職業婦人通信
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2004年07月16日(金) |
三十路の挑戦 その5 |
「お前のバイクの免許がどうなるかなんて知ったことか」 と言われるのはわかっているのだけど、結局またバイクネタですんません。
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さて、結局は免許を取らざるを得なくなった千代子は再度、 教習所通いをスタートさせていた。
1段階こそ最短5時間ですむところを11時間もかけてしまったが、 最近やっと、バイクにどうやって乗るかがわかってきた (いまさらかよ、というツッコミはさておき)。
とはいえ、 角を小回りできず対向車と激突しそうになったり、 一本橋(平均台)を落ちずに渡る成功率は30%以下、 クランクではパイロンを蹴散らす (↑このへん、わかんない人はすみません) と、あいかわらずレベル的には最悪の部類で 教習所の先生には怒られてばかりである。
にもかかわらず、なんと千代子は2段階では一度もダブることなく 最短時数でパスしてしまった。
我ながら、 (先生、そりゃ甘すぎるんじゃ・・・)と思ったが、 時数をかければお金もかかるので黙ってパスさせてもらうことにした。 ということは、次は卒業検定である。
しかし、このレベルで検定なんか受かるはずがない。 だいたい、卒業検定に万が一合格したりしたら とりあえず(125ccまでの排気量のバイクであれば) 公道に出ていいことになってしまうのである。
はっきり言って、こんなに運転できてない今の状況で 公道に出たら社会の迷惑になるだけでなく自分が死ぬ。 運転もおぼつかない人間を野に放って良いはずがない。
・・・と思いつつも、容赦なく卒業検定の日はやってきた。
私とともに小型2輪の卒業検定を受ける4人は、みんな十代の ピチピチ女子ばっかりであった。 「わー緊張するぅ」 などとキャッキャキャッキャさんざめく十代に囲まれて 三十路のオバハン(彼女たちから見たらそうだろう)は すっかり気圧されてしまっていた。
おまけに私は小心者のあがり症。
自分の順番が回ってくる頃には緊張の極北に達したばかりでなく、 頭の中は真空地帯と化しており、
出発した最初のころこそ、 (えーとギアをローにしてぇ、それからウィンカー出して・・・) と、手順をモタモタと思い出す余力も残っていたのだが、
途中でウィンカーを消し忘れたままずっと走っていたことに気付いた瞬間、 いよいよ残された理性が真っ白に燃え尽きてしまったのである。
それでもヨロヨロとコース内を周回し、 指定されたコースの3分の1をクリアしたのだが、 そこでついに決定的なミスをやらかす瞬間がやってきた。
一時停止の標識前で ギアをセカンドに入れたまました停車したうえ、そのまま発車しようとして、 あっさりエンストこいてしまったのだ。
私はあたふたモタモタと (えーとこういうときはギアをローにして、それからアクセルあけて 半クラッチにしてぇ・・・) と、必死に所定の手順を踏んだのだが、 いくら頑張ってもバイクが動いてくれないのである。
(なんでぇぇ!?神様ぁぁ〜〜〜)
と、私は完全なパニックに陥った。呼吸まで苦しい。
見かねた試験官が千代子を
「千代子さ〜ん、エンジンかけなきゃバイクは走らないでしょ!!!」
と一喝するまで、私は口でハァハァしながらクラッチとギアを いじりたおしていたのであった。
・・・あ、エンジンかかってないんだっけ・・・ エンストってエンジンストップってことだもんね・・・ハハ・・・(脱力)
そう、私はエンジンをかけなおさないまま、 必死にバイクを始動させようとしていたのだ(バカ)。
そのことに気付いたとき、私の魂はほぼ抜け殻となり意識は遠のいた。 口からエクトプラズマ出てたと思う。
が、ボーゼンとしている私に試験官はひとこと、冷たく 「じゃ、千代子さん、心の準備ができたら行きましょうか」 と言ったのであった。
心の準備・・・やっぱりそうよね・・・もうダメ(検定中止)ってことよね・・・ そりゃそうだ、エンストこいたんだもんね、えへへ・・・
その後、どうやってコースを回ったのかほとんど覚えていない千代子であった・・・
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合格発表を待ちながらも、私は相方や浮気相手や友達や同僚や、とにかく いろんな人に「落ちたよ」メールを打ちまくり、同情と励ましと哀れみのメールを 受信しまくって自らをなぐさめていた。
合格発表はひとりずつ別室で、試験官と二者面談の形式で行われる。
千代子はけなげにも (どうせ落ちるにしても、せめて 落ちた理由と、ダメだったところを聞いてメモってこよう) と思い、ノートとペンを持って部屋に入っていった。 みんな、こんなケナゲな私に惚れるといいと思うよホントに。
試験官は 「千代子さーん、だいぶ緊張してたみたいだねぇ〜 だぁ〜めだよ、エンジン切ったままじゃさ〜」 と、欽ちゃんのような口調でのんびりと叱った後、唐突に 「で、結果だけど、合格」 と言ったのである。
不合格の「ふ」を聞き落としたと思った千代子は 「・・・はぁ?あのすみません、もう一度」 と言ったのだが、何度聞いても 「合格ですよ」 という答えがかえってきたのみであった。
私はまたも口からエクトプラズマを出し、 持っていたノートとペンを膝からばさばさ取り落としながら 「あの・・・ほんとに合格なんでしょか・・・」 と繰り返した。
あんまり何回も確認されたもんだから、試験官はついに 「合格じゃないほうがよかったですか?」 と、少しイラついた口調で言い出し、
私はサザエさんのように 「んがぐぐ」 と喉をつまらせ、へどもどしながら 「いえいえあのその、合格嬉しいです、はいあの、合格でいいです」 と、頭の悪い返答をした。
こうして私は、125ccまでのバイクを晴れて運転する資格を得たのである。 信じられん。このあたしが小型とはいえ、バイクで街に出ていいなんて・・・。
というわけで、とりあえず小型二輪の資格を得た千代子だが、 まだ三十路の挑戦は終わってはいない。 次なる挑戦は、本来の目的であった 400ccまで乗るために必要な中型二輪の免許である・・・。
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