言霊

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2002年09月30日(月) ◇ 君が私の誇りなんだよ

マコリンと缶ビールくんと一緒にスーパーに買い物に行ったんだけどさ。
いきなりマコリンと年端の変わらない女の子が目の前にきてね。真を指差して、あろうことか私たちに向かって「変な顔〜」と(同意を求めるように)言ってきたわけさ。
「・・・・・・・・・・。」
私も缶ビールくんも、怒るのも忘れて唖然としてしまったよ。
マコリンの顔が『変な顔』……ってさ。ぶん殴ってやろうかと思ってもいいかもしれないんだけどね。普通に考えれば。
ってゆーか、私たちは思うわけさ。
この子の親をやってさえいなかったら、たぶんプチ切れていたんだろうなー…と。

なんていうか、そりゃあ十年前の私だったら殴らないまでも『泣くまで許さねー』くらいのことは思ってたんじゃないかと。触れれば切れるくらいの性格だったしね(笑)
今はまぁ、そのくらいのことじゃ怒る気にもならないというか、逆にちょっと相手を見下してしまうのよね。『そっか……お前にはワカンネーよなぁ……』って。
相手の(身内の)前で、それと判るように暴言を吐くことの罪だとか。表情や言動に『隠しておくべき』と思われる感情が露骨に出てしまうことの罪だとか。それを『素直』だとは思わない。とても心理的に幼い、情けないことだと思う。
だからさ。小さな子供の精神が幼くても、それは別に怒るようなことでもないじゃん? 大きな図体で、その程度のことも実行できないお馬鹿さんには少々困惑するけどねー。

障害を持ってるマコリンは、その子に言われなくても『普通』とはかけ離れてるルックスをしているとは思う。それを見て無理に「可愛いね」なんて言ってくれなくてもいい。もちろん「普通と一緒」なんて冗談言わなくてもいい。違うものは違う。だから驚いてもらって構わないし、一人一人受ける印象って違うものでしょう? そういうのは悪いコトじゃないと思う。

よく障害児を抱える親だったり障害を抱える人だったりが「同情するな!」って怒るんだけど、私は同情されるのも大好き!(笑)…なんで同情しちゃいけないの?って疑問に思ったりもするよ。
「可哀想って言葉で見下しているんだ」
そんな風に思うのは、自分が自分を惨めだと思ってるからかもしれない。
だってさ。普通に考えてよ。
貧困に苦しんでる人達のニュースを見たら、まず「可哀想だ」と思うでしょ? 自分たちは食べるものに困った記憶なんてないけど、毎日食べるものもなくて、小さな子供達がバタバタ死んでく映像を見たら、まず「可哀想だ」って感じるでしょ?
だから。可哀想だから。募金をしたり毛布を贈ったりするんでしょ?
それは素直な感情だと思う。そこに「優位に立ってる強者としての愉悦」なんてものを感じるのは、とても病んでる精神だと思うのよ。
可哀想だ。それに比べて自分は何をこの程度のことでグチグチ悩んでいるんだ?って思う。なんとかその人達の味方になってあげたい。なんとか恥ずかしくないように毎日頑張って生きていたい。……そういう感情は、病んでる精神を抱える人にしてみれば「奢り」に見えるのかもしれない。
だけど現実は違う。
そういう、とても人間的な優しさ…生々しいほど人臭い、汚いものも綺麗なものも混じり合ってる『優しさ』を否定したら、人と人との生身の付き合いなんて有り得ないと思うんだ。

いいじゃないか。いいじゃないか。
奢りがあっても汚いものが見え隠れしても。私はそれでも優しくしたいと思っている『優しい人』を、否定したいとは思わない。マコリンが生きてることの尊さは、誰が知らなくても私が知ってる。私はこの子を守って生きてる今の自分を、誇りに思ってる。

たとえば『弱者』と呼ばれる人達の中にも、誇り高く生きている人間はいる。傍目には判らないかもしれないけど、心の中にそれさえあれば小さな波風に左右されることもない。
ああ、あの人には解らないんだ。そうだよな。触れる機会がなかったんだもんな。……諦めにも似た笑みが出るだけ。
いつかあの少女も知る時が来るのかな。その為にも、マコリン達は小さな囲いの中で生きていちゃイケナイんだよな。生きることがどれほど大変でも、だけど自分で自分を諦めさえしなけりゃ、どんな過酷な状況の中でも笑顔で生きていくことができるんだって。そういう何よりも尊いことを教えてくれる大切な命なんだから。

言葉で諭すようなことでもない。
こんな大切なことを、私がその場限りの言葉で『教えて』差し上げても、そんなのは何の役にも立ちやしない。私自身の精神を弁護するだけの卑しい行為でしかない。
だから、ビックリした私は、ビックリした顔のまま(笑)
缶ビールくんと一緒にクスクス笑って「そう見えるんだろうねー」と頷きあってから、無礼なお子ちゃまは無視して買い物を続けるのでした。

マコリンはそんなことで傷ついたりしない。私たちが声を荒げて女の子を怒ったら、その時こそ驚いて泣いちゃうかもしれない。
たとえばそのうち相手の言葉が理解できるようになって悩むようなら、きっと私の言葉も届くはず。マコリンに解る言葉で、この気持ちを伝えてあげようと思う。決して自分を卑下することなどないように。そんな必要は全くないんだってことを。
それでいいでしょ?(^^)

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