酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年08月10日(木) |
『隠れ菊』上 連城三紀彦 |
浜名湖畔にある料亭『花ずみ』、名物女将のキクは道楽者の亭主に苦労しながら料亭を切り盛りしていた。キクに気に入られてキクの息子・旬平に嫁いだ通子は、キクの要望で店を手伝うことなく家庭を守っていた。キクが亡くなり、板前の旬平が店を継ぎ、平凡なはずの毎日に奇妙な出来事が起こった。旬平から通子に世話になっている金沢の酒屋の社長を出迎えに行って欲しいと頼まれたのだ。言われるままに駅で出迎えに待ちわびる通子の背後からひとりの美女が声をかけてくる。彼女こそが待ち人であり、通子に対して「私、ご主人をいただきにきました」といきなり宣戦布告を放ったのだった・・・!?
あまり読む機会がなく通り過ぎてきていた連城三紀彦さんの絶版本をトアル事情で読んでみることになりました。何年か前にドラマ化されたそうで、夫の愛人とのバトル!?なのかと思いきや・・・ちょっとそれだけのドロドロ泥沼ものでもないようなのですよね。連城三紀彦さんってこういうテイストの物語を描かれる方だったのですねぇ。男を挟んだ女と女の火花の散らしあいは恐ろしい(笑)。しかも年頃の娘が揺れ動いちゃって話をややこしくしてしまう始末。でも、それぞれのキャラクターが意外に好ましいので読んでいて嫌ぁ〜な物語ではないです。逆にやってることはちょいと問題ありにしても、いい人が多すぎるきらいがあるくらいです。はてさて、通子の運命やいかに!? 「お父さんとのこと、気もちでは許せないくせに体はまだしがみついてて・・・・・・だから、まだ本気では別れられないんじゃないの。そういう半端なのが正しい関係なのかなあ。私、毎朝、アンタの体がいら立ってるの、気づいてるのよ」
『隠れ菊』上 連城三紀彦 新潮文庫
2006年08月09日(水) |
『罠釣師』(トラッパーズ) 三浦明博 |
仙台で小料理屋をやっている木之下は、趣味の渓流釣りへ繰り出した。運悪く事故を起こすが体に不具合はなく、宿を確保し、車は後でなんとかしようと山奥へ釣りへ走る。釣りが好きで好きで仕方ない木之下だったが、たまたま出会った老人と美少女に釣り上げられてしまい、魚ではなく人間を釣り上げるペテンに加担することとなってしまい・・・!?
好きな映画に『スティング』があります。ポール・ニューマンとロバート・レッドフォードが仲間の敵討ちに大物をおおがかりなペテンにひっかける、ポイントは騙した後で騙されたと気付かれないこと・・・って小洒落た映画でラストのどんでんがえし鮮やかな素晴らしいものなのでありますが、なんだかソノ映画を彷彿とさせる物語だなぁと思いつつ読みました。巻き込まれる料理人が出向く山奥の渓流での釣りのシーンが最高に涼しげで清々しい想いを運んでくれます。釣りはやりたいですねぇ。特に山奥での渓流釣り。自然の中で美しい時間が流れることだろうなぁ。・・・あ、物語は読みやすくて楽しかったです。つるりんっと読めちゃいますv
人間の心理とは案外単純なもので、雨が降っていれば陰々滅々として疑り深い気持ちになるし、すかっと晴れれば気分も良くなって些細なことなど気にならなくなる。そういうものだ。
『罠釣師』(トラッパーズ) 2006.6.10. 三浦明博 文藝春秋
2006年08月08日(火) |
『結晶物語』1・2 前田栄 |
大妖怪と人間のハーフ凍雨(とうう)は、生きるため金儲けとして質屋を営んでいる。父で大妖怪の白夜は年を重ねた物を舐めて時を食べてしまう。そうすると、品物が新しくなる。そのあたりを利用して商売をしているのだが、金になるアンティークものを凍雨が油断した隙に白夜がぺろりんと舐めてしまい、台無しにしてしまうこともしばしば。凍雨は凍雨で相手の強い感情を結晶にする技を持つ。その味わいは感情によって違うらしい。時や感情を盗む妖怪親子に取られた質草ゆえに僕となっている黄龍は、いつもふたりに振り回されて・・・
妖怪が質屋を営んでいて、客に幽霊や妖怪がやってきて、巻き込まれる事件は御伽噺の主人公たち・・・そして御伽噺の新解釈が語られると言う、なかなか優れものな不思議物語なのであります。妖怪の感性は人間とは違うために、生真面目な黄龍は四苦八苦。人ならぬ異形のモノたちのココロなんて所詮人には理解できないのでありましょうなぁ。舐めて時を食べてしまう大妖怪・白夜がことのほかお気に入り。とってもキュートなのでありまする。にっこり。
「妖怪がいるって知ってるのに、神や仏は信じないの?」 「神や仏は、妖怪の一派なのか?」 「え? 確かに、妖怪と神との境界ってけっこう曖昧だけど・・・・・・力の強い妖怪が神として祀られていることもあるし、反対に、神だったのに信仰する人がいなくなったせいで妖怪と呼ばれるものになってしまったものもいるし。仏は、人間が悟りを開いてなるものだから関係ないと思うけどね」
『結晶物語』1・2 前田栄 ウィングス文庫
2006年08月07日(月) |
『樹上のゆりかご』 荻原規子 |
ヒロミが入学した都立辰川高校は、イベントに力を入れる男子校色が色濃く残る高校だった。男子生徒率が高く、女子生徒は良くも悪くも特別視されてしまい、ヒロミは居心地の悪い思いを抱えていた。しかし、歌が好きなヒロミが楽しみにしていた合唱コンクールあたりから、巻き込まれるようにして生徒会執行部の活動を手伝うこととなる。合唱コンクールで目立った美少女がヒロミに近づき、この学校には「名前のない顔のないもの」が巣食うと言う。そして起こった事件とは・・・!?
あああっ! この物語は胸に痛くってほろ苦くって懐かしくってトッテモ良かったです〜。めろめろ。高校時代と言う3年間と言うのは、閉鎖的でエネルギッシュでぎとぎとぎらぎらしていて、それでいて初心なココロも残っていて・・・高校生の存在自体が妖怪変化みたいなものだったのだよなぁと思うのであります。清潔さが残るか失われるかの際だった気がしますネェ・・・。高校時代にあまりにも思い入れの深いため、その時代にタイムスリップするかのような眩暈とともに読みました。ありそうで少し怖くて残酷で、ココロに痛くも懐かしい青春小説なのでありました。荻原さんはウマイなぁ。
「男子と同じ土俵で勝ち負けを言うのは、やっぱりまちがっているよね。私は私だってことを、見失うのはみっともない・・・・・・私なりのやり方で、今はここにいるんだし。だから、私が負けたくないのは、女子ってことかもしれないな。私の中の女の子・・・・・・」
『樹上のゆりかご』 2006.6.25. 荻原規子 中央公論社
2006年08月06日(日) |
『ミカエルの騎士8 征服されざる石の伝説』 前田栄 |
ヴァチカンに盟主=アーサー(ミカエルの騎士)を奪われたマーティンとメアリ。マーティンはメアリに覚悟の程を問い掛ける。アーサーに関わり執着し続けると自分のように変質を迎える、と。そしてメアリは姿を消してしまう。ひとりになったマーティンは天使ガブリエルに助けを請う。ガブリエルは悪魔であろうと友人であるマーティンを救おうと奔走する。マーティンはアーサーを救う事ができるのか。マーティンは闇に同化して変質してしまうのか。メアリはアーサーを見捨てることができるのか。そして・・・アーサーは悪魔と天使の存在を自分の心の中でどう昇華させるのか・・・!?
ついに『ミカエルの騎士』が完結いたしました。アーサーの持つ能力は自分の信じたことを具現化すると言うもの。ですから、必然的にアーサーの望んだ結末が物語の結末となる訳ですね。ららら科学の子アーサーが悪魔やら天使やらの存在をどう認めるか、そこにトテモ興味がありました。おおまかなエンディングは想像通りでしたね。にっこりv アーサーがアーサーである所以でありました。アーサーの美しい魂を愛した悪魔のマーティンと天使のメアリの選んだ道も素敵でした。愛が色んなものを凌駕する素晴らしきファンタジーでありました。惚れ惚れ。 悪魔も天使も人間も・・・完璧なものはどこにもなくて。愛ゆえに愚かで愛ゆえに醜くて、愛ゆえに強い。このエンディングでアーサーが「俺が主役だ!」と主張できて良かったなぁと思いました(笑)。あまりにも天使と悪魔の存在が強烈でしたものねぇ(苦笑)。
「日常こそが、本当に愛しいものだと。 私たちの周りには大気があり、なければ死んでしまうと解っていても、それを気にすることは滅多にありません。でも、今回のことがあってから、本当に大切なものというのはそういうものなのではないかと、思うようになりました。 普段は気付かないようなもの。あって当然だと思っていること。そんなもの総てが、幸福を作っているのだと」
『ミカエルの騎士8 征服されざる石の伝説』 2000.10.15. 前田栄 新書館
2006年08月05日(土) |
『ミカエルの騎士7 青金石の天使』 前田栄 |
同じ魂を持つロザリアと出会ったことでアーサーはマーティンという存在に疑問を持ってしまった。この世に科学で証明できないものなどないと言うアーサーの信念がゆらいでしまったためにアーサーのいる小さな村は摩訶不思議な存在たちが大挙していた。メアリは妖怪退治に幽霊退治とひとりで孤軍奮闘をしていた。そこへヴァチカンからの使者トマスが現れ、ミカエルの騎士であるアーサーを誘拐。トマスの正体は実は・・・!?
罪作りな悪魔マーティンが昔むかしソノ昔にミカエルの騎士ファミリーを篭絡していて、マーティンは忘れてしまっていて・・・・翻弄されたファミリーのひとりの魂は怨みに消滅することなく転生を繰り返していたのであります。まぁ、憎めないマーティンではありますが、やっぱり悪魔だけあって鬼畜だったのだなぁ・・・と言う展開になって参りました。悪魔も美しい魂に恋すれば変わることもトッテモ皮肉。そしてアーサーの美しい魂はマーティンへの疑心暗鬼でどんどん傷ついていき、美しい魂コレクターの天使メアリがますますマーティンへの怒りをつのらせるという構図を煽る煽る。自分の信じていた世界が揺らいでしまったアーサーはいったいどうなる・・・!? 待て、次号っ!(笑) 人でアレ、悪魔でアレ、天使でアレ、愛するがゆえに憎しみが深まってしまうことを軽いタッチでありながら、けっこうドドーンと直球勝負で描かれています。鬼畜で極悪非道な悪魔マーティンに振り回されるアーサーとメアリは気の毒であるケレドモ・・・ふたりともマーティンを愛してしまったのだから仕方ないことなのでしょうね。愛することって怖いことだとしみじみ思うのでありました。
『ミカエルの騎士7 青金石の天使』 2000.9.15. 前田栄 新書館
2006年08月04日(金) |
『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 前田栄 |
異形の者であるマーティンは自分が変質していくことが加速して行くのを止められずにいた。彼らが生者に執着しすぎると起こる現象らしい。マーティンはアーサーに近づいた元々の理由である水晶の君ロザリアにアーサーを会わせることにした。マーティンからロザリアは心を病んでいてマーティンを天使だと思っていると吹き込まれる。ロザリアと会ったアーサーはなんとも不思議な心持となってしまった。慕わしくも、恐ろしい・・・ロザリアとアーサーは互いが互いをそう思うのだった。なぜならば二人の魂は・・・!?
さてさて、ついにマーティンの心の想い人ロザリアの登場です。ロザリアの美しい魂とアーサーの美しい魂の類似性にマーティンもメアリも執着します。「歪んだ真珠」では、ロザリアを巡って過去にマーティンとメアリが既に争っていたことがわかります。それがまたまた巡り巡ってアーサーの魂を巡って反発しあう・・・由緒ある因縁だったのですね。「髑髏なす翡翠」では、マーティンの変質の速度の速さをメアリが確認してしまいます。反発しあいながらも同じ美しいものに惹かれては巡り合うマーティンとメアリは悪魔と天使ながら奇妙な絆を感じていて、トムとジェリーのように仲良く喧嘩してるんだなと言う感じです。果てしなく永い時間をかけて(笑)。6巻まで翻弄されるだけの主人公アーサーでありましたが、ロザリアとの出会いによって初めてマーティンに疑問を感じます。それが終末へのプロローグ・・・・。無垢で疑うことを知らないアーサーの心に芽生えた友への疑心暗鬼。マーティンは畏れながらもその瞬間を待ち続けていたように思えるんですよね・・・。
「おまえ・・・・・・いったい何だ?」 それは、頭の中で考えていた時よりも凶悪な響きを伴っていた。そして、その残酷な響きで狭い空間を充たした。
『ミカエルの騎士6 水晶の檻』 2000.2.10. 前田栄 新書館
2006年08月03日(木) |
『赤々煉恋』 朱川湊人 |
「死体写真師」は、ネクロフィリアを軸としたホラー。「レイニー・エレーン」は、昼はキャリア・夜は娼婦な女性が幽霊となって現れる物語。「アタシの、いちばん、ほしいもの」は、自殺した霊の彷徨う物語。「私はフランセス」は、アクロトモフィリアと言う性癖の物語。「いつか、静かの海に」は、地球外生命体を育てる物語。赤々とした炎のように何かに身を焦がし、切望する者たちの行く末を描いた5つの不気味な物語たちでした。 これはねー、「朱川さんやりましたねー(にやり)」って感じの短編集でありました。心にほのぼのと郷愁を感じさせる物語とは全く異質な欲望ホラー短篇集ですから。これはこれで私的にはかなり好みであります。人間の奥深い欲望をしっかりじっとりネットリ表現されていましたからね。ゾクゾクしちゃいました。『花まんま』などの路線を望む方にはもしかすると生理的に厳しいかもしれません。 どれもこれも気に入りましたが、「私はフランセス」には度肝を抜かれました。ホラーもエログロも読んできているつもりでしたケレドモ、アクロトモフィリアと言う性的嗜好は知りませんでした。その手前の緊縛なら想像つくのですが。人間の奥深いところにある欲望は本当に人それぞれだと思いますが、痛い系はどうにもおぞましいです・・・。読むだけなら「うへぇーっ」と言いつつ読んでしまいますケレドモ、自分の肉体がそうなるのって考えられないなぁ。文章的に面白くて気に入ったのは「アタシの、いちばん、ほしいもの」です。自殺した少女の想いが何故だかよくわかってしまう。語り口から心情がトッテモよくわかるのですよねv
小ちゃいコがいると大変なんだろうな・・・・・・と同情はするけど、やっぱり、こういうのはいただけないですなぁ。いくつになっても女は女、どれだけ忙しかろうが大変だろうが、女は女を忘れちゃイカン。
『赤々煉恋』 2006.7.20. 朱川湊人 東京創元社
2006年08月02日(水) |
『ミカエルの騎士5 土耳古石は忘れない』 前田栄 |
アーサーが属する教会は英国国教会。エクソシストなど異端と目されている。なのでマーティンの冗談からエクソシストもどき活動をさせられて有名になってしまったアーサーは大迷惑! なのにあろうことか父の代から御世話になっているフィスト牧師からエクソシストの芝居を頼まれてしまった。聞けば娘の結婚相手が亡き妻の亡霊に悩まされていると言う。愛する娘を思う老牧師にほだされたアーサーは渋々エクソシストの真似事をして、その男の亡き妻の形見の指輪を預かる事になり・・・!?
マーティンが知らない間にアーサーとメアリがやらかしていたエクソシスト芝居。その芝居で巡ってきた指輪を村に持ち帰ったら、村中の人々が亡くした人に「私を忘れないで」と訴えられまくる・・・と言う物語。自分を忘れないで欲しいと言う願いを人は死ぬ前に抱くものなのかしら。そんなこと願わなくても私はあなたを忘れられないけどなぁ・・・なんて亡くした愛しい人のこと思って思わずほろり。生者も死者もいとものがなし。「金緑石の誘惑」では、その昔、マーティンがジュリアーノ・アガタンジェロと言うミカエルの騎士を誘惑したことが描かれています。鬼畜にもマーティンは、ジュリアーノの婚約者エレオノーラもジュリアーノの妹のルチアも誘惑。ジュリアーノは禁断の愛に溺れ狂ってしまい、アガタンジェロ家はぼろぼろになってしまう。・・・マーティンさりげなく鬼畜まっしぐらです。さすが悪魔と言った感じ。この騒動の時に大天使ガブエルが召喚されるのでありますが、妙にマーティンと友達っぽいニュアンスが伝わってきます。こういう物語を読んでいると人間は悪魔や天使に翻弄されているのだなぁと思います。でもそれを影が薄いが実は主人公のアーサーが・・・!?ってことを、待て次号っ!(笑)
『ミカエルの騎士5 土耳古石は忘れない』 1999.7.10. 前田栄 新書館
2006年08月01日(火) |
『少年陰陽師 天狐編』 結城光流 |
安倍晴明の妻・若菜は、大好きな物の怪を救うために自分の命を投げ打ち三途の川へやってきた孫・昌浩を現世へ戻した。しかし、若菜の必死の願いも叶わず、冥府の官吏は命の代わりに昌浩にとって無くてはならぬものを奪ってしまう。昌浩は陰陽師にとって必要不可欠な見鬼の才を無くしたのだ・・・。その上、助かったとは言え物の怪もっくんは一部の記憶を失っていて昌浩のことすらわからなくなってしまった。出雲の地で療養しながら、妖しの出現に対応しながら、昌浩の心は立ち直ることができるのだろうか・・・!?(「真紅の空を翔けあがれ」) 昌浩たちは都に帰ってきた。見鬼の力を失った昌浩と失われた時間の己に怯える物の怪もっくんこと紅蓮(騰蛇)。昌浩は自分の命を投げ出し、紅蓮を助ける手助けさせたことを祖父・晴明に詫びる。自分の決断を手助けすることが祖父・晴明にとってもどんなに過酷なことだったかに昌浩は気付いたのだった。ほんのすこしぎくしゃくする昌浩と物の怪もっくんの目の前に新しい事件が待ち受けていた。彰子の代わりに入内した彰子の異母姉妹・章子を狙う禍々しい存在が・・・!?(「光の導を指し示せ」)
風音編で昌浩は物の怪もっくんをこの世にとどめるために自分の命を投げ打とうとしました。昌浩にとってはそれしか決断の術が無く、しかし、死んだはずの祖母・若菜に助けられ、自分が決断したことが祖父・晴明を、そして周りのみんなをどんなに苦しめることであるのかに気付きました。この世に戻った昌浩はまたひとつ大人の階段を昇ったのでありました〜。 安倍晴明の十二神の中で紅蓮こと騰蛇(物の怪ももっくん)以外では、紅蓮を敵視する青龍と冷静沈着な六合がキィ神様(パーソン人間じゃない)。それに加えてトッテモすてきな神将が今回大活躍でした。その神の名は勾陣(こうちん)。美しくクールな女神で闘将で紅蓮に次ぐ力の持ち主。紅蓮が昌浩によって変化して行った様を見ていたため、紅蓮の記憶喪失により傷ついている昌浩の側にいてくださった素敵な姐さんです〜。メロメロよー。やはり強くて美しい女性に目が無いのでありまする。
そして、昌浩が願うのだ。 つらいことは、覚えてなくていいよ、と。 「つらくても、心が壊れそうになっても。決して忘れてはいけないものが、ここに確かにあるだろう・・・・・・?」
『少年陰陽師 真紅の空を翔けあがれ』 結城光流 角川ビーンズ文庫 『少年陰陽師 光の導を指し示せ』 結城光流 角川ビーンズ文庫
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