2017年06月18日(日) |
上岡敏之のブルックナー3番 |
今日のNHKEテレのクラシック音楽館では、上岡敏之指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏した「ブルックナー交響曲第三番」を放送していました。この公演は5月12日に横浜みなとみらいホールで録音収録されたものです。
指揮者の上岡さんは長らくドイツで暮らしていました。中部のウッパータールのオーケストラを率いて日本で凱旋コンサートを行ったことぐらいしか事前知識はありませんでした。途中から聞いた「ヴェーゼンドンク歌曲集」の後ブルックナーが始まりました。数秒その演奏を聴いて、グッと引き込まれてしまいました。
何とも心地よい響きが奏でられているのです。金管楽器の咆哮は聞かれずトランペット・ホルン・トロンボーン奏者の顔色は冷静そのもの。金管強奏の裏で弦楽器奏者が必死な形相で分散和音を演奏する姿もなし。演奏者は冷静の指揮者の指示通りの音楽を紡いでいく姿がありました。演奏者は同時進行で奏でられていく他のセクションの音楽を明確に聞き、自分の出番においては精神状態・肉体状態の最小のポイントで音楽に参加していくといった感じ。
上岡氏がインタビューで「教会のステンドグラスが時の経過の中で陽の光の微妙な変化によって様々な表情を見せていく」とブルックナーの音楽を表現していましたが、正しくその感じでした。長崎「大浦天主堂」の北側の「祈念坂」は観光客がほとんど訪れることがないのですが、外から天主堂内のステンドグラスの光を見ることができる貴重な場所です。教会の中ではなかなか味わえない「時間」の経過を感ずることができます。上岡さんのブルックナーは、教会内の光の変化を外からじっくり眺めているような味わいだと思いました。
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