星降る鍵を探して
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2003年09月09日(火) 星降る鍵を探して4-3-3

「それで、あなたは――?」
 彼女の名前を聞くという、何でもないはずの言葉を口に出せたのは、それから少しの間愚にもつかぬ世間話を終えてからだった。訊ねると、彼女はわずかに小首を傾げた。
「彼から聞いてない?」
 克は苦笑して見せた。
「あいつの性格を知ってるでしょう? 肝心なことは最後まで言わない奴だ」
 すると。
「……」
 彼女の顔に一瞬だけ、不思議な色がよぎった。それはもしかしたら彼女が初めて見せた動揺だったのかも知れなかった。しかし克が瞬きをする間にそれはかき消え、彼女は完璧に微笑んで見せた。
「そうね」
 同意した声はこれ以上ない、というほどに朗らかだった。
「それじゃもしかして、あの地球儀がどういうものかも知らないわけなの?」
 そこに至ってようやく克は、今自分の背後にぽっかりと口を開けた扉の向こうにあった、あの馬鹿でかい地球儀のことを思い出した。
 そして同時に、梶ヶ谷先生に連絡をしなければならなかったことも。
「あ!」
 声を上げると、まだ名前も知らない女性は目を見開いて見せた。そういう顔をすると大人びた雰囲気が崩れて、可愛らしい雰囲気になる。しかし克はそれを観察している暇はなかった。あの短気な先生のことだ、今頃怒り狂っているかも知れない。あの地球儀がなんなのか探り出さなければならない今は、梶ヶ谷先生の機嫌を損ねるのは避けたい。
「ちょっと電話してきます」
 断りながら彼女の隣をすり抜けて足早に部屋を出、廊下にある内線電話に向かう。彼女は興味深そうにとことことついてきた。
「どうしたの?」
「梶ヶ谷先生にね、電話するのを忘れてた」
「あら大変」
 ちっとも大変と思っていない口振りだ。
「あの先生を怒らせたら怖いわよ。……なるほどね、梶ヶ谷先生に言われてここへ来たのね。あたしが席を外していたから」
 内線電話のあるところまでたどり着き、受話器を取り上げながら、克はこれでようやく彼女の名前がわかった、と思った。
 ――あたしが席を外していたから。
 ということは彼女は、あの時梶ヶ谷がいらいらしながら電話で探していた、『玉乃』ということになる。
『遅いぞ、馬鹿者!』
 着信と同時に聞こえた怒鳴り声を聞き流しながら、克は、背後で面白そうに眺めている玉乃(推定)の方に神経を張り巡らせていた。

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み……みーじーかーいー……
すみませんやっぱ叔母さんとこ行った日はこれで精一杯です。
腹の探り合いって難しい!(言い訳)


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