酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2007年09月21日(金) 『オトシモノ』 福澤徹三

 高飛車な女王様っぷりが似合う若手女優の沢尻エリカ様、言葉使いに時々「ん?」と感じるものの、姿カタチの美しさに今一番メロメロ〜なの。そのエリカ様が主演したホラー映画『オトシモノ』はトッテモ観たい!のだケレドモ、いつもレンタルされていてまだ観れずx なので原作を読んでみた。
 ここ最近ずっと集中してホラーを読みつつ、なかなか怖いと思える作品は少なく、これもたいして期待してなかった。そのいい加減っぷりがかえって良かったのか、結構面白かった。ちょっと引っかかる点はあったケレドモね。
 自殺の多い路線・・・この設定が既に不気味。こういうのありそう。主人公の奈々の周りで自殺や失踪が相次ぎ、共通していることは利用する駅でオトシモノを拾っていること。そしてそのオトシモノは同じものなのである。ありがちな設定なのだケレドモ、何年も同じオトシモノを利用者が次々と拾得するってなんだかかなり不気味。そのオトシモノを拾ったばかりにヘンなモノに引き寄せられてしまう。
 そのオトシモノの持ち主になにかがある・・・なんて当然の流れ。でもそれだけじゃなかったところが面白くもあり、引っかかる点でもあった訳なの。その引っかかった大元の不気味を流してしまった点が小説ではまずかった! あれは解明しなきゃー! そして解明してあんな大雑把な始末のつけ方ではなくキッチリしなきゃ駄目ダメだめー。
 なーんてここまで語るほどには面白かったのである。うむ満足v

 べつにオカルト好きなわけでもないし、なにかを信仰しているわけでもない。
 けれども、この世界に人間の理解を超えたものがあるのは、当然のような気がする。


『オトシモノ』 2006.9.10. 福澤徹三 角川ホラー文庫



2007年09月20日(木) 『コールドゲーム』 荻原浩

 高3の夏休み、光也は進む道が見つからない。甲子園の夢破れ、野球部を引退。母には進学を勧められているが決められない。久しぶりに幼馴染・亮太に呼び出された光也は厭な話を聞く。中学生の時の同級生が次々と襲われている。亮太が言うにはトロ吉の復讐ではないかと。トロ吉は亮太を筆頭にいじめに壮絶な遭っていた少年だった。亮太と共にトロ吉を探しはじめる光也が辿り着く真実とは・・・。

 なんともぎちぎちと心に痛い物語。おそらく読む人は主人公の光也にかなり感情移入出来るのではなかろうか。光也は亮太のようにいじめをしてはいなかった。だがいじめを止める事も出来なかったのだから・・・。このことに対する作者の糾弾は的を射ていると思う。またいじめられた少年に対する作者の批判(意見)もソノ通りだと思う。誰だってスケープゴートの代わりにはなりたくない。その心根が問題なのだとは思う。思うケレドモ・・・壮絶ないじめの対象にはなりたくない。堂堂巡りだ。主人公の光也が最後に自分の罪を自覚して誓うシーンがあって、その言葉の強さには違和感が・・・。もう少し違うカタチにおさめられなかったのか、と。若さゆえのあの語気の強さなのか? 本当に痛みを感じたのであればもう少しもう少し柔らかな言葉になるのではないか、と思ったのだった。

 トンボの羽根をむしるのと人の命を奪うことの区別がつかない、頭の中味はガキで、体だけ鍛え上げられた完全武装の兵士。そんな人間を想像して光也の心臓はスピードを速めた。しかもそうしてしまったのは、自分たちなのだ。

『コールドゲーム』 荻原浩 新潮文庫



2007年09月18日(火) 『顔なし子』 高田侑

 父が連れてきた美しい女と女の息子。母の喪も明けぬうちに美しい女に狂った父親に反発を覚えるが、美しい女に少年らしい憧れを抱く。しかし、その女の息子は表情の少ない不気味な少年だった・・・。その美しさゆえに男たちから卑猥な欲望の的に晒された女を待つ運命は。そしてそのために女の息子は・・・!?

 昭和と言う時代がもう懐かしいものになってしまった。特に昭和の初期なんてものすごく昔のことなのだろうなぁ。郷愁を誘う物語の中で悲しくも恐ろしい事件が起こるのだケレドモ・・・怖いと言うよりも哀しい切ないなのかもしれない。こういうことあったかもしれないなって、そんな哀しい日本のある時代の物語。

「女のいじめはこえぇんだ。上っ面で優しいような顔をして、深いところを抉るんだで」

『顔なし子』 2007.8.25. 高田侑 幻冬舎



2007年09月17日(月) 『禍家(まがや)』 三津田信三 

 貢太郎は事故で両親を亡くし、祖母に連れられ引っ越してきた。この町は初めてのはずなのに何故だか知っている気がするのは何故だろう。なにか異様なオーラを放つ森、そして初めて会ったはずのお爺さんに言われたのだった。「ぼうず、おかえり・・・・・・」と。混乱する貢太郎を待っていたのは貢太郎がひとりになると怪異の起こる家だった・・・!?

 怖い目に遭いたい訳ではないのだケレドモ、ホラーな世界には何故だかものすごく惹かれてしまう。でもなかなか満足する怖さにはお目にかかれない。そんな不満の中で読んだ『禍家』は優れものだと思った。最初からセピア色した懐かしい怖さ満載で。主人公が理不尽な目に遭うことがホラーの王道なのかもしれないなぁ。貢太郎は頑張ったよー。

 しかし、ここにあるのは、救いようのない絶望、理不尽なまでの優越、底無しの悪意、圧倒的な狂気、身の毛もよだつ憎悪、あまりにも身勝手な殺意・・・・・・。

『禍家』 2007.7.20. 三津田信三 光文社文庫



2007年09月16日(日) 『ハッピーエンドにさよならを』 歌野晶午

 歌野晶午さんの珠玉の短篇集〜v イエーイv 次は?次は?とワクワクしながらページをめくったわ。面白かったなぁ。本タイトルの『ハッピーエンドにさよならを』は短篇に通じるハッピーエンドの無さのこと。いやぁツライくらいに容赦のないエンディングでベリーグー。中でも「死面」の情景が頭の中に浮かんで不気味でたまらなかった〜。やっぱり短篇で力を見せ付ける作家さんていいなぁ。オススメv

 そうかもしれないし、そうでないかもしれない。今となってはどうでもいいことだ。

『ハッピーエンドにさよならを』 2007.8.31. 歌野晶午 角川書店



2007年09月15日(土) 『六月の桜 −伊集院大介のレクイエム』 栗本薫


※思いっきり内容に触れますのでご注意ください!

 いやぁ・・・伊集院大介と言うだけで読まずにいられない。それくらいの魔力を持っている作家さんである。が、しかし・・・これはどーだ(謎)。孤独な11歳の少女が孤独な老人と出会い互いの存在に癒される。そしてふたりは淫らな関係になるんだよ? 11歳の少女が77歳の老人に・・・だよ? それは想像するにおぞましかった。しかも事件は犯人も動機もまるわかりなのだもの。これはどーだぁ?と口に出しながら読んだー。伊集院さんの口を借りて栗本さんが言いたいことはワカル。それはもうよーくワカル。でもこれっていいのかなぁ。

 孤独は・・・・・・孤独はひとを腐らせるから、怖いんです。なんで腐らせるかというと、腐ってしまったことが、わからないからです。

『六月の桜 −伊集院大介のレクイエム』 2007.6.28. 栗本薫 講談社



2007年09月14日(金) 『月触島の魔物』 田中芳樹

 ヴィクトリア朝イギリスで大手会員制貸本屋に勤めるニーダムとメープル(叔父と姪)は、大作家ディケンズとディケンズの元に滞在しているアンデルセンの世話をすることになる。超大物作家ふたりは凸凹コンビでマイペース。ふたりに振り回されてニーダムとメープルは不気味な噂が絶えない月触島へ渡ることになるのだが・・・

 理論社のミステリーYA!シリーズは若い人向け。ターゲットは10代らしいのだケレドモ、私も充分に楽しめたv イラストが入っていたり、想像力を喚起しやすくなっている。ここまで至れり尽くせりになっているんだなぁ。贅沢だこと。今って漫画や映像で物語を容易く丸飲み傾向であるため活字は苦戦している。でもでも活字だからこそ頭と心で大きく想像の世界を遊べると思うのだがなぁ。私は活字から離れないわっ(決意)。この物語はメープルという魅力的なヒロインを筆頭に愛すべきキャラクターがいっぱいで楽しめる。オススメv

『月触島の魔物』 2007.7. 田中芳樹 理論社



2007年09月13日(木) DVD『ゆれる』

 いつもオール・レンタルで借りられなかったDVDをやっとレンタルできた。オダジョー主演の『ゆれる』である。原作と映像とどう違うのかワクワクだったのだケレドモ・・・うーん、かなり問題作。ラストをどう解釈するか悩むところ。
 原作では、タケル・ミノル・チエコの三人の視点で物語が語られていた。映像ではほぼタケル視点。原作を読んだ時にも感じたことだケレドモ、チエコが惨めで憐れなんだー。田舎でそのまま朽ちていけたものを都会からちょっと帰省してきた男に全てを奪われてしまう。選んだのはチエコなのだケレドモ、あれってタケルが奪って壊して捨てたようなもんだわ。ミノルの葛藤もコンプレックスもすごくよくわかる。そのタケルをオダジョーが、ミノルを香川照之さんが。俳優の真っ向勝負が伝わってきた。香川さん圧勝だー。



2007年09月11日(火) 『夜は一緒に散歩しょ』 黒史郎

 ホラーってのは簡単そうでスゴク難しいジャンルだと思う。読んでいてなにかデジャヴュを感じる物語が多いのもいたしかたのないこと。かつて怖かったなにかの焼きまわしなのだもの。そんな中、久々に丁寧なホラーを読めた。まぁ、内容的には焼きまわし感は否めない。否めないのだケレドモ面白かったの。じわじわと気持ちの悪い不安定な読み心地で黒い正体が現れるときに「あ、なるほどな」と。幼くして母を亡くした少女を使うことがうまかった。こういう新しい才能を読めるとなんだか嬉しい。次回作にも期待しちゃう。

『夜は一緒に散歩しょ』 2007.5.18. 黒史郎 メディア・ファクトリー



2007年09月08日(土) TVドラマ『坂道の家』 原作:松本清張

 昭和30年代、こつこつと金を貯める事が生きがいの小間物屋の寺島(いかりや長介)は、店にふらりと現れた美女リエ(黒木瞳)に一目で魅せられる。リエに欲しそうに見ていた財布を渡し、後日、香水や口紅を持ってアパートに押しかける。リエの勤めるキャバレーに通い、どんどんとリエの魔性の魅力に虜にされていく寺島。貯めに貯めた金を全てリエのために使いこみ、坂道の上にある家にリエを囲い、リエを独占しようと狂ったように・・・

 10年以上の作品ですが、今見てもなんの遜色もない面白さでありました。長さんが黒木瞳の妖しい色香に絡め取られていき、狂っていく様は見ごたえがありました〜。また黒木瞳がちょこっととろいふりして舌ったらずに喋るさまがいじましいくらいに色っぽいの!!! やられちゃった〜。松本清張さんモノは数えるほどしか読んでいないのですケレドモ、なんだかずっかり読み込みたい気分になりました。こんなにもオトコとオンナを表現されていたのですねぇ。感激v



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