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2011年12月02日(金) プロスポーツ、最近の動向

2011年も残すところ1月を切った。そこで、最近、気になるスポーツの話題を一挙に掲載する。

(1)読売内部の暴露合戦に期待

読売巨人を解任された清武英利前球団代表兼ゼネラルマネジャー(GM=61)が25日、東京・千代田区の日本外国特派員協会で渡辺恒雄球団会長(85)によるコンプライアンス違反、解任を不当とするなどの記者会見を行った。

清武前GMの会見内容のなかで注目すべきは、読売巨人OBの江川卓氏をヘッドコーチで招へいしょうとした人事についてではないか。清武前MGは、渡辺会長の「巨人は弱いだけでなく、スターがいない。江川なら集客できる。彼は悪名高いが悪名は無名に勝る。彼をヘッドコーチにすれば、次は江川が監督だと江川もファンも期待するだろう。しかし、監督にはしないんだ」という発言を暴露したうえで、「たかが江川、たかがファンという底意に基づいた人事で、到底容認できない」と語気を強めて渡辺会長を批判したという。

“アンチ巨人”でなくとも、「なんだ、また江川か」とあきれる。「江川事件」に関しては、いまさら説明には及ぶまい。「江川」は他球団からのドラフト指名を拒否して大学進学、それでも読売巨人の指名を受けられずに浪人をした挙句、「空白の一日」とやらの屁理屈で読売巨人入団を画策した人物。このドラフト破りに批判が集中すると、指名球団の阪神にいったん入団後、トレードで読売巨人入りした。あからさまなドラフト破りの読売巨人入団が「江川」の意思なのか読売巨人球団のものなのかはいまなお闇の中だが、筆者は後者の意思だと思っている。当時、ドラフト制度をまったく無視した読売巨人及び「江川」に批判が集中したが、両者はどこ吹く風、プロ野球コミッショナーも動かなかった。

当時は、コンプライアンスという概念が社会に根付いていないこともあり、けっきょく、「江川」は読売巨人に入団したばかりか、引退後も野球評論家、タレントとして、いまなおテレビ等で活動を続けている。本来ならば、「江川」の読売巨人入団はコンプライアンス違反として、厳しく糾弾されなければいけない事案であったが、日本のスポーツ界・芸能界・メディア業界は、「江川」に対して厳しい批判を怠ってきた。そういう意味で、「江川」は、読売巨人がもっているコンプライアンス違反の体質を最も象徴する存在の一つであり、日本のメディア業界、スポーツ業界、並びに野球ファンのコンプライアンスに対する甘い認識を最も象徴するものの1つだともいえる。

渡辺会長が「江川」の悪名を集客に利用しようとした背景には、「江川」を簡単に許してしまう日本社会の曖昧さがある。いうまでもなく、読売グループは、発行部数世界一の新聞(読売新聞)と全国ネットのテレビ局(日本テレビ)を傘下に持つ巨大メディアコンツェルン。社会の木鐸といわれるマスメディアが、プロ野球界において、コンプライアンス違反の象徴ともいえる「江川」を、その悪名ゆえに企業内部に取り込もうというのだから、何をかいわんやである。清武前MGによって、読売巨人・渡辺会長の悪行が今後も暴露されることを期待する。

(2)サッカー五輪アジア地区予選は結果オーライ

◎すさんだバーレーンサッカー

U−22(22歳以下)によるサッカー男子のロンドン五輪アジア最終予選C組第2戦は22日、マナマで行われ、5大会連続9度目の出場を目指す日本はバーレーンを2−0で下し、2戦2勝とした。バーレーンは2連敗。日本は前半44分に大津(ボルシアMG)が右CKのこぼれ球に滑り込みながら右足で先制した。後半22分には山田直(浦和)のシュートをGKがはじいた球に東(大宮)が詰めて左足で加点した。東は2戦連続得点。

日本がアウエーで難敵と思われたバーレーンに勝利し、勝ち点3を積み上げた結果は評価されるべきだろう。だが、筆者は日本代表よりも、相手国バーレーンの戦いぶりが気になった。この1試合で断言できるようなことではないとは思う一方、バーレーンの現状から、中東サッカーの荒廃ぶりが想像できるような気がしてならなかった。

中東サッカーというと、固い守備から相手ボールを奪っての早いカウンターで瞬時にゴールに迫る鋭さが特徴だった。ピッチを駆け抜ける彼らの姿は、砂上を疾走する遊牧の民を彷彿とさせた。ところが、日本と対戦したこの日のバーレーンからは、そんな雄姿はうかがえない。守備・攻撃に規律(ディシプリン)がない。GKは素人に毛が生えた程度。劣勢を自覚すると汚いファウルを繰り返す。全盛時においても、中東勢はリードしているときの遅延行為や負けているときのラフプレーがなかったわけではないが、かつては、そうしたプレーに戦術的裏付けがあったものだ。ところが日本戦のバーレーン選手の汚いプレーは、彼らが感情をコントロールできない、未熟さゆえのそれにすぎない。しかも、マナマのスタジアムには、彼らを応援すべきサポーター、観客の姿が見えない。

「アラブの春」という緊迫した政治情勢が、バーレーン国民からサッカーを遠ざけているのだろうか。今現在のバーレーン人には、ナショナルチームを応援する余裕がないのだろうか。バーレーンサッカーの荒廃が中東サッカーを象徴しないことを望んでいる。

◎難敵シリアにホームで辛勝

ホームに戻った日本は27日の第3戦で、シリアと東京・国立競技場で顔を合わせた。結果は2−1で日本が辛勝した。確かにシリアは前評判どおりのチームだった。フィジカルが強く、スピードもスタミナもある。ファイティングスピリットも旺盛だし、無駄なラフプレーはしない。個々の選手の潜在能力は日本を上回っているかもしれない。

だが、シリアに欠けているのは、試合に勝つための組織力、構成力、バランス、戦術、規律であった。とりわけ目につくのは、攻撃を組み立てる訓練を受けていない点ではないか。シリアチームの攻撃は破壊力のある10番(オマル・アルスマ)にまかせるだけ。アルスマは、イランの英雄アリ・ダエイ(90年代中葉からから2000年代初頭までイラン代表で大活躍した、アジアナンバーワンのストライカー)を彷彿させる巨漢FW。両者とも年齢の割には風格があり、いかにも何かやりそうなタイプ。ダエイもそうだったように、サッカーの実力も外形どおり高い能力をもっている。だが、シリアはこの抜群の素材をチームとして生かす技術をもっていない。シリアの得点は、日本のDFがクリアボールの処理にもたついている間隙をついたもの。チームとして、意図して挙げた得点ではなかった。

問題は、そんなシリアにホームで苦戦した日本の側にある。日本の選手はゴール前でシュートを打つべきタイミングでパスをしたり、スルーをしたりして、圧力をかけてくるシリア選手をすかそうとする。山田をはじめとする攻撃陣が、少なくとも3度あった決定機を決めていれば、大差で楽勝できた。五輪代表初召集の大津が、バーレーン戦に続いて、しぶとくゴールを決め、ホーム勝ち点3を得られたからこのチームに対する批判は和らいでいるが、引分けで終わっていたら、非難ごうごうであったであろう。

大津はJリーグ柏からドイツブンデスリーガ・ボルシア・メンヒェングラートバッハに渡って、外国人である自分が得点にかかわることの重要性を学んだというような意味のコメントを試合後に残しているが、そのとおりだと思う。日本人だから得点力がないのではなく、日本のプロサッカーの風土が選手に甘いだけの話なのである。日本サッカーに得点力が不足しているのは、日本人の国民性でもなんでもない。いわんや、肉食系、草食系の「都市伝説」でもない。得点力不足を国民性に還元してしまえば、日本のサッカー界の進歩・発展は終わってしまう。

さて、日本がこのグループを勝ち抜くためには、いうまでもなく、来年の2月5日に行われるアウエーのシリア戦に負けないことが重要となる。若い日本代表が、強引さ、粘り強さを発揮して、泥臭く得点にからむようなタフなメンタリティーを身に着けられなければ、ホームのシリアに負ける可能性のほうが高い。日本が負ければ、得失点差等の僅差の勝負となってしまう。

(3)貧打戦か投手戦か

2011年日本プロ野球、日本シリーズは、【第1戦】●福岡ソフトバンク1−2中日○、【第2戦】●福岡ソフトバンク1−2 中日○、【第3戦】○福岡ソフトバンク4−2中日●、【第5戦】○福岡ソフトバンク2−1中日●、【第5戦】○福岡ソフトバンク5−0中日●、【第6戦】● 福岡ソフトバンク1−2 中日○、【第7戦】○福岡ソフトバンク3−0中日●――という結果に終わった。

7戦ともサッカー並みのロースコアである。この日本シリーズを、手に汗握る「投手戦」と表現するのか、退屈な「貧打戦」とするのかは見解の相違だが、筆者は当然、後者だとみた。負けた中日は、7試合とも2点以上とれていない。味方投手陣が相手チームを1点以内に抑えなければ、勝てないというさびしさである。もっとも、勝ったソフトバンクも似たようなもの。第5戦で5得点を上げたが、打線が爆発したという印象はない。

2011年日本シリーズを玄人好みと評するスポーツメディアもあるし、そういう見方を否定はしない。ただ、2011年シーズンの日本プロ野球の顕著な傾向は、もろもろのデータを引用するまでもなく、投高打低であった。打撃陣の不振の主因については、統一球(低反発球)の導入によるものだという説明が一般的だが、筆者は、主審のストライクゾーンにあったと考えている。筆者の場合、TV観戦が主なので、断言する根拠は一切なく、あくまでも直感にすぎないのだが、これまでのシーズンに比べて、低めに甘いような気がした。

しかし、主審の判定は意図的なものではなく、ルールブックに規定されたとおりのストライクゾーンに従ったとみるべきなのだ。つまり、昨年までのストライクゾーンが低めに辛かったと。

MLBに進出した日本の野球選手のうち、投手のほうが野手より成功する割合が高いのは、緻密なコントロールにあるというのが一般的。日本の野球のレベルそのものが、投高打低なのではないか。

(4)マー君、年俸3億円を突破

2011年シーズン、日本プロ野球でもっとも注目された選手の一人が斎藤佑樹投手(日ハム)だったであろう。斉藤は6勝6敗の成績で終わったものの、年俸は2倍の3000万円にアップし、契約更改を終えたという。集客・話題性が評価されたことは本人が一番よくわかっているのではないか。

一方、2007年夏の甲子園大会で斉藤と同期の田中将大投手(楽天)は、2008年シーズンからプロ野球で投げ始め、4年後の今シーズンは沢村賞に輝く大活躍。年俸3億円で契約更改したといわれる。田中は高校卒業してプロ野球界に身を投じ、プロの世界で4年間精進を続けての結果である。高卒、大卒の違いは年俸面で単純比較すれば、圧倒的に高卒のほうが有利である。

他人の学歴や年俸をあれこれいうのは下劣かもしれないが、2011年ドラフトで日ハム指名を拒否した東海大菅野投手は、この現実をどう見るであろうか。


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