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2003年07月13日(日)
カート・ヴォネガットのその後

読了した『タイムクエイク』は、ヴォネガット「最後の本」と言われているが、その後ヴォネガットはどうしているのだろうか?という疑問の答えが、巻末に書いてあった。以下「文庫版/訳者あとがき」(2003年2月)から抜粋。


『タイムクエイク』刊行から2年後の1999年には、『バゴンボの嗅ぎタバコ入れ』が出た。といっても、断筆宣言と矛盾するわけではない。これは新作ではなくて、1950年代から60年代初めにかけてほうぼうの雑誌に発表されたまま、長らく埋もれていた短篇を発掘し、まとめた作品集だ。先に出た『モンキー・ハウスへようこそ』(二分冊)のいわば姉妹篇であり、ヴォネガットの短篇はいちおうこの3冊で網羅されたといえる。

その直後に出たのが、『キヴォーキアン博士、あなたに神のお恵みを』(未訳)。こちらはまぎれもない新作だが、小説ではない。ニューヨーク市のラジオ局WNYCでの90秒間のつなぎ番組の放送台本をまとめた、80ページに満たない小冊子だ。あの世にいる有名人への架空インタビューという形式で、ニュートン、シェイクスピア、それにキルゴア・トラウト(!)などがつぎつぎに登場する。(注:キルゴア・トラウトとは何者かを知りたい人は、ヴォネガットの本を読まれたし)

全世界のヴォネガット・ファンにとって衝撃の情報が飛び込んだのは、その翌年初めのことだった。2000年1月30日、ニューヨークのイーストサイドにある自宅から出火、77歳のヴォネガットは火を消そうとして煙に巻かれ、隣人に救出されたものの、肺気腫を併発して集中治療室入り、というニュースだ。さいわい、その後の経過は順調で、退院後は娘夫婦が住んでいるマサチューセッツ州ノーサンプトンへ静養を兼ねて引越し、その秋からはスミス大学の創作講座を受け持つという回復ぶりだった。

というわけで、最近のヴォネガットは、ジョー・ペトロ三世と共作のシルク・スクリーン版画に熱中、その作品はケンタッキー大学美術館をはじめ、ほうぼうのギャラリーで展示され、画集にもなっている。また、こうした作品をプリントしたTシャツも売り出されているとか。

しかし、なによりも耳よりなのは、近いうちに彼の新作が出るかもしれないというニュースだろう。これは『母なる夜』を映画化した《マザーナイト》(1996)の脚本兼プロデューサーで、ヴォネガットの親友でもあるロバート・B・ウィードが、2001年2月にヴォネガット関係の一サイトで知らせたもの。その概略を紹介すると──

「フランク・シナトラが芸能生活にピリオドを打つと宣言して、しばらく隠遁したのち、またもやステージや録音スタジオにひきよせられ、“最後の”パフォーマンスを演じては引退をくりかえしたことを、諸君はおぼえているだろうか?わがヴォネガットもシナトラにかぶれたようだ。マサチューセッツ州ノーサンプトンで暮らすうち、彼はタイプライターの魅力に抵抗しきれなくなり、引退後のほんとにこれが最後の本を書きたくなったらしい。現在、わたしの知っている事実はこれだけだ。物語の主役のひとりはスタンダップ・コメディアンであることと、仮題は『いま神が生きていれば、きっと無神論者になるだろう』という意味のものになるだろうこと。いずれそのうち、初稿の一部分を読ませてもらえるのではないか、と楽しみにしている」

なお、ロバート・B・ウィードは、ヴォネガットに関するドキュメンタリー映画にとりかかっており、また、ヴォネガットの依頼で、『タイタンの妖女』の映画脚本も執筆しているとのこと。

もうひとつ、2002年11月、ニューヨーク市のブルームバーグ市長は、ヴォネガットの80歳の誕生日を記念して、11月11日を<カート・ヴォネガットの日>と定めた。

(翻訳者・朝倉久志)


〓〓〓 BOOK

◆読了した本

タイムクエイク ハヤカワ文庫SF/カート ヴォネガット (著), Kurt Vonnegut (原著), 浅倉 久志 (翻訳)
文庫: 331 p ; サイズ(cm): 148 x 105
出版社: 早川書房 ; ISBN: 4150114331 ; (2003/02)
内容(「BOOK」データベースより)
2001年2月13日、時空連続体に発生した異常―タイムクエイクのために、あらゆる人間や事物が、1991年2月17日へ逆もどりしてしまった。ひとびとはみな、タイムクエイクの起きた瞬間にたどりつくまで、あらためて過去の行為をくりかえさざるをえなくなる。しかも、この異常事態が終わったとき、世界じゅうは大混乱に…!SF作家のキルゴア・トラウトやヴォネガット自身も登場する、シニカルでユーモラスな感動の長篇。


※ところで、「私の読書の記録」に、たまっていた感想文をアップしました。


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