職業婦人通信
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2005年04月05日(火) ウマい仕事

上司が最近、
私に日々の強制労働として課したのが
「毎日、新聞をチェックする」という仕事である。

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新聞を読むなどというのは仕事ではない、と言われるかもしれないが
広報とか秘書部門の方ならおそらくご存知のとおり、
新聞のチェックは会社のどこかで誰かが必ず日常的に行っている
業務のひとつである。

自社についての記事はもちろん、
競合他社や、海外における同業社の動向、
一般消費者のニーズ、ブームの行方、
マーケットの方向性など
新聞から必要と思われる情報を拾っては切りぬく作業で
情報の取捨選択には担当者のカンが必要となるため
いまだに人力で行っている会社が多い。

活字中毒の私は大喜びでこの仕事を引き受けた。

タダで新聞が読み放題!しかも仕事として認定されるのだから
こんなウマい話はない。

友人が「昨今の新聞小説では破格のバカ&エロぶりが必読」
と絶賛していた、日経新聞紙上で渡辺淳一センセイが連載中の
「愛の流刑地」のエロ度とバカさ具合をこの目で確かめることができるだけでなく、

自宅では新聞購読していない私が
その日のテレビ番組をすべて事前にチェックでき、
スポーツ新聞を買わずともスポーツ情報を得ることができるのだ。

おまけに
私はこれまで政治経済については無知蒙昧、全くのバカだったが、
これから毎日、新聞読んでりゃ少しはわかってくるのではなかろうか。
「えむあんどえー」とか「きんゆうさいへん」とか「ゆうせいみんえいか」
とかについて「朝まで生テレビ」みたいに
ベラベラ語れる論客になれるかも(いや、なりたかないけどさ)
しれないではないか。

素晴らしい。これこそ仕事嫌いの活字中毒者に適した仕事ではないか。
上司も見る目があるよ。うんうん。

と、大喜びで引きうけた1週間後、
新聞を見るのもイヤになった。

なぜかといえば

新聞はもちろん1紙だけではなく、

うちの会社でとってる新聞は
毎日20紙。

いいですか、毎朝20種類の新聞がどぉぉぉーんと机の上に積みあがり、
夕方にはまた10紙近くの夕刊が積みあがるのですよ。

新聞も全国紙だけじゃなくて、
業界紙だの株の専門紙だの、まっったく興味がないジャンルのものも読まねばならぬ。

「非鉄国際価格の再急伸が追い風 機関投資家の買い流入 大平金」(証券関連某新聞より)
なーーーんて書かれても、私には宇宙からのメッセージにしか読めない。

といっても活字中毒であるから
何も読まずにぼーっとしているよりは「機関投資家の買い流入」を読んでるほうが
まだマシである。

何よりも私を痛めつけるのは
「じっくり読めない」ということ。

ご存知のとおり、新聞ってのはじっくり読めば1紙で1時間くらいかかる。
が、全部の新聞をじっくり読んでる時間はないので
仕事と関係なさそうなページはじゃんじゃん飛ばしていかなければ
いつまでたっても新聞の山は減ってくれないのだ。

つまり、
気になるスポーツニュースも新刊本の紹介ページも人生相談も新作映画の評論も、
私の興味あるページはすべてが仕事とは何の関係もないので
さっさと次のページへと進んでいかねばならない。

「ああ・・ちょっとこの記事、じっくり読みたいなぁ」
と思っても、
「ダメダメ、まだ新聞いっぱいあるんだからここで止まってられないよ」
という内なる声がそれを押しとどめるため、
興味のある部分でさえ横目で流してゆくしかないのが
私には苦しくて苦しくて仕方がない。

さらに、出張なんてしようものなら
不在の間、着々と新聞が机の上に積みあがっている。
こないだ4日出張して、土日休んだ後月曜日に出社したら
ほぼ1週間分の朝夕刊がどおおーーーーーーんと机に積みあがっており
自殺しそうになった。

と、いうわけで
やっぱり仕事嫌いの私であった。
ウマい仕事などない。

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ちなみに
渡辺淳一センセイの「愛の流刑地」(友達が「アイルケ」と略していた。そのセンスはどうかと思う)
であるが、

ヒトヅマと道ならぬ恋に落ちた売れない小説家が
とにかく毎日毎日ヒトヅマと愛欲にオボれ倒すという内容で
まぁなんつうか、なーーーーーーんの内容もない、エロ小説であった。

見るべき点といえば、
「郵貯・簡保は完全民営化」とかがトップの日経新聞の裏側に
この、エロジジイが貞淑なヒトヅマとイチャつきまくるという
トンチキ小説がこってりと毎朝展開されているという
そのアンバランス感くらいであろう。

(渡辺センセイもよくもまぁ、毎日毎日性描写で飽きないものであるよ)と
変なところで関心しきりの私である。

が、こないだウチの会社の役員同士がエレベーターを待ちながら
「日経読んでる?連載のあれ、エロいよなぁ、ムグフフ」
と、嬉しそうにしゃべっているのを目撃してしまったので
日経新聞の編集方針は世のおじさんのハートを掴んでいるのかもしれない。うん。


千代子 |MAIL
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