星降る鍵を探して
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2003年10月04日(土) |
星降る鍵を探して4-4-12 |
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「まだつながらないのか……!?」 高津は苛立った声を上げた。先ほどから何度も桜井に連絡を取ろうとしているのに、あのいけ好かない上司の足取りは全くつかめなかった。こんなことは初めてだ。電話はちゃんとつながるようなのに、何度かけても出ない。無線でも呼びかけているのに、反応がない。敢えて無視しているのだろうか。それとも、何か不慮の出来事が起こって、連絡できない状態になっているのだろうか。 高津は忌々しげに舌打ちをした。気にいらねえ、と思う。責任者でありながら全く連絡の取れない桜井も、玉乃姐が今どこにいるのかわからないことも、思うように動けないこの体の痛みも、そのせいで無能な奴らを殴りつけてやれないのも、全てが気に入らなかった。高津は立ち上がることも出来なかった。自分にこれほどの怪我をさせた若者を捕まえたというのに、その面を拝みに行ってやることすら出来ない。 「お、俺も探して来ます」 苛立った高津と一緒にいるのが耐え難いのか、桜井に連絡しようとしている部下がそそくさと立ち上がった。高津はため息をついた。ふざけんな、と毒づく。 「いいから動くなって言ってんだろ、何度も言わすな」 「でも」 「もう二人探しに行ってる。てめえはいつでも動けるようにここにいろ」 言ってこの話はもう終わりだとばかりに高津はため息をついて目を閉じた。もし突発的な事態が起こったとき、誰かがここにいなければ、取り返しのつかない事態になりかねない。どうしてこいつにはこんな簡単なことがわからないのだろう? 忌々しかったが、しかし懇切丁寧にそこまで教えてやることも業腹だった。自分が全く動けない『役立たず』になってしまっていることを認めることになるからだ。 ――ったく……何してんだよ、どいつもこいつも。 本来ならば、ここにいなければいけないのは桜井のはずなのだ。総司令官は何が起こっても中央にいなければならない。そこに腰を据えて情報を集めて、全体を見回して的確な判断を下すのが司令官の役目だ。それを高津に教えたのは桜井だし、いつもの桜井なら、高津が苛立つまでもなく間違いなくここにいたはずだ。 桜井は、どうもおかしい。 いつからかと考えてみれば、この事件のそもそもの初めからだった。あの流歌という女がここに来た辺りから、桜井は何か浮ついているようだった。楽しそう、とでも言えばいいだろうか。それは目に見えるほどの変化ではなかったのだが、今思い返してみれば、自分で動きすぎていた。普段の桜井だったならば、芸術館のタワーに自分で爆弾を仕掛けに行ったりはしなかっただろう。そして戻ってきたと思えばこのていたらくである。一体何があったんだろう? 桜井を、いつもの桜井でなくしているのは、一体誰なのだろう。 「気にいらねえ」 毒づいてから、口に出していたことに気づいた。部下の若者がビクリとしたからだ。そんなに怯えなくても、今日の自分には八つ当たりをしてやれるほどの元気もないと言うのに。
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クライマックスまであともう……まだ……あと三百メートルくらい……かな。
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