すくらんぶる・のーと

2002年11月01日(金) ◆京に散る。

いったい何をしに京都くんだりまで行ったのだ。



彼は自問自答した。



こんなはずじゃない、という思いが駆け巡る。



こんなモンの為に時間を割いたんじゃねぇ!













今回も楽勝のはず、だった。



前回同様、勝利の雄叫びをあげるのは自分のはずだった。



事前リストを見た時、彼はまたしても勝利を確信した。



”敗北”の文字はとうに忘れ去った。





”以前のオレじゃぁ、ないんだよ。”





周囲にそう言ってはばからなかった彼だった。



その顔は自信に満ちあふれていた。



周りの誰しもがそういう印象を持った。



そう。彼は変わったんだと。





当日。



彼は遅れて会場入りした。



勿論、計算の上で、だ。



彼の宮本武蔵の故事になぞらえてかどうかは定かではないが。



そうして、少し離れたところからじっと場面の空気を読んでいた。





その時が、来た。



目的のブツは最後に出てくるはずだ。



それまでは退屈な時間だ。



ここで彼はちょっと遊び心を抱いた。













魔が差した。



彼はそう懐述する。



運試しにと、取敢ず参加してみたのだ。



ブツは彼にとっては小物ばかりだ。



取るに足らん・・。







が。



その結果にがく然とする。



遊びのはずが、擦りもしない。



ことごとくはじかれた。



! どうしたことだ・・・。












焦った彼は闇雲に突っかかって行った。



まるで、あの悪夢を振り払うかのように。



かろうじて一度、引っ掛かった。







不本意だが、なんとかこれを取っ掛かりに!



しかし。


彼の気合いもこの時点で、すでにピークを越えていた。



この日、彼が勝利の雄叫びをあげることはなかった。



彼の闘志は京の夜に、散った。













後日。



記録係の者からこの日の闘いの記録を見せてもらった時。



彼は腰が砕けそうになる。



・・・ちょき、ばっかりじゃねぇか・・・。









改めて自分の甘さに気づいた。



と、同時にヤツの拳が目の前に迫ってくるような、そんな息苦しさを感じた。



けっ!たかがじゃんけんじゃねぇか。



そう、うそぶいてみたが余計に自分のヨワさに苛立っただけだった。



この日、木枯らし一号が、大阪の街を駈け抜けた。



もうすぐ、また新しい闘いの場がやってくる・・・。




【了】








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special thanks to うりだい マサトレ


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By ちゃうねん

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