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2005年08月10日(水)
『海辺の家族』

アリス・ホフマンの『海辺の家族』を読み終える。これは初期の長編で、現在の作品のようなマジカルな部分はあまりない。しかも中身はエイズの話で、非常に暗い内容。それも、輸血のせいでエイズになってしまった、自分には何の責任もない少女の話だから、何とも辛い。

しかしその少女が主人公というわけではなく、周囲の家族や友だち、学校や社会というものが、どのように対応していくのかといったことに焦点があてられている。

時代は、まだエイズに対して正しい知識が普及していなかった頃だから、妙な偏見を持つ親たちがたくさんいて、少女の弟の友だちなどは、無理矢理転校させられたりもする。だが確かな情報のない時に、我が子を思えば、当然のことなのかもしれない。

けれども、理不尽な死を受け入れなければならない少女の、やりたいことがたくさんあるのに何もできない悲しみとか辛さとかを思うと、どうにもやりきれない気持ちになる。

ちなみにこの話はボストン近郊の町の話で、始終ボストンとかニューヨークが出てくる。ニューヨークはともかく、あの美しくかわいらしい町ボストンのイメージを思い浮かべると、なおさら哀しさが増す話である。


〓〓〓 BOOK

◆読了した本

『海辺の家族』/アリス・ホフマン (著), 深町 真理子 (翻訳)
単行本: 270 p ; サイズ(cm): 19 x 13
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4152076887 ; (1990/05)
内容(「BOOK」データベースより)
ボストンの北方、美しい海辺の町。天文学者の父親、カメラマンの母親、子供2人で暮すファレル家を、ある日突然悪夢が襲った。5年前の輸血で原因で、娘のアマンダがエイズを発症したのだ。驚き、怒り、悲しむ家族。感染を恐れる隣人たち。パニックに陥る学校。その中で、アマンダは女子体操の選手として全力をつくそうとする。ジョーゼフ・ヘラー、カート・ヴォネガットらがその才能の感嘆した作家が清冽な美しい文体で描きあげる、感動の長篇。 ※画像は原書 『At Risk』


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