HIS AND HER LOG

2006年02月01日(水) 無題かつ未完

これ以上ないほどの美を知った今
何を軸にこのまま生きてゆけようか

空は碧く雲は白白しい
澄んだ空気を美しいと思っていたのは昔のことだ
今はただ

あの漆黒の御髪と吸い込むような瞳だけを想う

「君はいいね」

突然の言葉はいつものことだった
一緒にいればずっと話しているというわけではない
急くことなく、ゆっくりと言葉を交わし
沈黙すらも愛おしい間であった
それはこの冷えた身体が彼女の肌と触れて温くなっているからなのやもしれない

「何がですか?」

聞けば、僕の頭を抱えている右手が優しく撫でられる

「綺麗な黄金色」

そう言って髪を梳かれる
くすぐったくて少し声を上げると、頭上に微笑が漏れる
僕はこうやっている時間がとても好きなのだ
二人きり、こうやって睦んでいると
まるで恋人のようだから

「…僕は、燐音さんの黒髪の方が好きです」
「ふふ、そうかい」

照れながら言ってもあちらは気にした風もなく
戯言と言わんばかりに流されてしまう
手馴れているのだろうか、そうに違いない、ああでも!
そんなことで冷めてしまうような恋ではない

正直、恋と呼ぶのはどうかと思われるほど
僕は彼女に嵌まっていた
想えば熱く、振り払われれば涙が絶えぬ
それでいてこの行為百に一つも返ってくる声もない
ただそれでも構わないという堅い思いは既に
神に祈る信者のそれと変わりがないように思えた

それならば、この先何が起こるというのだろうか
神は人臣に何を与えることもない
それは神が神であるゆえ
だのにこうやって神と一瞬の交わりを求める自分は
いかに浅はかな生き物なのだろう


   HOME  


ハチス [MAIL]

My追加