いつかどこかで。

2006年08月17日(木) 晴れ

僕は3年前から仕事をしていない。
完全に家に引き篭もって外に出るのはタバコを買いにいく時くらいだった。
携帯代もタバコ代も遊びに行く時のお金も親に借りている。
携帯代がいつもより少し高いといつも文句を言われ、
車のガソリンの減りが早いとそれでも文句を言われていた。
4年前からずっと続いていたのだけど、
軽く受け流していた。
自分が悪いから言われるのはしかたないと思う。

3月くらいに近所のコンビニの店員さんを好きになってから、
僕は少しずつ外に出るようになった。
何か目的があると言う訳でもないけど、
車で町並みを見たり、
夜景を見たり、
ただ静かな所で星空を見たり、
繁華街で仲良く話しをしてるカップルやグループを見たりしてた。

3年前までは細かった道が広くなっていたり、
混雑していた交差点が立体交差になっていたり、
田舎道だったとこが住宅街になっていたり、
大型ショッピングモールの近くに色々店が増えていたり。

3年前の僕が覚えている景色とのギャップを感じながら、
繁華街にいる人たち、
夜景や星空のから見える輝き、
少しずつ変わっていく町や人の中で、
僕ももう一度輝きながら生きていきたい、
そう思うようになってきていた。

コンビニの店員さんを好きになってから、
僕は体力作りをかねて運動をするようになった。
コンビニの店員さんと付き合えなかったとしても、
いつか自分を好きになってくれる誰かの為に、
少しでもかっこよくなりたかったからだ。

コンビニの店員さんを好きになった事から始まり、
外に出るようになって、
景色や町や人の時間を感じるようになって、
今すぐは無理でも少しづつでも前に進んで、
ちゃんと仕事も見つけようと思ってきた。

でもうちの母親は何かと言うとお金、お金、お金、と言う。
ガソリン代携帯代タバコ代。
一生部屋から出るなというような勢いで。
僕は母親から文句しか聞いたことがない。
確かに今まで迷惑かけてきたから僕が悪いのかもしれない。

でも僕にとって今が部屋の外に出る為のリハビリなんだよ。

僕が外に出るようになって変わりたいって思う事よりも、
ガソリン代が大事なのか?

3年間ほとんど電話なんてしなくて人との話方も忘れた僕が、
友達とやっと電話する気になって話す事よりも、
携帯代のほうがそんなに大事なのか?

僕が誰かをまた好きになれて、
今の自分から変わりたいって思う事よりも、
部屋に閉じ込めるほうがそんなにいいのかよ?

今日もいつもの用に口うるさく言われた。
さすがに頭にきて、
僕は3年間引き篭もっていたから、
立体交差になったことも道が広くなったことも、
新しい店が増えたことも住宅街ができたことも、
今年の3月まで知らなかったと言った。

そうしたら母親は笑っていた。
僕を見下すように笑っていた。

だから今まで言ってなかった左腕のリストカットの傷を見せた。
こうなってたのを知ってたのか?っと。
そうしたら知っていたと言った。

なんで知っていたのにあんたは止めないんだ?
なんで知っていたのにあんたは何も言わないんだよ?
あんたそれでも母親かよ・・
俺はずっと誰かに気づいてほしかった。
わかってほしかった。
でも一番身近にいたあんたが見て見ぬ振りをしてたんだよ。

口うるさく言うのは心配だからだと母親は言った。
あんたが心配なのはなに?
車?ガソリン代?それとも葬式代?

ははははは。

俺は間違いなくあんたの息子だわ。
思うだけで何もしてない。
言うこととやってることが違う。
まさしくそっくりじゃん。

今更心配してるからだと言われて、
俺がそうだったんだって感じると思ってるのか?
いつも言うのは金の事ばっかりで、
俺が手首を切って苦しんでる時に見て見ぬ振りをして、
俺が変わろうと思ったときに、
平気な顔して道を塞ぐような奴が、
俺の事が心配だなんて今更言ったところで信じるわけないだろ。

あんたは俺の母親だけど、
あんたに愛されてはいないんだって実感した。
俺の母親は死んでいるのと同じ。

いっその事そんなにお金が大事なら俺の事殺しちゃえばいいじゃん。
山形の友達なんて3人くらいしかいないし、
電話もめったにかかって来ないし。
訪ねてくる人もいないし。
殺して庭に埋めといても誰も怪しまないし気づかないよ。
あんたが俺を殺しても俺はあんたを恨まないよ。
まぁあんたは俺の命より自分の手が汚れる事を気にするんだろうけどね。

俺が就職活動するのにもう少しかかりそうだけど、
就職したら生命保険の受取人をあんたにしてプレゼントしてやるよ。
あんたが俺より長生きしたら、
大好きな金がもらえるようにね。

俺はあんたみたいにはなりたく無い!!


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