ぼよっちが今の家に越してくる前に
住んでいた家は、今の家から歩いて2分
くらいのところにある。
30坪の敷地に今は3階建ての家が2軒、
ひしめくように建っていて、住所も前の
住所は現在は抹消されている。

その傍に不動産屋さんがある。
旦那さんが鉄砲の趣味があって、
要するに狩猟なんだけれど、大型犬を
2匹飼っている。

その不動産屋さんは数年前に
前立腺癌を患った。
前立腺は男性の更年期と言ってもおかしくない
ものではあるけれど、癌だからやはり
大変である。
既に手術は出来ないし、放射線も出来ないので
抗癌剤のみの治療だった。
奥さんは後妻で、日赤病院の婦長をしていた
人だった。

要するに、旦那が何かで入院した時に
くどかれまくって嫁に来たのだった。
前の奥さんとの間に子どもは2人。
既に社会人となっていたため、なつく筈も無い。
かといって、嫁に来たのは40代だったから
子どもは出来ない。

息子はさっさと家を出て行った。

そして。
先日、旦那が無くなった。
寂しいだろうと思って、昨日買った「パステル」の
なめらかプリンをまた横浜へ買いに行って
持って行ってあげた。

貯金も殆ど残していなかった旦那で
息子に全てあげたという。
後妻だから、通帳全部渡したらほっぽり出される
だろうに・・・。

何もする気がないという。

脱力感と寂しさと無力感で夜も眠れず、
寂しくて寂しくて堪らないと言う。
どんな事情があるにせよ、夫婦として
何十年も一緒に生きてきた。

なんだか可哀想だった。