酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年09月03日(日) 『クライム』 樋口明雄

 南アルプスを舞台にはみだし刑事の尾方、元台湾マフィアの功刀、台湾マフィアの殺し屋の揚烈輝と言う灰汁の強い三人の男が繰り広げる20億円争奪戦!

 ・・・くらいにしか粗筋を書けません。とほほ。分厚いし、激しい展開なのでありますが、ぶっちゃけ20億を雪山で探し歩き、殺しあって奪い合う、みたいな(苦笑)もんなんだもの。ふふふ。メインの三人の男たちがそれぞれに重い人生を背負っていて、そこは考えさせられました。台湾とか中国とか、日本との関係性をかなり書かれていてトテモ重苦しいです。でもそういうのを知っておかないといけない気がしますね・・・。日本って混沌とした人種の坩堝となっていってるんだろうなぁ。過去に起こったことで現代でも国と国がいがみ合うってキツイことだなぁ。どうすればいいんだろう。差別はどこまでいってもなくならないものなのかなぁ。ものすごい展開の最後にくるラスト・シーンは・・・泣かせるぜ。ちぇ、男と男ってやつは卑怯だよなぁ。いいなぁ。美しいなぁ。

「わけありか」
「莫迦野郎。わけのねえ人生なんぞあるのかよ」


『クライム』 2006.8.8. 樋口明雄 角川春樹事務所



2006年09月02日(土) 『クラック・ハウンド 聖人の条件』 榊一郎

 人里離れた山中で私立氷羅坂病院が炎上。燃え盛る炎の中でひとりの女の股からでろでろと生れ落ちる異形・・・。数年後、セイントと言う薬物が密やかに流通し、常用者による異常犯罪が多発する。犯人達はなにがあっても聖人のごとくアルカイックスマイルを浮かべて残虐な行為を繰り返す。異常な犯罪者を狩るべく公安委員会直属非公開特務機関から解き放たれたコードネーム【クラックハウンド】! 猟犬と呼ばれる橘北斗と柘植克美のふたりには特殊な力が秘められていた・・・

 いろんなところで「面白い」と目にする作家さんの榊一郎さんモノをハジメテ読んでみました。若い世代に受ける要素と言うのは劇画(マンガ)的であると言うことなのかもしれませんね。そのハード&エロ&ホラーなどがてんこ盛り盛りっ。読んでいる内容が映像として浮かぶあたり、うまいのだろうなぁと思います。しかしながら如何せん内容がどうにもこうにも・・・なんと言っていいのやら。面白いには違いないのだケレドモ・・・内容の割には軽いと言うか・・・うーん。こういうのを読むと読めるしツルっといけちゃうケレドモ、なんだか年取っちゃったなぁって思ってしまいます。西尾維新だって嵌りはしなかったしなぁ。老兵去るのみなのだろうか。ぐぬぅ。

『クラック・ハウンド 聖人の条件』 2005.4.30. 榊一郎 徳間書店



2006年09月01日(金) 『ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録』 九条菜月

 1900年、ドイツ帝国。急速に発展する人間社会に置いて人ならざるものたちは居場所を失いつつあった。ジョン・スミスは、人ならざるものたちの保護と生活の手助けのためにオルデンベルク探偵事務所を創立した。ジークベルト・スミスはジョンに命を救われ、探偵事務所で働いていた。長い調査を終えて事務所に戻ったジークは警備員のモーリッツに怪しまれるわ、現在の事務所所長アルの新しい秘書マーリエの厳しさに慄くわ、しまいには人狼の子どもエルの世話を押し付けられてしまう。エルを守りながら、アルの指令をこなすジークは事件の背後の組織がエルを狙っている事を知る。ジークはエルを守ることができるのか・・・!?

 第2回C★NOVELS大賞特別賞受賞作です。この物語はものすごく魅力的な人ならざるものたちが続々と登場してきて、裏切りやどんでん返しが嬉しい御機嫌な展開でわくわくさせていただきました。なんだか外国のドラマを見ているようでしたよ。おそらくシリーズとして続くと思うのですケレドモ(おおいなる願望)、今回ちらりとしか登場できていないキャラクターにスポットを当ててくれるのじゃないかしらん。それを楽しみに待ちたいですv 個人的にはかなり好みでトッテモおすすめ。

 失ったものは大きい。
 けれど、この腕の中の温もりのように、失わずに済んだものもある。
 だから、感謝したい。
 神でも、誰にでもなく。
 ただ、生きている、この瞬間こそを。


『ヴェアヴォルフ オルデンベルク探偵事務所録』 2006.7.25. 九条菜月 中央公論新社



2006年08月31日(木) 『煌夜祭』 多崎礼

 冬至の夜に漂泊の語り部達が集まって物語を語るー煌夜祭。冬至の日に魔物となった者が人間を喰らいたいと言う欲望から気を逸らすことが出来る唯一の方法が夜が明けるまで物語を聞かせると言うことだったのだ。ふたりの語り部がふたりだけで語り合いはじめる。哀しい恐ろしい闇の物語を・・・

 仮面をつけた語り部ふたりが、魔物の物語を語り合う。そのひとつひとつの物語が最後に織り成す真実とは・・・と言う洒落た手法で面白かったです。うん。これって確かにもの悲しいファンタジーですね。語り部の正体までも物語に織り込まれていて最後のほうは読んでいて気分がかなり緊迫しました。

『煌夜祭』 2006.7.25. 多崎礼 中央公論新社



2006年08月30日(水) 『見えない貌』 夏樹静子

 朔子は、嫁いだ愛娘ハコからの携帯へのメールを楽しみに生きていた。夫は病死し、ハコを育て上げた朔子にとってハコの存在は生きがいだった。そのハコからのメールが途絶え、ハコが消息不明となってしまったことから、朔子の人生の歯車が狂いはじめる。ハコは携帯電話で出会い系にはまり、メル友に会いに行って消えてしまったことが判明する。そして見つかったハコの変わり果てた姿に朔子は・・・

 久しぶりに読んだ夏樹静子さんの物語でありましたが、うーん、なんと申しましょうか、お上品で知性あふるる夏樹さんってのが災いとなり、物語がアッサリ流れてしまった感があります。こうもっとドロドロとギトギトとしてたら面白いだろうになぁとトッテモ残念。物語の前半は愛娘が出会い系にはまったことから命を落とした母の怒りと慟哭と復讐の物語で、後半はいきなり法廷ものに変化してしまうという、ちょっと唐突な感じがしました。主人公が物語の半ばで消えてしまうと言うのはどうなのかしら。むー。前半分の物語は非常に興味深いものでありました。正直言って出会い系などというものにはまる感覚が全く理解できなかったのですケレドモ、読んでいるうちに嵌った気持ちがわかった気がしました。寂しさの行方なのですよね・・・。人は寂しいと人恋しいから・・・誰かと何かで繋がりたいんだよね。なんだかしんみりしてしまいました。その娘を失った母親の慟哭と凶気もわからないではなかったです。物語の落ちいく先もナントなしに見えました。親が子を思えばこその物語で悲劇で・・・なんだか哀しかったなぁ。そして現実でも多くの悲劇が毎日毎日起こってて、物語も現実も悲劇でいっぱい。いつからこんなことになってしまったのかなぁ、ナンテなんとも虚しい想いに包まれたことでありました。

『見えない貌』 2006.7.25. 夏樹静子 光文社



2006年08月28日(月) 『グイン・サーガ109 豹頭王の挑戦』 栗本薫

 失われた記憶を取り戻すためにグインはリンダに会うべくパロに向っている。その豹頭と抜きん出た体躯ゆえにどうしても人目についてしまうグイン。グインと共に旅をするマリウスは木は森に隠せばいい!と発想の転換でグインを豹頭王の偽者ソックリさんとして一座の花形に据えて興行をうつことにしたのだ。マリウスの狙いはまんまと当たり、グイン一座は人気を博すのだった・・・。

 え、えーっと、困ったな。栗本親分、これはないぜーっ!(叫)・・・と言う反応はどうやら覚悟の上らしいのですケレドモ(大笑)。なんでまた天下の豹頭王グインさまを旅の一座のの役者にしちゃうんだよう。本当に親分らしい展開で、なんと言うか「おいおい勘弁してくれよ」と(苦笑)。親分が舞台ダイスキでご自分でも主催されているから、こういう流れは想像つきますし、「やっちゃったなぁ」って苦笑交じりに読むこともできますよ。そりゃあね。相手が栗本親分だから。それに長い長い物語で主人公であるグインが何巻にも渡って登場しなかったことだってあったし。こうなるともう親分のお気の向くまま好きなように書いていただいて、読者はひたすら待つしかないのでしょうねぇ。こんな座興やってないで物語を進めておくれよー。こういうのは番外編でやりましょうよー。親分さんってばよー。お願いだからー。それでもしばらくは旅の一座編らしいです。あーあっと。

 ただまあ、何を幸せと思い、何を不幸せと思うかはひとそれぞれというものだからな。

『グイン・サーガ109 豹頭王の挑戦』 2006.8.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年08月27日(日) DVD『BEETLE JUICE』

 新婚ほやほやでスィートホームの手入れに余念のないアダムとバーバラは、事故でいきなり死んでしまう。新人死人となった二人は、我が家が人の手に渡りそうになり、阻止するべく奮闘。やってきた家族の娘リディア以外は二人の存在を全く感じない。なんとか人間を追い出したい二人は、霊界のなんでも屋ビートル・ジュースの手を借りようとしてみたが・・・!?

 うふふ。鬼才ティム・バートンが、ジョニーの前にお気に入りだったのがマイケル・キートンなのですね。ビートル・ジュース役のマイケル・キートンの変っぷりったら、ジョニーの敵う相手じゃありません。ジョニーはあんなにお品が悪くナンテなれないもの。でも、ジョニーでビートル・ジュースも見てみたいかも。ハロウィンとか、異世界のお祭りものにことのほか心惹かれるので、このビートル・ジュースがUSJでショウをやってるのを見た時には本当に嬉しかったです。昔馴染みに会えた気分でv USJでは、あまり映画とは関係ありませんが、ビートル・ジュースの性格だけはキッチリ反映されています。そして、同じティム・バートンのジャックはディズニーにいると言う。ハロウィンと言えばティム・バートンって感じですネ。あ、そろそろハロウィンの季節がやってくる! 行きたいなぁ、USJ。



2006年08月26日(土) DVD『Stand by Me』

 あの12歳の夏、ゴーディはオレゴンの小さな町で仲間たちと冒険をした。行方不明になった少年の死体を捜しに。4人の少年は期待と不安で興奮しながら、時に仲違いをしながら、忘れえぬ夏を過ごしたのだった・・・。

 ああっ、もうメロメロです。何度観ても泣ける。Stand by Me の音楽が効果的で懐かしくて哀愁あふれて胸がいっぱいになってしまいます。少年たちが冒険をして少し大人になる・・・ただそれだけの物語がどうしてこんなに胸に迫り来るのでしょうか。忘れたくないものをソコに見るからでしょうか。こういう想い出を心の奥深くにしまい、人は生きて行くのでしょうね。時折、取り出して懐かしみながら。



2006年08月24日(木) 『愛されてもひとり』 新津きよみ

 定年を機に夢を叶えて安曇野に移り住んだ夫と絹子。なんでも出来る優しい夫にベッタリ依存して生きていた絹子だったが、ある朝、夫が脳梗塞で急死。途方にくれる絹子に息子夫婦が同居を申し込んでくる。息子の嫁と全く合わない絹子は、自立する道を選ぶ。ひとりで生きる楽しさと不安を噛み締めながら、絹子は自分の心で足で生きはじめるのだった・・・。

 60過ぎで初めてひとりで生きていこうとする、なかなか健気な物語でありました。どちらかと言うと苦労知らずのおっとりした奥様だった絹子が割合に根性を見せるあたり小気味良かったですv なぜならば、息子の嫁がものすごく感じ悪いから!(怒) この嫁、なにもかも自分を軸にしか考えられない超自己中x キャリアウーマンだケレドモ子どもは欲しいし、産んでも仕事は続けたい。ならば義母に家事やらベビーシッターやらせてしまえばいい・・・と、そういう考え方丸出しで絹子に接するのですね。そんなのいくらおっとり絹ちゃんにしたってイヤだべさー。まぁそれでも少しずつ考え方が変わって最後の方ではちょっとマトモになりましたけど。でもヤダな、こんなバカ女。心がない。一刀両断だ、コノヤロー。絹ちゃんもアマあまだし、抜けてる。だけど自分でなんとか頑張ろうとする心意気がカッコいい。がんばれ、絹ちゃん!だったのでありました。だいたい人のことナンダカンダ知りもしないで言うんじゃないよー。ほっとけ。ばかー。

『愛されてもひとり』 2006.7.30. 新津きよみ 詳伝社文庫



2006年08月23日(水) 『天国の対価 おもひでや』 宝珠なつめ

 生き人形のような美少女サナギは<思い出作家>、“おもひでや”ではサナギのお眼鏡に適った依頼人の望む夢を作りあげる。思い詰めてサナギの元に思い出を買いにやってくる人々。それぞれの思いと苦しみを抱えて・・・

 タイトルとイラストから想像していたファンタジーからは、ほんの少し位置がずれたものでありました。ただ望むものを与えるわけではないし、その夢が必ずしも幸せを残さないと言うこと。なかなかシビアなものでありました。思い出作家のサナギの他の店長のテンと美少年のクレオの二人のスタッフも風変わり。なにやら過去にあったっぽいふたり。勿論サナギ自体がトッテモミステリアスです。たぶんこのシリーズは続いて、三人三様の物語が語られていくことでしょう。私的にはクレオが気になるかな。

 失ったものの大きさに耐えきれず、ただひたすらに、その名を繰り返して。

『天国の対価 おもひでや』 2006.6.25. 宝珠なつめ 中央公論社
 



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