酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年12月20日(水) |
『中庭の出来事』 恩田陸 |
年末陸ちゃんからのクリスマス・プレゼントはまたしても舞台な物語でありました。恩田陸と言う人の作品って脚本みたいなものなので、違和感はありません。瀟洒なホテルの中庭のカフェで人が死ぬ。その人は人気脚本家。周りには芝居のヒロイン候補の美しき女たち・・・と来たもんだ(笑)。これこのまま舞台に乗っけられるんじゃないかしらん。難しい作品だろうケレドモ、きっと面白いと思います。もしかしたら文章で読むよりも面白いのではないかと思うくらい。何故ならば文章で読むには謎の入り子構造がこんがらがっちゃったから。だから舞台でキャラが立つ方がスンナリ絵で理解できそうに思えたのです。たぶん恩田陸の次なるチャレンジは舞台なんだろうなぁ。しかし、フジツボの都市伝説は怖すぎるよう(涙)。
見ることと見られることは裏返しであり、あなたもあたしも、世界という劇場の中では、常にほんの少しのところで逆転する立場にあるのであります。
『中庭の出来事』 2006.11.30. 恩田陸 新潮社
2006年12月19日(火) |
『モノレールねこ』 加納朋子 |
「シンデレラの城」 スズさんはミノさんと偽装結婚をした。二人とも気侭な独身生活を楽しんでいるのに適齢期を過ぎて尚ひとりものであることに周囲が家族がうるさいから苦肉の策だった。スズさんにはスズさんの、ミノさんにはミノさんの結婚しない本当の理由があった。スズさんは結婚したことで確実に幸せになっていたのだが・・・
加納朋子さんの『モノレールねこ』は本当に素晴らしい短篇集です。慈しむ気持ちで一編一編を大切に丁寧に読ませていただきました。クリスマスの贈物に年末年始の忙しかった自分へのご褒美にいいのではないかしら。ただ甘く優しいだけの物語ではありません。どこかに厳しさや痛みを伴った棘があります。物語なのだから甘くて夢のようなものもいいし、この『モノレールねこ』のように甘さと厳しさが同居したものもいいと思います。どの物語も気に入りましたが、一番心にほろ苦く染み入ったのが「シンデレラの城」でした。ネタバレしないように当り障りなくあらすじを書いてみましたが、加納マジックの巧妙さが際立っている作品です。人はひとりで生きていけるケレドモ、誰かと一緒に生きていきたい生き物なのだと思うのですね・・・しみじみと切々と。もうひとつザリガニを主ザリガニ公に据えた「バルタン最期の日」も泣けます。それじゃ、アバヨ。サヨナラだ。(byバルタン) オススメです。
たかだか婚姻届一枚で誰かを手に入れられると考えている人間が、こんなにも多いという現実が、私には滑稽で、そして不思議でならない。
『モノレールねこ』 2006.11.30. 加納朋子 文藝春秋
2006年12月17日(日) |
DVD『パラサイト』 |
フットボールだけが盛んなオハイオの田舎町のハイスクールに転校生メアリーベスがやって来た。異邦人のように孤独な転校生メアリーベスは孤高のストークリーに近づく。ストークリーは単独行動でSFを好んで読んでいる少女。そのストークリーになにかと絡むデライラはチアリーダーを務める美少女。フットボールの主将スタンはデライラの恋人で進路について悩んでいる。デライラに想いを寄せる優等生で内気なケイシー。優秀なのに不良気取りのシークは自家製のヤクを売りさばいている。そんな彼らの前で教師達の態度が豹変する。ケイシーが発見した謎の生命体が人間の身体に入り込み、人間をホストとして動き始めたのだ。親玉を殺してしまえば元通りになると考えたケイシーたちだったが、自分達の中にも寄生された者がいるのではないかと互いに疑心暗鬼になって・・・!?
これまた学園青春ホラーの王道ですねー。地球を侵略しようとする謎の生命体=エイリアンの姿カタチって大体似たような感じですが、もしかして本当にそういう生命体が発見されたことってあるのかもしれない・・・なーんて考えてしまうからホラーなのですよね(笑)。なかなかニクイ展開で、「え、そうだったの!?(驚愕)」ってサプライズがこれでもかと盛り込まれているあたり、ザッツエンターテインメント。主人公の内気な優等生はロードオブザリングのイライジャ・ウッド。確かに彼の場合はハイスクールで内気な優等生って感じがします。孤高の少女ストークリー役の女優さんは大人になってはJUONで気の毒な被害者役になってました。アメフトのコーチはターミネーターの追いかける警官役の人、中年女教師はツイン・ピークスのお色気オバサンだったりで見たことのある俳優さんがいっぱい登場。見どころとしては残された高校生たちがエイリアンに立ち向かっていく姿でしょうか。普通、こういう危険な場面では自分のことしか考えられなくて逃げてしまう輩が出てくるものですケレドモ(そうしてそういう馬鹿ほど惨めに殺されてしまう)、みんながケッコーがんばっちゃうから応援せずにはいられない。あんな生理的におぞましい姿のエイリアンと立ち向かえる勇気ってスゴイ。醜悪なものを直視するって勇気がいることだと思うのですよねぇ。私にとってホラーの根源はそこにもあるかもしれないと思ったことでありました。
2006年12月16日(土) |
DVD『ルール(原題 URBAN LEGEND)』シリーズ |
車に乗る時に後部座席に注意を払わなければならない。斧を持った殺人鬼が潜んでいるかもしれないから・・・都市伝説(URBANLEGEND)のままに雨の夜にミッシェルは殺された。彼女が在籍していた大学では民俗学のウェクスラー教授が都市伝説のルールについて講義をしていた。都市伝説はルールを破る者への戒めである、と。そしてこの大学にもまた伝説が残っている。昔、ある教授が学生を惨殺したのを大学側が隠蔽し、その日に記念パーティを行っているというもの。ナタリーは纏わりついてくるような都市伝説に怯えていた。何故ならば殺されたミッシェルは友人で二人で悪戯に都市伝説遊びをして人を死なせた過去を隠していたから。ナタリーの友人のブレンダやデイモンやポールに元気付けられるものの、ナタリーの周囲では都市伝説を模倣した殺人が次々と発生する。田舎に逃げ帰ろうとするナタリーだったがブレンダの誘いで記念パーティに出席して・・・!?
ホラーが好きvなのでありますが、ホラーに当たりは少ないと思っています。なので気軽に観た作品が意外にイケテルとことのほか嬉しいですね。この『ルール』も期待しなかったぶに面白さに大満足なのでありました(ニッコリ)。こういう青春学園ティーンズホラーって俳優さんたちが若くて瑞々しくてたまりません。私が気に入ったのはブレンダ役の人。この人はすっごくよかったなぁ。残念ながら駄作となってしまった(私的には)『ルール2』にもエンディングに素敵なゲスト出演してるのもベリーグー。内容はツマンナイけどお茶目な演出に嬉しかったです。『ルール3』では魔法なんか出てきてしまって大元の都市伝説とはかけ離れていましたがヒロインが最高級にキュートでめろめろになりました。ファニーフェイス系のかわいこちゃんってのもいいですのう。ブレンダとは対照的な魅力にあふれていました。ついでに『ルール4』になると駄作も駄作と言うか「なんやねん」な展開。ただここでもキュートな女の子が登場して(主人公の妹役の子)目の保養にはなります。うふふ。どかどかどかっと4シリーズを通して観ましたが、一作目の出来の良さは残りの3作品には皆無。シリーズものの悲しい宿命ですねぇ。なんにしても『ルール』はかなり面白かったです。アメリカの都市伝説がアレンジされて日本にも入ってきているなぁと思います。恐怖やタブーの根元なんて人間ならば同じようなことだと言うことなのでしょう。民俗学の教授ウェクスラーの俳優さんがエルム街のフレディ役の人ってことも御洒落なことでありました。
2006年12月15日(金) |
DVD『ハイ・クライムズ』 |
クレアは公私共に絶好調。美人弁護士として活躍し、夫トムとは激しく愛し合っていた。ある日、家に泥棒が侵入し、警察を呼ぶクレア。その時に採取された指紋から夫トムが逮捕されてしまった。なんとトムは別人になりすまし、12年間も逃亡を続けていた。かつて海兵隊の特殊工作員で、潜入先のエル・サルバドルで一般市民9人を殺害したと言うのだ。無実を訴えるトムを信じて軍事法廷に挑む決意をするクレア。閉ざされた世界の特殊な法でクレアはトムを救うことができるのか!?
陰謀を暴く!モノは観ていてスリリングでとても興奮します。愛する人のために必死で立ち向かう美女の姿はいいものです(ウットリ)。気になったのは編集の雑さでした。ブツブツ途切れた感じがスゴクいや。そのせいで場面転換が唐突で映像の流れに滑らかさがないのですもの。もったいないなぁ。もっと丁寧に繋げてくれればいいものを。 クレアが辿りついた真実(落ち)は、まぁ想像のつくところ。でもラストにやっぱり逞しく美しい女の姿を見せるあたりザッツアメリカーン! 女はタフでなければ生きていけないっ。それにしてもどうせならマスコミ大暴露までやればいいのに。・・・それでは本当にクレアが消されてしまうのか(怖)。力のある巨大な組織に立ち向かう限界だったかもしれない。それにしても名優モーガン・フリーマンをもっともっと活躍させて映画全体に重みを増して欲しかったものなのでありました。面白いのに妙に軽軽しかったのが難点なり。
2006年12月14日(木) |
『ありふれた魔法』 盛田隆二 |
秋野智之は44歳。城南銀行五反田支店次長。2歳年上の女房は元同僚、3人の子供あり。過酷な銀行業務をこなし、家庭を家族を大事に生きる男。なのに恋をしてしまった。部下の森村茜に。若く美しく有能な茜との逢瀬は潤いを与え、気がつけば茜のことばかり考えていた。でもその恋が・・・
恋なんてもうしない。そんなことを思っていたはずなのに狂おしく焦がれるほどの恋に落ちてしまった・・・。そんな秋野さんはなかなかナイスガイでありまして物語的には美しく綺麗に終りました。だけど、だけど、残された方の気持ちはどうなるの。それもまたエンディングではそれなりの道をつけてあげていたケレドモ、なんと言うかそんなにまで保身に走るのであれば手を出すなよと私は言いたい(憤慨)。それはまぁ大変なことになって一番大切なものを再確認できたのだと言われればそれまででありますが。面白かったし、一気に読ませる魅力満載でした。なのに胸に黒いズブズブしたしこりが残ってしまいました。人間の気持ちって憎らしいいものですね。杓子定規にここからここまでいいとか悪いなんて線引きできないのだから。うーん、複雑。そしてオススメ。
『ありふれた魔法』 2006.9.25. 盛田隆二 光文社
2006年12月13日(水) |
DVD『THE JUON ー呪怨ー』 |
ジャパニーズ・ホラークィーン伽椰子が全米デビューを果しました。今まで観たホラーでイチニを争う恐ろしさだと思っている『呪怨』(ビデオ版)が映画化され、続編も製作され、あれよあれよと言う間にアメリカでリメイク。感染していく伽椰子の呪怨。でもアメリカナイズされた映画では持ち味の不明確さがずいぶんと明確化されてしまい、逆に怖さが曖昧になってしまっていました。残念だと思うものの伽椰子の怖さや恐ろしさは日本人特有の土着の陰湿で粘着質なものから生まれているのでアメリカンには解読不能でありましょう。『THE JUON』では交換留学生のカレンが単位のために介護ボランティアで呪われた佐伯家(と言っても住んでいるのは外国人一家)に訪れて、理不尽な伽椰子の闇に触れ巻き込まれていきます。全米公開リメイクにあたっての苦肉の策と言った感じ。伽椰子は外国人講師のピーターに執着し、ストーキングの末に嫉妬深い夫に殺されたカタチになっています。『呪怨』の特徴的名不気味さのひとつに異常な伽椰子のストーカー日記があって、それまた苦肉の策の変更と言ったところ。もともとは伽椰子の独身時代の恋が妄想とストーキングの果てに子供に恋した男の名前の一文字をつけ、嫉妬深い夫に自分の子供ではないと誤解されたものですケレドモ。あの伽椰子の理不尽な不気味さがスタイリッシュに簡略化。『THE JUON』はそんな映画でありました。じゅうぶん怖いけどー。
2006年12月12日(火) |
ドラマ『ラブコンプレックス』 |
2000年に放送された時、「訳がわからない」と言う声が殺到したそうです。でもこれは今見ても(もしかしたら今だからこそかもしれませんが)かなり面白かったです。なんと言っても主人公の竜崎ゴウ役の唐沢寿明さんの怪演の素晴らしさ! このゴウ役は6年前も今も唐沢さんにしか演じきれない役ですね。だからきっと唐沢さんファンは大喜びな作品だったことでありましょう。下半身にだらしないスケベシーンは笑えて困りました。ふふふ。うまいなぁ。君塚良一さんの脚本は唐沢さんの変な魅力を存分に引き出していました。唐沢さんのために描いたのかもっ!?てくらいでした。 ワンダーエレクトニクス(パソコン周辺機器製造会社)で起こった横領事件を軸に犯人捜しに秘書室へふたりの男が配属される。その男が竜崎ゴウと真行寺アユム。秘書室には七人の美女。女王様で秘書室を支配するファザコンのシズク。男に裏切られ、男を悪魔と謳う宗教にのめりこんでいるサダ。美しいのに太りすぎていると思い込み過剰なダイエットに嵌るキイコ。常務の愛人として20年過ごし捨てられたお局様のアミ。レズビアンで女格闘家のリリ。優柔不断でリリの誘惑に引き込まれているミヤビ。一番若くていつもニコニコ可愛いミンは裏で煙草を吸い毒づく娘。裏の顔を持ちながら笑顔と美貌で隠している7人をゴウが追い詰め壊していく。ゴウの部下でありながらも、ゴウへの不信感を持つアユムは女たちの力になりたいと必死になって駆けずり回る。何故ならばアユムにも裏の顔、マザーコンプレックスに悩まされていたからだった・・・。 ざっと粗筋を要約するとこんな感じです。このそれぞれの裏の顔が面白くて、それによって壊れていく様も興味深いものがありました。ただ残念なことは時間的制約のために7人全てのコンプレックスを丁寧に描ききれなかったことにありました。リリやミンやミヤビなんて脇キャラではあるケレドモ、抱えているものは深いし誰の心にもあるかもしれないものですもの。それがトテモ残念。今をときめく伊藤美咲さんがリリ役であったことも新鮮でした。ワンクールではなくってツークールくらいで描ききって欲しかったなぁ。ああ、竜崎ゴウよもう一度。もちろん唐沢さんでv
2006年12月11日(月) |
『虹色天気雨』 大島真寿美 |
仕事明けでへろへろの市子は朝っぱらから奈津の電話攻撃を受け、朦朧としつつ安請け合いをしたらしい。奈津はいきなり200万持って失踪した夫を探し出しに行くから娘の美月を預かってくれと言う。小学生ながらしっかりしてきた美月と二人で奈津を待つ市子。奈津は夫・憲吾を探し出す事ができるのだろうか。
これは素敵な物語です。読んでいると微笑んでしまうような心に優しいエピソードの数々。奈津の娘の美月を仲間達みんなで慈しむ姿には共感できます。いろんな瞬間に友人になっていった仲間達のそれぞれの人生と心の交流。人と人の繋がりってこういうカタチが望ましい。この輪の中に入っていきたいような、そんなナイスな気持ちになること間違いなしです。オススメですv
明るくもあり、暗くもある新年。 年が替わったからといって、何がめでたいわけでもないってことは誰しもが思い、だけど、それでも、おめでとうと言葉を交わし合うのは、励まし合うのにちょっと似ているのかもしれない。くじけないで歩き続けているあなたへ。くじけないで歩き続けている私へ。 たった一人で歩いているこの道を、たった一人で歩いているべつの人が、すれ違いざま声をかけ合うみたいに。
『虹色天気雨』 2006.11.110. 大島真寿美 小学館
2006年12月10日(日) |
DVD『THE WATCHER』 |
元FBI捜査官のキャンベルは、FBIを辞めてロサンゼルスからシカゴへ逃げてきた。ロスで追い続けていたシリアル・キラーのグリフィンに自分の大事な女を殺されてしまったからだ。シカゴでカウンセラーに通い、日々に埋没するキャンベル。そんなキャンベルを追いかけてグリフィンがシカゴで殺しを繰り返し始めた。しかもターゲットの写真をキャンベルに送りつけてくるのだ。もう一度グリフィンに立ち向かうキャンベルに・・・!?
ぜーんぜん物足りないっ(大不満)! なんじゃこりゃーっ(あら、お下品だこと)!! うーん、サイコキラーもの大好き人間としては(それはそれでかなり問題が・・・)キアヌ・リーブス演じるシリアルキラーを表面的に美しく描きすぎていて全くつまらなかったです。ぶぅぶくぶー。だいたい猟奇的連続殺人犯なんてものは壊れている訳で、あんな綺麗に女に近寄って囁いて殺っちゃうナンテただのスケコマシじゃん。あれじゃーあきまへん。制作サイドがキアヌ様に遠慮されたのかもしれませぬが、それって完璧逆効果。もっともっとトンデモナイ変な部分を映し出してこそ、うおーキアヌやりおったなーってことになったでしょうに。ああ、残念。キアヌが執着する男役をジェームス・スペイダーが演じていて、久しぶりでオーラが消えていてこれまた吃驚にガッカリでありました。年を重ねて魅力を増す俳優さんが多いと言うのにジェームスさんたらどうしちゃったの? 役作り? うーん・・・なんか違うのですよねぇ。まぁ、最後まで見せてくれるくらいの力はありましたが、物足りなさは否めないのでありました。はい。
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