酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
DiaryINDEXpastwill


2007年05月09日(水) 映画『ゲゲゲの鬼太郎』

 日本人なら誰もが知っている妖怪たちの物語、それはゲゲゲの鬼太郎だろうなぁ。今回映画化されて評判がいいので見に行ってきた。これがむちゃくちゃ面白かった! すごく丁寧に作りこまれていて見ごたえたっぷり。出演者の豪華さにも驚かされた。鬼太郎役のウエンツ君はとても綺麗な鬼太郎で、儚い恋心をうまく表現していてジーンときた。猫娘役の田中麗奈ちゃんは最高級にキュート! かわいいったらありゃしないにゃんっ。猫娘の淡い鬼太郎への想いもせつなくてねー。猫ダンスなんて涎もん。あの美しい脚ったらいったいなんなのー!(大絶賛) 砂かけ婆の室井滋さんもうまいっ。まさに怪演。あの化けっぷりったらないですわ。子泣き爺のかんぺーさんはそのまんま。んで・・・ビビビのねずみ男ですわ。これがもう大泉洋の一世一代の当たり役はまり役。洋ちゃんはねずみ男を演じるために生まれてきたと言っても過言ではない。あの汚さズルさをああまでうまく演じるとは。洋ちゃんの前にねずみ男なし。洋ちゃんの後にねずみ男なし。目玉親父の声が永遠にあの声であるべきであるように実写化のねずみ男には洋ちゃん以外考えられないわー。画面に出てくるだけで大爆笑。洋ちゃんこれでいったなー、完全に。笑える映画はいいですわ。ニッコリ。ああ楽しかったv



2007年05月04日(金) 『ハンニバル・ライジング』 トマス・ハリス

 『羊たちの沈黙』で衝撃的な登場をはたしたハンニバル・レクター。暗黒で変質者全開なのに一躍ダークヒーローに踊り出たキャラクター。レクター演じるアンソニー・ホプキンスの怪演の素晴らしさと対するFBI捜査官クラリスを演じたジョディ・フォスターの配役の秀逸さゆえだったとも言える気がします。なので『レッド・ドラゴン』は置いといて『ハンニバル』は私的には今ひとつ・・・ふたつ・・・みっつかしら。なによりエンディングを原作と変えすぎだったと思います。あの衝撃は原作のエンディングを活かさないとダメだー! そして今回の『ハンニバル・ライジング』はレクター博士の過去に遡ることとなりました。彼の異常性はもともと生まれもったものであったにしても、こういう体験が発露させたのであろうなぁ。うーん。環境は大きいのね。日本がキィプレイスとなっていますが、これはどんなものだろうか。日本はまだまだ大きく誤解されたままなとこいっぱいあるのだなぁ。日本ってそうじゃないよって思うところ多々。映画を観たい気持ちが削がれてしまったわ。レンタルを待つかー。

「あなたの魂のためにも祈っているわ、ハンニバル。心配なのよ、あなたが暗闇に引きずり込まれようとしているんじゃないかと」
「引きずり込まれはしませんよ。以前、口をきけなかったときも、ぼくは沈黙に引きずり込まれたわけじゃなかった。沈黙がぼくを虜にしたんです

『ハンニバル・ライジング』 2007.4.1. トマス・ハリス 新潮社文庫



2007年05月03日(木) 『千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮』 松岡圭祐

 ジャパニーズスーパーウーマン岬美由紀が今回は日本の治外法権中国大使館で大暴れ! 友達を助けるために孤軍奮闘する美由紀。ああっ、もうたまらなくカッコいい女ですー。惚れ惚れしちゃう。友人・由愛香の美由紀への嫉妬や葛藤。うーん、女ってめんどくさい。私は基本的にデキル女が好きなので自分にないモノを持つ人に惹かれ、尊敬する傾向があるので由愛香ゴコロってわかんないんだけどね。自分の分を知っていればあんなジェラシーストームに巻き込まれることないのになぁ。その点、美由紀は自分の分をキッチリと知っていて、その才能を惜しむことなく使う。そういうところが魅力なんだー。ああ、続けて4冊出て、もう5冊めも出るのかな。出たのかな。早く読みたい。美由紀に会いたい!

「・・・・・・心配しないで」美由紀は力なくつぶやいた。「生きて会えたんだから・・・・・・。希望はあるわ・・・・・・

『千里眼 ミッドタウンタワーの迷宮』 2007.3.25. 松岡圭祐 角川文庫



2007年04月29日(日) 『まんまこと』 畠中恵

 麻之助は町名主高橋家の跡取息子。あることをきっかけに太平楽なぼんになってしまった。父親の名代に小さな事件の裁きを繰り返すうちに麻之助は成長していく・・・

 うー、相変わらずいいですねー。畠中さんの時代人情もの。ほのぼのと優しい目線で生きる人たちを見ている。麻之助と幼馴染たちの友情もいい。ああ、沁みるなぁ。言葉は要らない。ただ読んで欲しい。そんな一冊。

 突っ立ったまま、それを無言で見送る。抱えていた淡すぎる思いは、己への嫌悪とあいまって、しゃぼんのように弾け、稲荷神社の空に消えることになった。ひたすらに惨めであった。

『まんまこと』 2007.4.10. 畠中恵 文藝春秋



2007年04月27日(金) 『朝日のようにさわやかに』 恩田陸

 大好きな恩田陸さんの短篇集です。これがもどれを読んでも素晴らしい! 収録された本を読んだ短編もあれば、はじめて読むものもあり、興味深い事この上なし。シリーズものもあれば、これから出る長編の予告作品的なものもある。自由奔放に大きく楽しめる本でございます。スキだなぁ。この短編の中から私的ナンバー1を選ぶとすれば、『冷凍みかん』ですね。星新一さんのようなウマサがあふれんばかり! 想像力を刺激されました。どちらかと言うより短編より長編作家さんでありますが、こんな楽しみも捨てがたいのでたまにでいいから短編を書いてほしいものなのでありました。

 私は、自分が背負うものの大きさと、これから自分が歩む孤独な歳月を予感して目の前が暗くなった。

『朝日のようにさわやかに』 2007.3.30. 恩田陸 新潮社



2007年04月20日(金) 『ブラックストーン・クロニクル』上下 ジョン・ソール

 アメリカの小さな町ブラック・ストーンで廃墟となっている精神療養所を壊し始めた時、‘それ’は起きた。プレゼントをもらった家庭で事件が起こり、人が死ぬ。廃墟の中で黒い人影が次のプレゼントを選んでいる・・・。オリヴァー・メトカフは、精神療養所の院長だった父親のことを思い出すのだが・・・!?

 いやはや素晴らしい! ジョン・ソールの力が溢れ出ている感じです。ジョン・ソールのゴシック・ホラーが好きで今までの作品をほぼ読んでいます。ものすごい筆力でぐいぐいと読ませる力にいつも圧倒されていましたが、それでも作品にその全てを出し切れていなかったのではないかと思います。この『ブラックストーン・クロニクル』は6つのプレゼントを巡る物語で、六ヶ月に渡って6冊刊行されたそうです。それが予想以上の大人気となったそうです。それはそうだろうなぁ。これだけ面白ければねぇ。これって映像化すべきだと思うのです。『ツイン・ピークス』並みに当たると思うんだけどな〜。なんにしても好きな作家さんの最高傑作を読めるということは激しい幸福感を与えてもらえますね。シアワセな二日間となりました。

悪魔よ。なにか悪魔的なことが、あそこで起こっている


『ブラックストーン・クロニクル』上下 2006.7.1. ジョン・ソール 求龍堂



2007年04月18日(水) 『回転木馬』 柴田よしき

 失踪した夫の探偵事務所を守りながら、夫を探し続けた唯がついについに真実へたどり着きました!・・・ジーン(感涙) この失踪劇の背景やからくりや真実はケッコウ早いうちに読みきれます。それでも丁寧に丁寧に織り成すように描かれる唯の追跡や、その時々に出会う事件や人間たちの物語は心に深く訴えかけます。うまいなぁ、柴田さん。この物語は『観覧車』の続編ですが、これだけでもキチンと楽しめます。『観覧車』を読んでから唯のその後が心のどこかで気にかかっていました。フィクションなのにまるで自分の知人であるかのように。だから唯のその後をこうして読むことが出来てものすごく嬉しかったです。そう昔に馴染んだ親しい人に出会えたようで。好きな作家さんの描く物語というのは心にフィットするものなのですね。

憎しみの連鎖を断ち切るために、人は、法律を作ったんじゃないでしょうか。法律がなければ、人間はいずれ、憎み合い、殺し合う。そんな人間の弱さをどこまで、法律で克服できるのか、わたしにはわからない。わからないけれど、あなたがもしその手で憎悪の輪をまた繋げてしまえば、たくさんの悲しい輪が、あちらにもこちらにもできてしまうとは思いませんか。そして・・・・・・理由はどうあれ、あなたと同じ苦しみを味わう人が、たくさん、たくさん生まれます

『回転木馬』 2007.3.20. 柴田よしき 詳伝社



2007年04月16日(月) 『ハルさん』 藤野恵美

 ハルさんは実際より若く見られがちだが47歳。今日は愛娘ふうちゃんの結婚式である。最愛の妻・瑠璃子さんに先立たれ、男手ひとつでふうちゃんを育ててきたハルさんは、ふうちゃんと関わった様々な出来事を思い出す・・・

 えーん、しみじみとほのぼのと泣けました。クスン。愛する者が成長し、自分の元から巣立っていくってどんな気持ちがするのかしら。ハルさんとともにちょこっとだけ花嫁の親気分を味わったのことでありました(感動)。こういう何気ない謎解きの物語もトテモいいものです。オススメですv

(恐怖に踊らされちゃダメ。どうせ、誰もがいつかは死ぬの。だから、今ある人生を楽しんで。・・・・・・私の分まで)

『ハルさん』 2007.2.28. 藤野恵美 東京創元社



2007年04月15日(日) 『ママの友達』 新津きよみ

 45歳になる主婦・典子のもとに中学時代にやっていた交換日記が届いた。交換日記のメンバーとは今では疎遠。娘の不登校の兆しに悩む典子は、娘と同じ年だった中学時代に思いを馳せる。そして送り主のハセジュンが殺された! 残された典子と他の二人は現状の問題に悩みながら、かつて友だった少女達の互いのことを思い出し・・・

 うー、身につまされるほど面白かったですね。昔の友達との交流が途絶えていて復活するきっかっけが謎に満ちていて、しかも送り主が殺されてしまう。それぞれの人生がそれぞれの問題を抱えるもので考えさせられてしまいました。登場人物の一人の亭主の描写が吐き気をもよおすくらいに嫌な人間でいたたまれなかった・・・。そんな男と一緒にいる必要は絶対にないもの。人を見下して馬鹿にするような人間とはいっしょに暮らせない。人の気持ちをなんだと思ってるんだ!?と本気で怒ってしまいましたっ。プン。あれやこれや考えさせられる秀作にございました。オススメです。

 いまのわたしに、友達と呼べる人がいるだろうか?

『ママの友達』 2007.3.25. 新津きよみ 光文社



2007年04月07日(土) 『コーリング 闇からの声』 柳原慧

 純也は、施設で一緒だった零と「特殊清掃屋」をやっている。死者が出た部屋の清掃を引き受けるのだ。浴槽で死んだ女はドロドロに溶けていた。そこの清掃を終えた純也は見てしまった。裸で膝を抱えている死んだはずの女を・・・。その女の自殺を調べるうちに、純也は彼女の抱えていた闇に引き込まれてしまうのだった・・・。

 うーむ、これはまたすごく面白かったです。純也と零のキャラクターもいいですし、死んだ女の抱えていたいた闇が明らかにされていく過程が二転三転としていてうまい展開なのですよー! インターネットや美容整形など現代人が嵌りがちな日常の闇に気をつけて・・・。

ううん。人間のちょっとした思い遣りや優しさが世の中を変えていくって、あたしは信じてる。そんなことで人は救われたり、それが得られない場合には死ぬほど落ち込んだりするんだよ

『コーリング 闇からの声』 2007.3.23. 柳原慧 宝島社



酔子へろり |酔陽亭酔客BAR
enpitu