酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年12月09日(土) |
『還らざる道』 内田康夫 |
取材先で知り合った美女から聞いた話に興味を覚えた浅見光彦は、彼女の祖父の故郷を求めて旅をする。三州、吉備、木曾・・・二度と還ることはないと思っていた男が、その場所で殺されたのは何故だったのか。
うーん、光彦坊ちゃま相変わらずモテモテです。旅先で出会った美女が祖父の死を調べていて、好奇心丸出しで嬉々として調べて彼女に惚れられる、と。もうここまで来ちゃうとモテろモテろ光彦よっ!って気分で笑っています。今回の事件の背景にあった大きな陰謀と闇の歴史には唸らされました。ただ・・・光彦坊ちゃまは時としてトンデモナイ方法で事件の償いをさせることがあります。今回もまたまたそれをやっちゃって、いいとか悪いとか言うより、胸が痛んでいないかしらと心配になってしまいます。多分、内容は、ほぼリアルで、そのトンデモナイ方法だけがフィクションってことではないのかと考えた次第であります。正義とは何なのかと突きつけられてしまいました。決して光彦坊ちゃまの下したことが正義とは思わないし、内田康夫さんだって其れを正義だとか真実だとか思われていない筈。そういう結末を光彦坊ちゃまにつけさせた、と言うだけのことだと思います。はい。
「そうだとしても、正義を貫くためには、死ぬ覚悟はあるでしょう?」 「それも自信はない。それ以前に、はたして自分が正義かどうかが問題でしょう。正義というやつは、相対的なものですからね。自分にとっては善であり正義であっても、対立する相手にとっては悪であり不義であるかもしれないでしょう。中東のテロや戦争は、たがいに正義を標榜している。かつての日本も、正義だと信じて戦って敗れて、とたんに、あの戦争は不義であったということになってしまったのですから」
『還らざる道』 2006.11.10. 内田康夫 祥伝社
2006年12月08日(金) |
DVD『iDLE HANDS』 |
B級スプラッタコメディホラーでありました(笑)。このタイトルのアイドルは《怠情な、のらくらしている》と言う形容詞。映画の主人公アントンはマリファナでラリパッパな毎日を過ごしていて、その手に悪霊が憑りついてばかばか人を殺しまくる、なーんて呆れたパロディな内容なのです。ヒロインがダークエンジェルのマックス役のアノコでとってもキュートv あのスタイルの良さは涎もんです。ハロウイン仮装パーティで天使の扮装をしているのがたまらなく可愛かったです。天使なのに小悪魔。ただ・・・笑えるし、この手のぶにはそれで流してしまえばいいのかもしれませんが、ラストが全く辻褄合わず。アントンの右手は両親、親友、警官とばこばこ殺しまくってて、それはスルーされてハッピーエンドなのかしら。そこがB級ならではのアバウトさと割り切るべきなのでしょうかねぇ。
野々村涼子は18歳で事故死。無免許の同級生のバイクに撥ねられたのだ。姉を大好きな妹の結花は姉の事故死を不審に思い、姉の通っていた高校に入学。探り続けるうちに美しく優しく清楚だった姉の知らなかった姿が見えはじめてきたのだが・・・!?
人間は誰にでも人に言えない秘密がある。それは言えないから秘密。それを暴くということは残酷で悪趣味なことだなぁと思うのでありました。ただ、この物語の死んでしまったヒロイン涼子ちゃんは謳い文句にあるような“おぞましい”秘密ではなく、その秘密こそが涼子ちゃんの心の美しさを証明したと感じました。涼子ちゃんの悲惨な体験に関しては確かに“おぞましい”ですケレドモ、“おぞましい”のはそれを引き起こした人間の方。若さゆえかもしれない。でもあれはちょっと・・・。
『月光』 2006.11.30. 誉田哲也 徳間書店
珠世はギリギリ20代ヒッキー処女。母親との確執に悩み、鬱々と毎日を生きていた時に清らかな美少女と出会った。少女の名前はありさ。ありさに導かれ、サポーターとなり、同志の友達も増えた。なのにある日ありさが殺された。珠世は自分を助けてくれた珠世を殺した犯人をつけとめようと・・・!?
渡辺容子さんの小説を好きでした。だから今回の新刊は本当に嬉しかったし、違和感を感じながらも読み終わりました。ご自身がサッカーファンでいらっしゃることは存じておりましたし、作品に投影するもよしだと思います。でも・・・この詰め込みすぎの何でもありな切り口っていかがなものか、と落ち込んでしまいました。あまりにも期待が大きくて自分的に外れてしまうとつらいものだなぁとしみじみしてしまいました。もちろん物語としてはそれなりに読ませてくださいましたし、これで渡辺さんをはじめて読んで好きになる方もおいでだと思います。それくらいのレベルではあると思います。でもでもファンと言うものはそれはそれはわがままで贅沢だから口が奢ってしまうと前以上を求めてしまうものなのですね。ああ、次は何年後にどうなっているのかしら。それでも読まずにはいられない方ではあるのですケレドモねぇ・・・。
『魔性』 2006.11.20. 渡辺容子 双葉社
2006年12月05日(火) |
『ソフトタッチ・オペレーション 神麻嗣子の超能力事件簿』 西澤保彦 |
西澤保彦さんのチョーモンインシリーズは個人的にすっごく好きスキな時とフーンと流してしまう時があります。その心は私は西澤保彦さんの描く暗黒モノが好きと言うことなのであります。だからキャピキャピかわいーものよりもドロドロどよどよしてしまうような路線が好き。なんと言っても初西澤保彦が『依存』ですからねっ。だからうぴゃうぴゃかわいい系を読んだ時には驚いたことでした(笑)。レズビアンものや倒錯ものはドロドロどよどよ系の流れを汲むものだと感じているのでことのほかスキ。うふふ。・・・話を戻しまして、今回の『ソフトタッチ・オペレーション』は様々なタイプの事件が盛り込まれていたので読みでがおおいにありました。個人的な見解(大袈裟な)から言いますと「闇からの声」が素晴らしかったですねー。あんなふうに落とすなんて思いもしなくて。「うまいっ!」と声が出ましたわんにゃん。母親と子供の確執、葛藤は西澤作品の隠れテーマ(隠れていないか)ですわなぁ。嗣子ちゃんの手料理は相変わらずトッテモ美味しそうだし、聡子さんも能解さんもそりゃ太るってものです。アハハ。ダーティな西澤世界に浸りたくなってしまったので『夢幻巡礼』を読み返そうかしらん。ドロドロのどよどよだものv
『ソフトタッチ・オペレーション 神麻嗣子の超能力事件簿』 2006.11.7. 西澤保彦 講談社ノベルス
2006年12月04日(月) |
DVD『マインドハンター』 |
FBIの心理分析官を目指すFBI訓練生たちが最終試験に孤島へ飛ばされる。その島で連続殺人犯のプロファイリングをして犯人の正体にたどり着けば憧れのエリートになれる! 7人の卵たちと特別参加してきた刑事だったが、いきなり罠に陥り一人が死んだ・・・。そしてまた一人、また一人・・・次々と仕掛けられた罠に嵌り死んでいく。いったい犯人は誰なのか。この孤島にいるのは私たちだけなのに・・・!?
うふふ。面白かったです(満足)。優秀な人材が孤島で疑心暗鬼。もう誰も信じられない。となるとサバイバルゲームに発展するのですね。どんなにずば抜けた頭脳でも美貌でもプライドでも恐怖と疑心暗鬼の前で己の全てをさらけ出してしまうのですよ。これはもう心理ホラーとも言えますねー(にっこにこ)。私の好きな俳優さんが出演していて、いきなり殺されてしまって吃驚して笑ってしまいました。主役クラスの方なので、これは一筋縄ではいかないぞ、と。気分を引き締め直して観たことでありました。末はエリート心理分析官たちの弱点や性格を知りぬいた罠(トラップ)の数々は興味深いものでありました。ただ単に殺せばいいってもんじゃないこだわりがあって、殺人犯の異常な執念と頭脳の高さがクッキリ。そう言う点で言えば、犯人が一番優秀だし、誰よりも心理分析官にふさわしいこともまたホラーなのでありますよ。最期に残るのは誰か?も意外性があり、なかなかなのでした。自分の好みを全面に押し出すのであれば・・・もっと違うエンディングが良かったのですケレドモね。うふ。うふふふふ。
2006年12月03日(日) |
『わたしを離さないで』 カズオ・イシグロ |
なんだか清冽で壮絶な物語を読むことが出来ました。なんと言うか・・・最初は「なんなんだろう?」と言う疑問からはじまって、ヒロインの回想に引き込まれて迷宮に入り込んでしまったようでした。その迷宮の姿が見えたときに愕然としてしまって。なので何も知識なく読んで驚いていただくことが王道でしょう。動きが大きくないためにイライラしそうなものなのに、しなかったですね。鬼気迫る凄みがそこにあったからでしょうねぇ。読まずに通り過ぎて人生を終えてしまいかねなかった物語を読めた幸運に感謝です。これは読んで欲しい物語なのであります。
『わたしを離さないで』 2006.4.20. カズオ・イシグロ 早川書房
2006年12月02日(土) |
DVD『ケイゾク』『ケイゾク/特別篇』『ケイゾク/映画』 |
お宮(迷宮入り)な事件を鋭意継続捜査する警視庁捜査一課弐係りに東大卒エリートキャリアの柴田純が配属され、ずば抜けた頭脳で「犯人わかっちゃったんですー」と次々と解明していく。そして妹を集団レイプの上、自殺させた男・朝倉を追い続ける執念の刑事・真山徹の事件が交錯し、ダークで不思議な世界が織り成されていく・・・
うーん、疲れました。テレビシリーズと特別篇と映画をブッ通しで観終わったので(馬鹿)。はぁ、頭の中がパンパンだわ。真山徹を演じる渡部篤郎さんがスゴク素敵で、これって三上博史さんもありだなぁ・・・と思ったところ、最初のキャスティングでは三上さんが真山で渡部さんが朝倉だったとか! うわー、残念無念。その逆のキャスティングでも良かったのに!!! 三上さんが朝倉ってのが極上だったろうなぁ。憑依する悪意・朝倉(と私は解釈しました)のイメージはテレビドラマでは珍しかったのではないでしょうか。テレビシリーズそして特別篇で言うと特別篇がことのほか良い出来で、そのぶに映画がわかりづらかったと言うか、ご都合主義すぎた感がありました。映画でこそもっともっとダークにドロドロにしてしまえばよかったのに。その上で朝倉VS真山(対決)に重きを置いて解明して欲しかったです。しかし、とにかく渡部さんはウマイ。カッコいい上にとぼけてるなんて素敵で素敵でうっとりしまくり。特別篇で出てきた生瀬さんももっと出してもらえてたら、いい味を出しただろうに、これまた残念っ! こんなケッコー血だらけドラマを放送していたTBSってすごいなぁ・・・。(余談でありますが犯行現場=死んだ被害者の上 に寝転がって同化しようとする女刑事って柴田純のが先じゃないかー。>雪平っ)
2006年11月30日(木) |
DVD『フォーガットン』 |
最愛の息子サムを飛行機事故で失ったテリーは立ち直れずにいた。大切なサムの遺品を取り出しては反芻する日々。夫も精神科医も優しく見守ってくれていたが、おかしなことが起こりはじめる。サムとの3人の家族写真が夫とふたりのツーショット写真になり、サムの遺品が消えてしまったのだ。周囲の仕業と怒るテリーに夫も精神科医もトンデモナイ言葉を告げる。「サムなんて息子は初めからいなかったんだよ」と・・・!?
これは面白かったですねー。全く予備知識なしにレンタルして観たのですが、ぐいぐい引き込まれていきました。レンタルしてきた映画でここまで熱中したのって久しぶりな気がします。なので大満足! ※ここからネタバレ(しないように書きたいとは思っていますが)の可能性がありますので、観ていない方は読まないで、マッサラの状態で観てくださいネ。そのほうがあまりの意外性に大いにうほーどひゃーと楽しめますから。 どうしてここまで面白かったのかと言うと意外性に他ならないだろうと思います。まさかこんな展開になってあんな落ちが待ち受けているなんて笑えてしまいますよ。映像もイキナリすごいことが起こって「はっ!?」と声が出てしまって、そうなるとあちらのもんですね。首根っこガッシリつかまれたようなものですから(笑)。テリーが愛しい息子の記憶を自分で生み出した妄想だと言われた時の恐怖は並大抵ではなかったと思います。記憶を否定されてしまうことの恐ろしさ。それが最愛の存在の想い出であるならば死ぬまで守り通したいでしょうからね・・・。母は強いなぁと感動しましたわ。 この落ちはありえそうなだけに笑いながらも怖さがあったのです。どうしてこんな現象が起きているのか、その原因のスケールの大きさについては人類が危惧している事とも言えるのかも知れないですねぇ。
2006年11月27日(月) |
『真夏の島に咲く花は』 垣根涼介 |
南の島の楽園、フィジー。ナンディ・タウンで生きる4人の若者、フィジアンのチョネ・フィジー育ちの日系のヨシ・インド系のサティー・日本人の茜、今はチョネと茜、ヨシとサティーが恋人同士。しかし、茜は知らなかったがチョネとサティーは過去に付き合っていたのだった。4人の関係にヒビが入った時、チョネは大きな暴動の目玉となってしまう・・・。4人にとって楽園はどこにあるのだろうか。
『ワイルドソウル』以来の私的垣根さんもの大ヒット作品となりました。南の楽園と言われるフィジーで織り成す4人の男女の愛と友情の物語。なんだかゆるゆる流れる時間の中で彼らの思いに同化しながら、寒い冬なのに読んでいる時は南の島バカンス気分でありました。楽園なんてこの世にない。何故ならば楽園だと思って辿りついたら、もうその地で現実が始まってしまうから。でもきっと誰の心の中にも楽園はきっとある・・・それでいいのじゃないかしら。主軸の4人がすごく素敵で、中でもヨシの揺らぎには激しく同調できてしまいました。純粋ジャパニーズな茜よりもフィジーで生まれ育ったヨシが好き。恋人にするならばチョネがいいのですケレドモね(笑)。どんなに好きあっていても結ばれないこともある、フィジーのロミオとジュリエットだわ。ふふふ。私としてはオススメですが、好き嫌いは分かれてしまうそうではあります。
そう。たしかにうまく言えない。うまく言えないが、気づかなければ、それでいいのだ。それまでと同じ日常を、何の疑問も感じずに送ることが出来る。でも、日常の中にさりげなく転がっている大事な何かに気づいてしまえば、もう、それまでと同じ生活は送れない。目をつぶって自分を誤魔化しつづけるか、生活を根本から変えていくしかない − 。
『真夏の島に咲く花は』 2006.10.10. 垣根涼介 講談社
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