雨草子
目録|前項
霧雨の中、車を走らせていた。 人気の無い山道。 雨なのか霧なのか分からないぐらいの細かい水滴が、 フロントガラスを滑っていく。
オレンジの街灯群が遠くに見え、 オレンジ色のスプレーのように、 霧雨を浮き上がらせている。
乗り越えたと思っていた苦しみがまた私に襲い掛かり、 無気力なまま、体も疲れ、 ただただハンドルを握り、ただただ道を行く。
こんなときに、私は頼る人が居る。 彼と私は、まるで牧師と信者のようで、 彼と話してるとき私は、 初めてこの世の真理を知ったような子供のような気分になり、 私も真理が解ったような、素晴らしい気分を感じる。
でも一人ではその真理に辿り着けない。
一人になったとたん、さっきまでの幸福が薄れ、 不安と苦しみに襲われていく。
彼はまもなく私の傍から居なくなるのに、 このままでは私はいつまでも迷走したままだ。
私も牧師のように、人生の真理を自分で理解したい。 彼は言う、それは考えることだと。 考えてどんな小さな事でも疑問に思って、 考えて考え抜くんだと。 物事を客観的に、感情を込めずに捉えることが重要だと。
私もいつかそうなれるだろうか。 理解できる日が来るのだろうか。
・・・待ち遠しい日だ。
|