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2004年07月13日(火) ■ |
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『Speaks the Nightbird』 |
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マキャモンの『魔女は夜ささやく』は、下巻になってから一気に進んだ。マキャモン作品には、あまり謎解きは出てこないのだが(犯人は「邪悪なもの」だったりするし)、これは実体を持った人間が犯人であるということで、では誰が?という好奇心につられて、一気に読み終えた。
描写がかなり露骨だったりして、最初は「これがマキャモン?」というような感じもしたが、最後には、やはり人間の善なる部分をしっかり書いてくれている。主人公のマシューと、彼を孤児院から引き取って、立派な人間になるよう教育してきた判事の、父と子のような愛情には、ちょっとホロリ。
それと、最初はとまどった「かなり露骨な描写」も、意図があってそうしたのだということがわかってくる。そうした言うのも憚られる悪魔の所業でさえ、人間の心の奥底では、それを見たり聞いたりしたいという欲望が渦巻いているのだ。だからこそ、悪魔の所業を露骨に口にするインチキ説教師に引かれていく人間も出てくるというわけだ。
「まあーっ!そんな悪魔の技などとんでもない!私はけしてそんなことはしないし、考えもしないけれど・・・(でも興味津々!)」といったところだろうか。中世に魔女として処刑された人たちも、周囲の人間のそうした隠された欲望の餌食になったのでは。。。
ただ、『魔女は夜ささやく』というタイトルの割に、魔女役のレイチェルのキャラが弱かったかな?という気がする。魔女として活躍して欲しかったという意味ではないが(レイチェルは魔女ではないし、魔女裁判を描いてはいるが、魔女を描いているわけではないと思う)、もう少し、彼女の出番があってもよかったかも。でも、原題は『Speaks the Nightbird』なので、魔女という言葉は出てこない。その代わり、作中に「夜の鳥」という表現は何度も出てくるので、当然ながら、原題には忠実だ。「夜の鳥」は、重要なキーワードとなっている。
〓〓〓 BOOK
◆読了した本
『魔女は夜ささやく』〈下〉/ロバート・R・マキャモン (著), 二宮 磬 (翻訳) 単行本: 391 p ; サイズ(cm): 19 x 13 出版社: 文藝春秋 ; ISBN: 4163221301 ; 下 巻 (2003/08/28) 内容(「MARC」データベースより) 「魔女」の処刑まであと数日。彼女の無実を信じ、愛しはじめた青年マシューをよそに、病状を悪化させた判事は、瀕死の床に伏せる。すべての背後にいるのは誰か。その目的は何か。そして悪魔は実在するのか?
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