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2005年04月23日(土) 人は弱く儚いけれど

 他人の事情は解らない。他人が口を出す事でもない。それでも、己の言葉には責任を持っていたい。


 同じように別れた。お互い相手が嫌いなわけでも無い。彼は己を好きだと言う。己も彼が好きだと思う。付き合っている時と変わらないくらい、普通に話す。
 同じように確認したのは己だ。どういう関係なのか、別れている事になるのか、そう聞いた。
 違うのは、己は別れを切り出された人間ではなく、切り出した人間だと言う事だ。
 会えなくなって半年。会いに来られないと言う彼に、自分が会いに行くだけの気力が沸かなくなってしまった事に気が付いた。そうして別れを切り出したのは己だった。
 付き合っているのに会えない。会えないのに付き合っているという関係。モラルや良識に縛られて誰かに縋る事もできない身体を持て余した。きっと辛かったのはそんな単純な事。
 別れようと言い出した後も、付き合っているような中途半端な関係が続いた。お互いに忙しくてメールも電話も殆どしなくなった。最初はとても辛かった。でもだんだんと慣れてそれが普通になった。
 確か、卒業研究を提出した日だったと思う。電話をして確認した。一応別れている事になるんじゃないの、と彼は言った。よりを戻す事はあると思うけど、とも。
 己は卒業が決まった後も地元に、彼の近くに帰らなかった。無断で決めたその事に彼は腹を立て、帰ってこない事を寂しいと思っているようだった。それでも彼が会いに来ないのを良い事に己は好きにやっている。遊びにおいでとは言われているけれど、この先行く事があるか解らない。
 時々、メールや電話をする。元気でいるか確かめたくて。でもそれで元気でいてくれたら十分なように思えてしまう。
 今でも大好きで、大切。執着ではなく、穏やかな愛情を抱いていると思う。友達とも家族とも違う。

 恋人として過ごした2年間を一つも後悔してはいない。勿論、後悔すべき事もあったけれど、それでも幸福な日々だったと思う。キスをして、セックスして、一緒に眠って、ご飯を食べて、遊びに行って、喧嘩をして、謝って。
 不安定な己をよく把握していた彼は、己が引き留めて欲しいがために言った言葉を冷ややかに振り切って強く抱き寄せてくれた。何度も何度も。400キロの距離を越えて抱き締めに来てくれた。それがとても嬉しかった。とても幸せだった。
 すれ違ってしまったのはいつだったのだろう。互いに責められるべき部分はあっても、それを責める事は意味のない事だ。重要なのは結果だ。すれ違ってしまったという事実。

 破綻。恋人という関係が成り立たなくなってしまっても、違う関係として続いていく事は可能なのではないかと思う。己は彼とそういう関係でありたいと願っている。
 友人には成り得ない。家族にも成り得ない。それでもどんな関係でも繋がっていたいと思う。どんな関係になれるかはまだ解らない。それでも。


 別れた相手とどういう関係になるかは人それぞれだろうと思う。別れた彼女達と仲良くやってるという知人もいる(個人的にそういうのは非常に嫌悪感を覚えるのだが、己と彼もそういう風に他人からは見られるのかもしれないと思って更に嫌な気分になる)。
 距離を保って、時間をかけて、二人にとって適度な距離を探せば良い。完全に離れなくては行けないか、側で友人のように過ごして行けるのか、或いは他の関係を探さなくては行けないのか。それは自ずと解る事だ。


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