へっぽこコラムもどき2
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2004年07月21日(水) 「誰も知らない」今日を生きる子供たち(6/30)

30日は月末締め日だけど、折角当たったし、どうしても観たい!ってことで、無理矢理
仕事の都合つけて試写会に行ってきた。
1年前から早く観たくて観たくてずっと公開を待ってたんだもんね。待った甲斐があったよ。
柳楽優弥くんは今まで見たドラマとは全然違って、すごく自然でいい表情してるんだ。
子供たちみんなホントに可愛くて、大好き!って気持ちになるよ。

【これ以降は多分にネタバレですので、注意して下さいね】


最初はとっても明るく始まるの。引越し荷物が新しい部屋に運び込まれて、旅行カバンの
中から茂とゆきが出てくるところ。明が電車で来た京子を駅まで迎えに行くところ。家族で
引越しそばを食べながら、大きな声で騒がない、外やベランダに出ない、とルールの確認
をするところもなんかも、茂くんの面白さやゆきちゃんの可愛さもあって、楽しいのよ。

それがお母さんが出て行ってしまうことで段々辛くなっていくんだけど、暗さは感じられなかった。
実話がベースにあって、シチュエーションとかエピソードなんかは使っているけど、あの事件とは
違うものに仕上がっていると思う。実際はどうしようもなく絶望的な結末になってしまったけど
「誰も知らない」はそれでも未来が見えてくるっていうか、光が射してる感じがした。

明の背負ったものは、12歳が背負うには重過ぎて、過酷で残酷だけど、そんなに暗い印象
が残らないのは、子供たちがみんな活き活きしてるからかな。

子供たちひとりひとりが可愛くて可愛くて、画面を見ながら思わず微笑んでしまう場面が
たくさんあった。こんなに頑張ってけなげに生きてるのに、何で捨てたりできるんだろ?
女である前にもう母親なんだってことを自覚して欲しい。明に、『好きな人がいるの。』って
言うところ、『また?』って呆れる明。これってオカシイよ。明はまだ12歳の子供だってことを
忘れちゃってるの?友達みたいな親子っていいと思うけど、こういうのは違うと思うな。
小さい頃から家事や弟妹の世話をさせられて、確かにしっかりしたお兄ちゃんではあるけど。

きっとこんな事を繰り返して、みんな父親の違う兄弟が出来上がったんだよね。お母さんが
恋しちゃいけない訳じゃないけど、親の責任ってのはどうなるの?子供よりもオトコを選ぶ女が
私には理解出来ない。今だってそれが理由で色んな事件が起きる度に怒りが込み上げてくる。

お母さんが出て行く前に塗ってくれた赤いマニキュアのついた爪を、大切そうに見てた京子。
1度お母さんが帰ってきた時、京子がマニキュアの瓶を手に取って床に落としてしまったら
すごい勢いで怒ってたけど、それも子供に対するものではなくて、オンナだったんだよね。
『お母さんのものに勝手に触らないで!』みたいな。そんなところも哀しくなった。

出生届も出さないから戸籍も無くて、世間に知られないように育てられてきた子供たち。
明と京子が学校に行きたがっても『学校なんか行かなくても偉くなった人はいるじゃない』
って勝手な言いようだわ。アントニオ猪木で思わず笑ってしまう明がたまらなく可愛かった。

印象に残ったシーンは数え切れない。ほとんど全部が残ってるかも。
・お母さんが出て行った朝、メモを読んで冷静にお金を数える明
・妹たちには、仕事で暫く帰ってこないと説明する明
・まわりの目を気にしながらベランダで黙々と洗濯をする京子
・買い物したり、歩きながらブツブツと光熱費の計算をして、銀行で家賃の振込みをする明
・ノートにレシートを貼ったりして、こまめに家計簿をつける明
・家に閉じこもって遊ぶ茂とゆき
・おもちゃのピアノを大事にしている京子
・段々お金が無くなってきて、お母さんの昔のオトコを訪ねてお金を集める明
・一旦お母さんが帰ってきた時、プレゼントを開けて嬉しそうにはしゃいでる子供たち。
・その時貰ったマフラーをいつも巻いてる明
・電気が止められて、公園に水を汲みに行くのが日課になった子供たち。
・カップ麺の空いたカップに種を植えてベランダに置く子供たち。
・コンビニの前でクリスマスケーキが値下げするのを待っている明
・コンビニのお姉さんに頼んで、お年玉のポチ袋に宛名を書いて貰い、自分でお金を入れて、お母さんからだと言って渡す明
・押し入れ?に閉じこもる京子
・誕生日にお母さんが帰ってくると信じて、駅まで迎えにいくと言い張るゆき
・ゆきの手を引いて一緒に駅まで歩く明
・きゅっきゅっと鳴るゆきのサンダル
・結局帰ってこないお母さんを諦めて夜道をトボトボ帰る明とゆき
・モノレールを見上げるゆきに、いつか乗って飛行機を見に行こうねと言う明
・街で出来た友達と楽しそうに外や家で遊ぶ明
・ゲームの邪魔をして明の友達に突き飛ばされる茂
・それを見て抗議の目で明を見る京子
・京子に見咎められてバツの悪そうな明
・段々雑然として汚れていく家の中
・コンビニで友達に万引きを強要されて出来ない明
・遊びに来なくなった友達を、中学の前でずっと待っている明
・忙しいからと、相手にされない明
・着ている服がどんどんボロボロになっていく子供たち
・公園で思い切り遊ぶ紗希と子供たち
・コンビニのお兄さんに、賞味期限切れの食べ物をコッソリ貰いに行く明
・出会い系で誘ったオジサンとカラオケをして貰ったお金を、明に渡そうとする紗希
・それをはねつける明
・イライラして弟妹にあたってしまう明
・相変わらずマイペースな茂
・無邪気で可愛いゆき
・いつも通る階段
・お金の工面が出来ず困っている明に、ずっと貯めていたお年玉を渡す京子
・思い掛けなく野球をすることになって、ユニフォーム姿で活き活きと走り回る明
・イスの上に立って何か取ろうとしているゆき
・家に帰って、冷たくなったゆきの手を触る明
・ゆきをトランクに入れてモノレールで空港に向かう明と紗希
・トランクをそっと撫でる明
・空港近くの飛行機の見える空き地に穴を掘ってゆきのトランクを埋める明と紗希
・ゆきの手が冷たくて気持ち悪かったと紗希に話す明
・やっと届いたお母さんからの現金書留
・また公園への水汲みやコンビニに賞味期限切れの食べ物を貰いに行くいつもの毎日を送る子供たち

まばたきするのも惜しいような気持ちで、じっと観ていた私。
観終わって日にちを追うごとに、どんどん胸に何かが広がって、場面場面が鮮明に浮かび上がってくる。
そんなじんわりと、でも確実に心に残る映画でした。


なつママ |MAILHomePage

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