人生事件
−日々是ストレス:とりとめのない話 【文体が定まっていないのはご愛嬌ということで】
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私、何て答えたのか全然覚えていない。
「俺、もう死ぬのかな?」
そう、問われたあの時。
自分でトイレに行きたいと、最後に飲食したのっていつだったっけってくらい、出るものもないだろうくらいインプットがない状況で、たった数メートルの距離を何時間も気を失いながら進むような日だった。初めて、お風呂で倒れて自力で立ち上がれなかった。加減できない大きな動きの寝返りしかできず、IVHのルートは危なくて朝からつけられなかった。寝る前には体温が33.7度で目を疑ったが、後頭部も肩も冷え切って固くなっていて、だけど本人には告げられなかった。
翌朝、矢鱈早く起きたら彼の布団は空っぽで冷たかった。そこから長らくの不在を感じて、30分以上私はそこから動けなかった。布団からトイレまでの、どこでどうなっているのか知りたくなかった。寝室から廊下に出るドアのすりガラス越しに洗面所の電気が点いているのをじっと見ていた。
主治医交代の狭間だった。総合病院の主治医の最後の診察を終え、次は往診医の訪問を待つ、そんな時期だった。明らかに息絶えていた。でも、警察は呼びたくない。各病院に連絡したら、私が医療従事者であることを知っている総合病院側が救急車呼んでこちらに来るようにと言った。
それは、明け方の話。消防車も救急車も来た。もう彼が誰の声掛けにも答えないことも、AEDが無駄なことも、私も知っていたし、救急職員だって知っていたと思う。「ごめんなさい」「もう何もしなくていいんです」の言葉は飲み込んだ。
そういえば、状況の聞き取りしていた消防職員に、「娘さんですか?」と尋ねられたっけなあ…「妻です」と普通に答えた覚えがあるけど。
今はもう、死別の未亡人、だな。
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