眠れぬ夜明けを見詰ていたの・・ ま〜るい太陽がかすみの中で輝いていた おはよう・・冷たいベランダに佇み呟いてしまう・・ 暖かな温もりに・・待ちわびた夜明け・・ 白い霞みがほんのり桜色に変わり・・心まで温かくなるの・・ なんて・・優しいあさなの? 遠くで鳴く烏の声がなぜか懐かしい・・ まるで幼かったあの頃の・・夢の狭間・・ 冷たく凍えた指先でそっと・・窓を開けてみた。 ピンと張り詰めた冷たい空気が・・・ ガスストーブで温められた湿った空気と交じり合う・・ 微かに香る外の香り・・思い出したのは・・幼い日・・ 月に何度としか会えなかった母の体に染み込んだ冷たい空気のあの香りに・・何処か似ていた。淋しさと不安・・ふっと・・蘇る記憶。 今は年老いた母の姿を・・思い浮かべる・・ 幼かったあの頃は・・母との思い出すら何もない・・ 消えた記憶のなかで・・私は・・何時も泣いていた。 6畳一間のアパートに置かれたモノクロのテレビ・・ 話し相手もなく過ごした夜の淋しさは・・ 私のからだのなかに刻まれたDNA・・消えない記憶・・消せない記憶・・ ホロリこぼれる・・一滴・・ 今日の私は何故だろう・・涙もろいね・・ ねぇ・・隠しておくれよ・・冷たい霧よ・・ 朝日の優しい桜色に包まれて・・ 私の心も温めて・・忘れられないDNAが・・暴れ出さないように・・ そっと・・隠して・・この淋しさを・・
ホロホロ聞こえる鷺鳥の声 遠い空のしじまの中に そっと・・消えて行く 想い出を呼び覚ます 淋しげなその声に・・ 私の心も霞んで行くの 待ちわびた夜明けの暖かさに ホロリこぼれる・・・ 抱きしめて・・この心を・・ ないものねだりな心が また・・歩き出すの 私を信じたいと・・願いながら・・
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