


「きれいね」

そう言ってつぐみは目を細めた。きれいね、あなたの髪。
スクアーロは願掛けのために伸ばしたその銀髪が、今この時のためにあるのではないか、と錯覚しそうになり、自嘲した。
つぐみの髪は亜麻色で、ふわふわとしたウェーブがとても魅力的だった。
誰かはそれを天使のようだと言ったし、別の誰かはそれを女神のようだと言った。
彼は、それを聖母マリアのようだと思っていた。
しかし実際にはつぐみは天使でも、女神でも、マリアでもない、ただの殺し屋であり、だから彼らのその位置づけは一つの懺悔のようなものであった。
つぐみをマリアとするスクアーロも、沢田綱吉をメシアとするつぐみも、降りかかる血の重圧に耐え切れない小さな人間にすぎないのだ。
彼らはそれに気付いているようであり、また、気付かないようにしているようでもあった。

「・・・別にいいことないぞお、こんな髪」
「そう?私はうらやましいけれど」
「なんでだあ」
「女は美しいものに目がないのよ」
「・・・」
「でも、任務の時は少し邪魔?」
「まあなあ、あと」
「あと?」
「血が目立つ」
「・・・そうね・・・」

つぐみは任務のとき、必ず黒い服を着た。
彼女の使う「武器」は、スクアーロのそれのように多くの血を呼ぶものではなかったけれど、敵の肉を貫通したそれが引き抜かれる瞬間、その血液が身体や服に多少付着するのは避けられない。
だから、彼女は黒い服を召し込むことにした。


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