長渕剛 桜島ライブに行こう!



前つんのめりで生きていますか? (桜島ライブ39)

2004年10月11日(月)

『前つんのめりで生きていますか?』−桜島ライブ(39)

                 text  桜島”オール”内藤





日刊スポーツの23日掲載分。観客と朝の桜島が主役扱い。
剛の写真はちっちゃいですが、セットリストもあって、なかなかの扱い。
完走と書いた紙面の左側は、例によって杉田かおるです。


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M-26 気張いやんせ  −アルバム『JAPAN』(1991)−



僕らのいるAブロックは、会場で1番低い位置にありました。
そこから会場入り口に向かって、
緩やかな坂が伸びていました。
その途中、ほぼ中心、
GブロックとFブロックのあいだくらいのところでしょうか、
画面で見た感じでは、
えっ、あんな狭いところで歌っているの?
と思うような小さなステージがありました。

剛のすぐ足下から、
観客の頭が広がっているように思えました。
剛と、観客の距離感が異様に近い。
ステージ両側のサブステージで歌っているときと同様、
人間の頭の大海原で、ギターを構えている剛でした。

肉眼でその方向に目をやると、
東京ドームの2階席の後方から、
センターステージの剛を見ているようなイメージ。
違っているのは、上から見ているのではなくて、
下から見上げるように見ていることでした。

今は最高の場所となったFブロックあたりは、
それまでのあいだずっと、
今、僕が見ている距離からライブを見ていたのか・・・
それは、あまりにも、遠い場所でした。
会場の半分の位置でこんなに遠いなら、
JブロックやKブロックの距離感といったら、
それはもう、大変なものだったろうと思いました。

自叙伝的内容の『いつかの少年』は、
そんな遠いブロックの観客への、
剛からの挨拶代わりの歌だったのかもしれません。

「そんじゃあ、そろそろ歌おうかねえ!」

そんな剛の言葉からもわかるように、
この桜島ライブでゼッタイに外せないという歌が、
剛の曲の中にはいくつもありました。
そのひとつが『いつかの少年』でしたが、
次に歌われたこの曲も、
ゼッタイに、ゼッタイに、歌わなければならない歌でした。


どげんしてん やらんと いかん事がよ
おいにも わいにも ひとつくらいある
やっせんぼ やっどんからん よかぶいごろの
あげんな きっさね まねにゃできん
前つんのめりで 生きて 行こや
だいが 悪いち 言うもんか



ところどころ意味のわからない歌詞があろうとも、
普通の会話ではまったく使えなかろうと、
聴き込んでいるからこそ、
なぜか歌える、鹿児島弁まみれの歌!

歌いやんせ!『気張いやんせ』!

大学のころ、僕には佐賀出身の親友がいました。
僕は部屋に遊びに来たその親友に、
『気張いやんせ』を聴かせながら、
歌詞の意味を教えてもらったことがありました。

例えば、やっせんぼ、が、臆病者のことで、
よかぶいごろ、が、ええカッコしいのことだということを、
その親友は教えてくれました。

ここ桜島で『気張いやんせ』を聴きながら、歌いながら、
僕は、大学時代、もう、5年以上も会っていない、
その親友のことを思い出していました。
『気張いやんせ』を、CDに会わせて一緒に歌った、
その親友のことを思い出していました。


泣こごんなった時ゃ おいげえ 来んか
馬鹿されたときゃ わいも 向こて行こや
おいたちゃ どげんしてん 汚れもん
じゃっけど 譲れんもんも あろう
前つんのめりで 生きて 行こや
だいが 悪いち 言うもんか



「いい歌詞だな・・・」
そう僕がいうと、彼は、
「俺は佐賀(の生まれ)だけど、やっぱり田舎の言葉に近いから、
伝わり方がぜんぜん違う。」
と言っていました。

僕は関東近県の生まれなので、
彼のようにこの歌を感じることはできませんが、
それでも、手垢にまみれたような、
泥臭さのある、この方言のぬくもりを感じることはできました。

「わからないかも知れないけど、この曲、
 アルバムの中で、最高の曲だよ」

そう、彼は『気張いやんせ』を誉めていました。
そのときは、えー、そこまで言う?
と思った僕でしたが、桜島で合唱しながら、
まったく、彼の言うとおりだと思いました。

鹿児島弁の歌だから、桜島ライブで歌われた。
それは確かだと思うけど、
震えがくるほどいい歌だから、歌われたんだということが、
合唱していて身に染みてわかるのです。


気張れ 気張れ 気張いやんせ
いっどどま け死ん限い 気張いやんせ



「いっどどま けしんかぎい・・・って?」

  「一度くらい、死ぬほど、がんばってみろや」

「・・・かっこいいね」

  「・・・うん、めちゃくちゃかっこいいよ」


僕はたまらなくその親友に会いたくなりました。
行儀が悪くて、甘ったれで、スケベな親友。
まるで若い頃の剛のようなその親友は、
今は二人の子持ちだ。家も建てた。

「もう、俺、自分のことはいい。
 家族のために働いていく。」

最後に会った時に、そう言っていたアイツ。
剛ファンになったばかりの頃の僕に、
『LICENSE』のアルバムをくれたアイツ。

僕は会いたい!アイツに!
会って、桜島ライブのことを話したい!


一度くらい、死ぬほど、がんばってみろや・・・

いっどどま け死ん限い 気張いやんせ・・・

一度くらい、死ぬほど、がんばってみろや・・・

いっどどま け死ん限い 気張いやんせ・・・


このライブで何度目かのこみあげるような感動が、
僕の心臓を震わせていました。

ふとスクリーンに目をやると、
今まさに、け死ん限い、気張る男の姿がありました。
ときおり音を取るために耳に入れたイヤホンを気にしながら、
歌いにくそうに、演奏しにくそうに、
汗だく、必死の形相、余裕のかけらもなく、
一生涯をかけて、気張りまくっている男。

「気張れやーーーーーっ!!」

張り裂けんばかりに、絶叫した男だ。

何のために、何に期待して、
僕はこの桜島にやってきたのか。

今こそ、確信しました。

け死ん限い、気張る男の姿を目に焼き付けるため、
その男から、気張れや!のメッセージを受け取るため、
その姿を糧に、これからの人生を生きていくために、

僕は桜島にやってきたのだと思います。


あの日、桜島にいたのなら、
いっどどま、け死ん限い、
気張いやんせ!





続く



<次回予告>
まだまだ続く、欠かせない歌の数々。
目の前で聴きたかったと、Aブロックが地団駄踏んだ、自分自身の歌。
この日最高に優しいメロディが会場を包みました・・・。

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