BACK NEXT 初日 最新 目次 HOME

INFORMATION
日刊・知的ぐうたら生活
ここのBLOGはこちら
SCHAZZIE@MOBILE

schazzie
HOME

SOUTHBOUND
Go To U.S.A.
BOOKLOG
BOOK CLUB
読書の日記
Another View


My追加


■ 本の検索・購入 ■
Amazon.co.jp アソシエイト



●For Mobile●
キーワード:

2004年02月25日(水)
第130回芥川賞受賞二作を読む

第130回芥川賞受賞作、金原ひとみ『蛇にピアス』と、綿矢りさ『蹴りたい背中』を読んだ。両方ともおおまかな印象は同じ。石原慎太郎の選評にあるように、「それにしてもこの現代における青春とは、なんと閉塞的なものなのだろうか」ということが、私が最も感じたことだろうか。

リアルタイムの青春を書くのと、大人になって青春を振り返って書くのとでは、雰囲気も何も全然違ってくるだろうが、読んでいて「若いなあ・・・」と思った。最年少の受賞ということが話題になっているけれども、若さゆえの新鮮さと同時に、若さゆえの気持ち悪さも感じる。

若さゆえの気持ち悪さってなんだろう?うまく言葉にできないのだが(これじゃ芥川賞は絶対無理だ)、昔と今とでは、気持ち悪さの質が違っている。上に書いたように、それは「閉塞感」かもしれない。そういう現代の若者を作ってしまった社会を憂慮しなければいけないんだろうが、現代の若者のこの「閉塞感」は、街を歩いていても感じる。現代の若者には、ピュアとか、イノセントとかいう言葉はあてはまらないのかもしれない。2作者とも、人間の「悪意」というものをしっかり知っている。そういう意味で、若いからといって、幼さは全く感じない。

しかし、どちらにしても暗い。こんなに若いのに、こんなに暗いのかと思うと、暗澹たる思いにとらわれる。個人的には、『蹴りたい背中』のほうが文章がきちんとしている分、いいのかなとも思うが、『蛇にピアス』のような文章は馴染めない。今の若者の言葉で書かれているのだが、品がない。だから、現代の日本文学には興味がわかない。外国文学の翻訳のほうが、ちゃんとした日本語が使われているからだ。現代の日本文学の全てがそうだとは言わないが、これに関しては「芥川賞」という冠がなければ、絶対に読まない小説だ。

『蹴りたい背中』も、仲間はずれになっていく少女の孤独と、オタクな少年の話だが、じめじめしたもどかしさという感じ。やっぱり気持ちが悪い。これにしても、『蛇にピアス』にしても、外国文学にはない雰囲気だ。たとえ同じシチュエーションで書かれたとしても、全然違う雰囲気になると思う。

とはいえ、芥川賞というメジャーな賞を受賞しているのだから、これが日本文学だと言っても差し支えないんだろう。こういう賞は出版社の話題づくりであるとも思うが、そうは言っても天下の芥川賞だ。私はますます日本文学から遠ざかる。あるいは、漱石どまりかもしれない。

ちなみに『蛇にピアス』の金原ひとみは、金原瑞人氏(翻訳家・法政大学教授)の娘だとか。父親のほうは、児童文学(ヤング・アダルト)の翻訳が多いから、「あるところに王女様がいました」的な文章だが、娘のほうは伏字にしなきゃいけないような言葉がぽんぽん。女の子でも「やってらんねーよ!」みたいな言葉遣い。なんだかその父娘のギャップが奇妙。作者と作品の主人公を同一視するのは間違いだと思うが、写真を見ると、いかにもと思ってしまう。実際、けして普通の人生は送っていないようで、お父さんはずいぶん苦労したんだろうなと。(^^;

ところで、この2作に関しては、個別の感想文は書きたくないので書かない。そう思うと、大道珠貴の『しょっぱいドライブ』は、感想を書こうと思えただけ、印象に残ったのかもしれないなとも思う(快でも不快でも、印象に残ればいいのかも)。もっとも、この時の受賞は1作だけだったので、じっくり読めたのだが。


〓〓〓 BOOK

◆読了した本

『パーム・ビーチ』(下)/パット・ブース
文庫: 286 p ; サイズ(cm): 16
出版社: 集英社 ; ISBN: 4087601714 ; 下 巻 (1989/11)

『蛇にピアス』/金原 ひとみ (著)
単行本: 124 p ; 出版社: 集英社 ; ISBN: 4087746836 ; (2003/12)
出版社/著者からの内容紹介
ピアスの拡張にハマっていたルイは、「スプリットタン」という二つに分かれた舌を持つ男アマとの出会いをきっかけとして、舌にピアスを入れる。暗い時代を生きる若者の受難と復活の物語。第130回芥川賞受賞作。

『蹴りたい背中』/綿矢 りさ (著)
単行本: 140 p ; サイズ(cm): 182 x 128
出版社: 河出書房新社 ; ISBN: 4309015700 ; (2003/08/26)
出版社/著者からの内容紹介
高校に入ったばかりの蜷川とハツはクラスの余り者同士。やがてハツは、あるアイドルに夢中の蜷川の存在が気になってゆく…いびつな友情? それとも臆病な恋!? 不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く、待望の文藝賞受賞第一作。第130回芥川賞受賞。


Copyright(C) 2001-2013 SCHAZZIE All rights reserved.


携帯用URL:http://www.enpitu.ne.jp/m/v?id=83698

Site Meter