例えば、きょう。
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2014年06月19日(木) その1

ども、セツカです。

日記長すぎて投稿できんかった…
ので、その1です。

無事に退職しましたイェー!!
有休全然残ってなかったイェー!!
何してたってほとんど寝て使ってたイェー!!

はい。というわけで絶賛就活中です。

そんな科合間を縫って。

まずは赤鬼初日!

妹と行ってきたんだけど、やっぱ中屋敷演出好きだなー。
開幕前からアンサンブルの人たちが出てー入ってーっていう。
徐々に舞台が作られていく。

で、最初のシーン。
役の入れ替わりが激しくて、わけがわからず見ていると徐々にストーリーが進んでいき…

見入ってしまいました。

まだ水平線の向こうは崖だと思われていたころの話。
村八分の「あの女」、知的障害の兄、嘘つきのミズカネ、「赤鬼」、そして彼らを取り巻く多数の「村人」。

「あの女」も、知的障害の兄も、ミズカネも村人からは自分たちの「外側」として扱われている存在。
「あの女」は海の向こうからやってきたから。
兄は知的障害だから。
ミズカネはこの中では一番まともな扱いをされているけど、それでも彼は狼少年だから話を信じてもらえない。

そんな中に突如「異端」がやってくる。
肌の色も、目の色も、話す言葉も異なる異人。
自分たちと相いれない異人を拒絶するかのように人々は彼を人間を食べる「赤鬼」と呼び恐れる。

「赤鬼」に襲われ(実際は違ったんだけど)、彼が「異端」ではあるものの同じ「人間」だと気付く「あの女」。
徐々に意志を通わせ、彼を仲間の元へ、海の向こうへ返そうとする。
そして知的障害の兄と、自分に好意を寄せるミズカネと一緒に海へ出る「あの女」。

でも、すでに仲間は…

妹は死にました。
崖の上から身を投げて死にました。
「ふかひれが、知っている味と違ったから」

とな!!

いや、なんだろうねー。
私たちの社会には「他者」が必要、なんだろう…か。多分。
それまでの生活で村人たちは「あの女」や兄やミズカネを自分たちとは異なる「他者」としていたわけですよ。
そうして差別することで、見下すことで、自分たちの優位性を見出していたのかな…
それがさーある日どう考えても自分たちとは違う「他者」が出現するじゃないですか。
もう人間とすら思えないからね。
そうなると今まで「他者」として扱ってきた「あの女」やミズカネの話を聞くようになるわけです。
今まで自分たちが外側に押しやっていた彼らを内側に呼んだ…というか、内側に入ることを許したというか…
「赤鬼」に比べたらほかの3人は肌の色も同じで話す言葉も理解できるこちら側の存在だったと。

ただ折角内側に入ったのに、彼らはまた外側に出ていくわけです。
別にこれを機に村人たち側に入って「赤鬼」を殺しちゃっても問題ないんですよ。そういう村だから。
彼らがそれをしなかったのはもちろん「赤鬼」が人間だということを知っていたから、と思うけど、それとは別にその後のことというか。
結局「赤鬼」がいなくなった後、彼らはまた外側の人間として扱われるんだろうと。そしてそのことをわかっていたんだろうと思うわけです。
集団には常に「他者」が必要だから。

村人はそんな話を理解できるわけもなく、というかしたくないんだよね。
だってもう完全に「外側」の奴じゃん。
理解とかムリ系ー排除排除。みたいな。
そんなわけで「赤鬼」の住む洞窟を襲うわけですが、そこで目にしたのはこの世のものとは思えない楽園の絵で。
とうとう「赤鬼」は神なんじゃねーかと。とにかく自分たちと同じ生き物であるはずがないと疑わないわけです。

そんな「赤鬼」とその仲間も「他者」であったんですよね。
「赤鬼」が描いたのは本当の故郷ではなく、探し求める理想の故郷。
自分たちの生まれ故郷、美しい土地を求め海を漂う「他者」。

神になった「赤鬼」は村人たちにも受け入れられていく。
というか、見世物。
神に触れることで長生きが出来るとか、そんなん。
そうして4人は徐々に内側に入り込んでいくんだけど、それでも違和感はぬぐいきれない。
線引きが近くなっただけで、相変わらず「他者」なんですよ。
そんな村人の態度に「あの女」は憤る。

しばらくして兄は海の向こうに見えた大きな船を思い出す。
「赤鬼」の仲間のものと思われる大きな船。
で、あれよあれよという間に手のひらを返す村人たち。
排除がまた始まり、「赤鬼」と「あの女」を死刑にすると。
死刑ってww
本当に集団は自分たちが正義なんだよなー。多数が正義。一度は内側に入ったけど、結局は外側の奴らだった。だから排除。
自分たちが危ない、かもしれないから。

兄とミズカネはそんな「赤鬼」と「あの女」を助け、船を出すわけです。
「赤鬼」を仲間に戻すという大義名分のもと、「あの女」は村人から離れるため(これはなんか違うなーなんだろなー)、ミズカネは自分の信じる海の向こうへ行くため。

ただ、そんな「希望」はすぐに消えていく。
海に「赤鬼」の仲間は既にいなくて、食べるものも全くなくて。
どんどん気が狂っていく中、赤鬼が死に。

生きていくために「フカのヒレ」をみんなで食べ、命を繋ぐ3人。

再び村に戻った3人。
そして「あの女」は絶望の中死んでいく、と。

「あの女」は何に絶望したのかなー。
大きなきっかけはもちろん「フカヒレ」だとは思うんだけど。
自分の「希望」にたどり着けなかったこと?「絶望」に戻ってきたこと?

この「赤鬼」は異端・異質を排除しようとする共同体についてがメインの話…という印象。
でもオープニングとラストの「フカヒレ」だって、重要な問題提起だと思う。
生きるためなら何してもいいの?でも人間は食べちゃダメでしょ。
なぜ?人間だから。
生きるか死ぬかの瀬戸際なのに?それもそうだけど。
じゃあ人間以外のものを食べることに、それ自体には罪はないの?わからない。

生きるために人肉を食べたミズカネを責めることはできない。
朦朧としてたとはいえ、嘘をついてそれを食べさせたミズカネを責めることはできない。
だって生きるためだから。そして生かすためだから。
でも食べてしまった自分を許すことができない。
食べさせたミズカネを許すことができない。
でも責めることはできない。
でも許すことができない。

生きている自分を、許すことができない。

そんな絶望。

とかね。
とりあえずセツカの感想でした。

見た後、すっきりするような話ではなかったんだけど。
人間が生きている限りなくなることのない普遍的なテーマ。
だけど自分自身は常に「内側」にいるから、気づいていないだけ。
それを思い知らされたような気がします。


セツカ |MAIL