酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年07月11日(火) |
DVD『NIGHT HEAD』vol.4 |
16 A SAINT −聖人− 岬老人が夢枕に立ち、直人と直也は花輪正太郎という老人と出会う。老人は強い力を持ち、病んだ人を癒すことが出来た。花輪老人の圧倒的な力に驚き、危機感を覚えるふたり。花輪老人は望めば神にも独裁者にもなれるのだ・・・ 17 UTOPIA −理想郷− 花輪老人は聖人ではない。たまたま大いなる力を持って生まれた人間だった。老人が愛しく思った少女を酷い目に遭わせた人間達を死なせて仕舞った老人は苦悩していた。そして花輪老人が選んだ未来は・・・ 18 GIFTED −与えられし者− 宇宙とチャネリングできるという少女たちと出会った直人と直也は、かつて研究所にいた曽根崎という超能力者に遭遇した。曽根崎は御厨の考え方に反発し、研究所を飛び出し、違う機関に入り込んでいた。曽根崎のどろどろした心根に直也は・・・ 19 FORCE −力− 曽根崎が所属している機関に御厨は幽閉されていた。御厨のSOSに導かれ、研究所に戻る直人と直也。研究所があった場所は大きなエネルギーの集まる場所で、岬老人の力によって結界が張られ、守られていたことに気付く。御厨を助けるためにエネルギーを味方につけ、直人の力はこれまでにないほどに増幅する・・・
20 KARMA −業− おおいなるエネルギーの場所に舞い戻ったことにより、直也の力もまた進化しはじめていた。翔子の残したノートを見て今の直也はそれを読めるようになっていた。そこに書かれていたのは翔子が見てきた現在・過去・未来の姿。直人は直也が翔子のように意識だけの存在になってしまうのではないかと恐れるのだが、とうとう直也が消えてしまった・・・
A SAINTとUTOPIAで直人と直也は岬老人に負けないほど大きな力を持った花輪老人と出会います。直也は花輪老人の癒しの力に限りない尊敬と羨望を感じますが、直人は花輪老人の力の大きさに危機感を感じます。花輪老人ほど大きな力を持った人はもう普通に生きて行くのは不可能。そこに聖人には聖人の苦悩がありました・・・。GIFTEDとFORCEで御厨の研究所に対する機関の存在が浮き上がってきます。直人と直也は幽閉された恨みを忘れられないながらも、研究所が自分達をどれだけ守ってくれていたかにやっと気付くこととなりました。御厨さんって人は基本的にいい人なんですよね。直人と直也を研究対象としてでなく、ちゃんと愛情も注いでいてくれるから。私は御厨さんって好きなキャラクターです。KARMAは21あるエピソードの中でも一番残酷なものかもしれません。その力ゆえに両親から捨てられた直人と直也が自分達とは違う世界に生きてしまっている両親に再会してしまうから。両親の中では子供達は死んでいた・・・そのひずみは直人と直也が作り上げた世界。悲しみに浸るふたりの前に現れる宿敵・曽根崎・・・ひどい奴だーx この曽根崎を六平直政さんがうまく演じておいでです。ぎらぎらしたいやらしさを演じさせたらコノ俳優さんはホントにうまいですね。
2006年07月10日(月) |
DVD『NIGHT HEAD』vol.3 |
11 DRUG −薬物− 御厨から一時的に力を封じ込める薬が送られてきた。ただし試薬品で副作用のほどがわからない。薬に頼るのはよくないと言う直人に一度だけ試してみたいとねだる直也。直也の願いを聞き入れて二人で服用してみると確かに力が消えている。嬉しくなって街へ繰り出すふたりだったが・・・ 12 THE APARTMENT 直也が少女の助けを求める気持ちをキャッチした。少女を探して辿りついたアパートでは住人達が少女の力を食い物にしていた。少女を助けようと部屋に飛び込んでみるとそこはもう・・・ 13 CONFESSION −告白− 美人姉妹の喫茶店で不思議な現象が相次ぐ。姉に恋人ができると恋人に不幸が襲い掛かり、姉妹の周りで妙な事が次々と発生する。直也はひっそりとした妹に好感を持つのだが、彼女の潜在意識は・・・ 14 SHADOW −影− 直也が誘拐事件を目撃し、しかも犯人のひとりに刺された。直也に誘拐された女性救出を頼まれた直人は単身犯人のアジトへ乗り込む。そこで犯人達に力を放出。直也がいない直人には抑制するものがなく、破壊する悦びに浸っていた・・・ 15 APOCALYPSE −啓示− 直人と直也を強烈な悪意が取り巻いていた。街を歩けば、サラリーマンに主婦に子供に殺されそうになる。彼らはみんな予知能力者・神谷司の言葉を盲信して、二人を排除しようと動いていたのだった・・・ DRUGに篠原涼子さんが出演していました。さすがにロングヘアさらさらの超美少女。スタイルもいいし。今やトップ女優の仲間入りを果した彼女の若くて妖しい表情がトテモいい。薬に頼ってちゃいけないってことあるのですよねぇ・・・。エピソードはずっと英語タイトル+日本語意訳パターンできていたところ、このTHE APARTMENTには日本語意訳なし。まぁ必要もないのですケレドモ(笑)。異形の力を貪る普通の人間達。直人がよく言う台詞なのですケレドモ「おまえたちの方がよっぽど化け物だ!」ってことでありました。CONFESSIONは後味の悪いエピソードでした。潜在意識なんてコントロールできるものじゃなくて・・・。心の深い奥底で愛する人を妬んでいるなんて悲しすぎる。強すぎる愛情は憎しみを伴う、か。痛かったです。このエピソードは。SHADOWでは直人の潜在意識が出てきます。怒りがサイコキネシスに直結し、人を傷つけてしまう。そのことを畏れるあまりに力を抑え続けてきた直人。しかし、目の前の悪人に対して情け容赦なく力を発揮できて喜びすら感じてしまう。直也がいなければ直人は破壊の王となる・・・。だから二人は二人でいなければならない。直人の力は直也に関することでのみ発揮すべきものであり、闇雲に破壊すべき力ではない。必死で直也をとめる直人の怯えたような縋りつく目は愛らしい犬のようで胸がきゅーっとします(笑)。APOCALYPSEでは己を神と勘違いしている予知能力者・神谷司アゲインでした。神谷が直人と直也を排除したいと思い、神谷の信者たちが自分の神の望むことを果そうと動き始めて・・・なんとまぁ恐ろしい状態なのだろうか。すぐにピーピー泣き喚く直也はめげそうになるケレドモ、タイムリーに翔子が現れメッセージを与えてくれる。こうして大きな流れを見ていると神は翔子かもしれないなぁ。直人と直也を贔屓する神。 直人と直也は美しい異形の者なのだと思います。突出する存在は打たれる。狙われる。妬まれる・・・苦労の連続だ。それこそが彼らの苦悩。彼らの受難。それら全てを受け入れて乗り越えて彼らはますます美しい異形の者となる。神となる。そういうことなのかもしれないなぁ・・・と思うのでありました。
2006年07月09日(日) |
DVD『NIGHT HEAD』vol.2 |
6 MISSING −失踪− 連続自殺をマインドコントロールしていた犯人の部屋に翔子の写真が飾られていた。翔子を探す直人と直也は翔子の友人の美紀から話を聞く。翔子は自分が時空の果てで見てきたことを美紀に語っていた。翔子が残したノートには象形文字でぎっしり何かが綴られていた。密室から消え去った翔子はいったいどこに行ったのか・・・。 7 NIGHTMARE −悪夢− 目覚めると直人は新婚生活を送っていた。美しい妻、働き甲斐のある仕事、望んだ平凡な毎日・・・でもそこにいるはずの直也がいない。直人はこの世界を生きることを選択するのか・・・?
8 COMA −昏睡− 直也は自分の意識に接触してきた少女と彼女の夢の中で逢瀬を繰り返す。美しい心を持つ少女に恋をする直也。しかし彼女は現実では植物状態で眠り続けていた。ある悲しい事件を心から追い出し、キレイな夢の中だけで生きているのだ。このまま少女を眠らせていてはいけないと思った直也は・・・
9 TRIGGER −触発− 自分達の力に何か理由があるはずだと信じようとするふたりに、昔関わった意識が接触してきた。彼女はミラクルミックに出会った時に乗っていた超能力者だった。彼女はサイコメトラーとしての力が増大していた。それは一人の偏執的な男に出会い触発されたらしい。その男は見栄えのいい自分に自信を持っていて次から次へ女を手玉にとっては捨てていた。その男に彼女は狙われたのだ。どうしてこんな力をと嘆く彼女だったが、直人は自分達もそうであったように彼女もまた彼女がソノ男を引き寄せたのだと考える。ふたりと別れた彼女は男と対決し、男の精神をこなごなに破壊して、彼女もまた・・・
10 PROPHECY −予言− 深夜、車を走らせていた二人の前に「助けて」と一人の女性が現れる。そして直也の頭にある予知が浮かび、それはふたりが死んでいる場面だった。その予知が助けを求めた女性に関係すると思った二人は彼女とかかわって行く。彼女は新薬の研究をしていて、恋人に殺されそうになっていた。彼女の恋人は彼女の新薬の研究が原因となり多くの人間が死ぬと思い込んでいた。そして彼の背後には神谷司と言う予知能力を持つ男の存在があった。自分の絶対的なカリスマ性に酔う神谷司は歴史を捻じ曲げようとしていて・・・
MISSINGでは『NIGHT HEAD』のヒロインと言うべき少女・双海翔子について語られています。翔子は大いなる意識に同調し、現世での器を失いつつあった・・・。哀しいことに翔子は現世に全く未練も執着もなくて。直人と直也の両親は二人の力を恐れるがゆえに二人を手放したケレドモ、翔子は翔子を愛する母や友をあっさり捨ててしまう・・・そこが大いなる力に同調できる所以だったのかもしれませんね。翔子のお母さんが可哀想でした。 NIGHTMAREとCOMAは物語の表と裏。直人は理想の世界を怒りをもって破壊して直也を選び、直也は理想の世界にいたいケレドモ恋した少女のために泣きながら手放す・・・ふたりの性格がハッキリくっきり浮かび上がる二つのエピソードでした。この辺りまで強そうであっても、その実トテモ繊細で弱い直人にとって直也が必要不可欠な存在であるように描かれています。 研究所を出れば二人にマイナスの存在が引き寄せられる、御厨にそう言われていた二人はTRIGGERでマイナスはマイナスを引き寄せる事を目の当たりにする。このエピソードの暴走する超能力者の女性の顛末がかなり残酷で気の毒でした。闇雲に力を使って人を壊すと自分までも・・・。これはマンガで読んでいて映像で見たのはハジメテでした。このエロティックさが深夜枠ならではで、人間の隠されたおぞましい欲望に迫っているところも人気のひとつだった気がします。 PROPHECYで登場する予知能力者・神谷司は自分の力に酔っていた・・・。この神谷司の邪悪さと直也の純粋さの対比がウマイと思いました。意識せずとも世の中を混乱させてしまうことになる人物を排除しようと考える神谷。彼女を生かした未来を求める直也。このエピソードあたりから直也のこれからの役割が見えてきますね。そのためにまだまだ彼らは苦しまなければならない。聖者は苦しみながら進んで行くのだなぁと思いました。 豊川悦司さんの直人と武田真治くんの直也が異様にぴったりハマッタのは、ふたりの姿カタチゆえだったろうと思います。背の高い豊川さんに抱きかかえられる武田くん・・・そりゃぁもうヤオイに興味がない人間でも「あらら」と思っちゃうこと間違いなし。それくらいにふたりの歩く姿は恋人構図にぴったんこ。でもまぁいくら聖者で未来に必要な人物でもやたらめったらピーピー泣く直也ってお荷物っちゃあお荷物ですよねぇ。直人にいちゃんよーがんばらはられてます。エライ。エライ。がんばれ、直人!
2006年07月08日(土) |
DVD『NIGHT HEAD』vol.1 |
「人間は、脳の容量の70%を使用していないと言われている。人間の持つ不思議な力はこの部分に秘められていると考えられている。使用されることのない脳の70%はこう呼ばれることがある─ NIGHT HEAD」
1 REAL PSI −念力− 清楚な美少女の様子がおかしい。彼女の名は翔子。そしてふたりの男が車に乗って逃亡している。ふたりはどうやら兄弟らしい。弟が兄に我侭を言って深夜営業している店に入る。そこに集う常連達はテレビに流れる超能力者をいかさまだと馬鹿にし始める。そこへアヤシイカップルが入店。妙にざらざらとざわつく店内。常連のリーダーらしき男の母が新興宗教にはまったことを恨みに思っていて超能力に対する罵倒が激しくなる。そして兄の怒りが暴走する。兄・直人と弟・直也は超能力者だった・・・。弟・直也にはリーディング能力があり、人に触れるとその人を読んでしまう。常連のリーダー格の彼女に触れた直也はその女がその店にいる全ての男と肉体関係を結んでいる事を知り、純粋な直也はそのおぞましさに・・・
2 OBSESSION −強迫観念− 深夜の喫茶店で居合わせたカップルの女が直也の横を通り過ぎる時、直也に触れてしまった。直也は彼女の毒々しい人殺しと快楽を読んでしまう。毒気に当てられたようにフラッシュバックに悩まされる直也に不思議な美少女・翔子が現れ、あるメッセージを伝える。直也は自分が見ている恐ろしい殺人現場が過去ではなく未来に起こることだと気付き、直人の助けを借りて殺人を食い止めようと奔走する・・・
「逃げなければ答えは見つかる」
3 FAKE −偽物− 直也が自分達と似た意識を感知し、深夜の送迎バスに乗る。そのバスに失踪中のミラクル・ミックが乗っていた。テレビで面白おかしく超能力を披露するミックを直人は嫌悪していた。そしてミックが乗客に気付かれ、スプーン曲げを強要されて困っている姿を見て、直人はスプーンを曲げてしまう。すると乗客の病人が病を治してくれとミックに迫り・・・・ 4 AWAKEINGS −覚醒− 両親はふたりの子供の持つ異様な力に気付いていた。直人が怒ると周囲の人間が怪我をする。そのため学校に行けなくなってしまっていた。直也は人と接すると何故だか泣き喚きだし自閉症となってしまっていた。直也が心を許せるのは兄の直人だけ。ある日、父に詐欺師の一家が近づいてくる。両親の顔色を窺い、力を抑えていた幼いふたりだったが、両親の危機を察知して力を解き放ってしまう。そしてふたりは両親に捨てられたのだった・・・。
5 VICTIMS −犠牲者− ふたりが15年間収容されていた研究所の御厨から依頼を受け、ふたりは連続する自殺を調べることになった。仲の良いグループの少年少女たちが同じやり方で次々と自殺するのだ。この街では数年前にも老人達の連続自殺騒動が起こっていた。なにかの力が動いていることに気付いたふたりが辿りついた事件の犯人は・・・
『世にも奇妙な物語』の一編に「常識酒場」と言うものがありました。超能力者の兄弟が酒場で人の悪意に遭遇する悲しい流れで、とても心に強く残っていました。その一編が『NIGHT HEAD』のプロローグREAL PSIです。本当に印象的なエピソードで21話の中でもかなり好きな話です。 OBSESSIONで狂った脅迫観念に囚われた女を深浦加奈子さんが演じられています。ものすごく毒々しい狂った感じがピッタリ。深浦さんの目は妖しい魔女の目だと思っているので当にハマリ役。 FAKEは今回はじめて見ることが出来たエピソードでした。人とは違う力を持つ人間は様々な要求をぶつけられる。怪しげな新興宗教の姿をそこに見た気がしました。なにかに縋りたくなってマガイものに縋らなければいいのだケレドモ・・・。このエピソードでは直人がハンデを持っているのは自分だけではない、と気付き直也に側にいて欲しいと言うラストシーンが秀逸。ハンデと感じながらも破壊の力を持つ直人は自分の力についてアラタメテ見つめなおすこととなるのです。 AWAKEINGSも映像としてはハジメテ見ることができました。内容は小説で読んでいたのでハジメテと言う感じはなかったのですケレドモ。ふたりの少年が望まずに生まれ持った力のせいで親から恐れられ捨てられてしまう。親も子供も悲しいなぁ。それでも大きな愛情で包んでやって欲しかった。ふたりは互いに互いしかいない・・・それが妖しい兄弟の姿となり、妙にエロチックなムードを醸し出したようですね。 VICTIMSも映像としてはハジメテ見ました。これはマンガ化されたものを見ていて、マンガが映像に忠実だったことに驚きました。ヒロインとなる少女を大路恵美さんが演じていてマンガの可憐な少女そっくり。意外な犯人の姿もマンガでソックリでした。すごいなぁ。犯人を抱きしめる直也の悲しみが心に響いてきて切ないです。
深夜枠で超能力に真っ向勝負を挑んでいるので、エロさもてんこ盛り。トッテモ素敵なサイキック・ロード・ムービーになっています。リアル・タイムで見ることが叶わなかった映像を14年経った今すべてを見ることが出来て本当に嬉しく思います。しかも感応したかのようにアニメーション化されていました。アニメでの兄弟も見てみたいものです。
2006年07月07日(金) |
『145gの孤独』 伊岡瞬 |
倉沢はプロ野球ピッチャーとして活躍していたが、魔の一球でバッターの野球生命を奪ってしまい野球界から追いやられてしまう。流れから便利屋をはじめた倉沢は子供のサッカー観戦に「付き添う」ことを依頼される。この付き添い依頼をきっかけとして倉沢は様々な事件に巻き込まれてしまうのだが・・・!?
これは予想以上に面白くて嬉しかったですねー。挫折したプロ野球選手モノと言うのに惹かれやすいのですケレドモ、今までの挫折プロ野球選手モノで一番良かったと思っています。バッターの野球生命を自分が投げたたった一球で奪い去ってしまったトラウマの描き方や、倉沢が壊れているサプライズには「おおう」とトッテモとってもブラボーな気分になりました。傷ついているくせにくだらないジョークで人を煙に撒こうとする倉沢の心がナイーブで痛々しくて切なかったです・・・。人を傷つけるって本当に大きな悔いを残してしまうもの・・・それってキッチリ受けるべき贖罪で何かを支払い続けないとならないのかもしれません。
「あなたは現実を見つめることができない臆病者だったってことでしょう? それを忘れずにいてよ」
『145gの孤独』 2006.5.30. 伊岡瞬 角川書店
2006年07月06日(木) |
『あめふらし』 長野まゆみ |
仲村逸郎の魂は、空蝉に寄宿してしまう性質(たち)だ。意識していないうちにふぃっと他人のカラダに移動している。この見てくれのいい男に移ったからには今までの生活圏からも移動しなくてはならず、妙な下宿先に辿り着いた。下宿の主は自分の息子になて欲しいと言う。彼はウヅマキ商會を営んでいる橘河と言う不思議な男。橘河はタマシイを捕らえる《あめふらし》だったのだ・・・
なんともレトロで昔懐かしいセピア色した不思議な幻想的な物語でした。妖しい生き物たちがうごうごと蠢いていて素敵ステキとウキウキわくわくしながら読みました。古き良き時代では本当にいろんな生き物たちが共存できていたのではないかしら、ナンテ夢想してしまいます。今は闇がなくなってしまったから妖しい生き物たちはどこかに消えてしまったのかしらぁ。この物語における不思議な恋愛模様もナイスでした。うーん、ありそう。橘河という男が飄々としててトッテモいい味だしてました。個人的にかなり好物。
「・・・・・・いいこと教えてやろうか。たいていはな、惚れてから化けものだと気づくんだよ。だから、化けものかどうかなんて関係ないンだ」
『あめふらし』 2006.6.15. 長野まゆみ 文藝春秋
2006年07月05日(水) |
DVD『探偵事務所5 〜5ナンバーで呼ばれる探偵』FileB |
「探偵522 〜失楽園〜」 新人探偵591のカイン美容整形外科報告書を読んだ522は詳細を聞きに591の部屋を訪ねる。591は失踪事件は解決できたものの、カイン美容整形外科の後ろ暗い犯罪を個人的に憤り密かに追いかけていた。カイン美容整形外科の手術により植物状態となった少女の姿を写した写真を見て522は顔色を変え、怒り出す。浮気調査専門の522は特例としてカイン美容整形外科を追いかけることを許可されていた。591は522と共にカインの院長である阿部の正体を暴こうと奔走するのだが・・・!?
軸となる事件がFileAとFileBの表裏となっている構成で二つの物語がひとつの事件にリンクする。この作り方はウマイですねぇ。「キレイになりたい 」と言う女たちの願望を餌にあくどい商売を続ける美容整形。ありそうでトッテモ怖い内容でした。カイン美容整形外科の院長の阿部は日本の制度の隙間を縫い内科医なのに美容整形の病院を経営。そして狂った美貌の天才整形外科医の偏執的な美に対する執念。この二人の精神のぶれが物語をおどろおどろしいものにしあげていました。でもBGMのテンポのよさや物語の展開はスタイリッシュ。なのでものすごく不思議な独特の世界が生まれています。阿部の正体についてもサプライズがある上に最後に謎を積み残すという放置プレイ的快感。物語は終らない。そういう作り方に身悶えするほどでありました。林海象さんにロックオン!
2006年07月04日(火) |
DVD『探偵事務所5 〜5ナンバーで呼ばれる探偵』FileA |
「探偵591 〜楽園〜」 川崎に本部を置く《探偵事務所5》は創立60周年。宍戸会長のナンバー500を皮切りに5ではじまる3桁のナンバーをコードネームとする100人の探偵たち。彼らのファッションはオールドクラッシック探偵紳士スタイル。黒縁メガネと黒のネクタイ、黒スーツに黒の帽子・・・そんな探偵事務所にひとりの新人が入ってきた。探偵ナンバー591、かの小林少年の末裔である(笑)。依頼を待ちわびる591の部屋へ宍戸会長の孫娘・瞳が入り込んでくる。彼女の親友・美花が姿を消していることを心配し、調べて欲しいと言う。アイドル志望の美花の行方を辿るうちにカイン美容整形外科という病院に行き当たった。美花が瞳に言い残した「楽園に行く」と言う言葉。楽園はいったいどこにあるのか・・・!?
永瀬正敏さん主演のテレビドラマ『私立探偵濱マイク』が好きだったので久しぶりにレンタルしてみようかと思い、レンタル屋さんで行き当たったこのDVD。いつもレンタル中と言う人気ぶりでやっとレンタルできて見てみたら、あらまぁ面白いこと。プロローグとして探偵事務所5の紹介を兼ねて新人探偵591が動き出します。会長の孫娘はナンバーを持っていないものの、探偵の七つ道具などを熟知していて好奇心旺盛のキュートでかわいい女子高生。彼女が今後なにかと事務所をかき回して行くこと間違いなしと想像できるやんちゃっぷり。 この物語を観ていて思い出したのは、旦那が遺したマンガ『秘密探偵JA』でした。おそらく林海象さんもJAを読まれていて心に残ってらっしゃるのではないかしら。小道具や変装や秘密のアジト・・・わくわくする要素がぎっしり詰まっていて最後まで探偵たちと一緒に疾走してしまう。質の高い探偵(事務所)の登場に心躍る梅雨の日でありました。
2006年07月03日(月) |
『配達あかずきん −成風堂書店事件メモー 』 大崎梢 |
ファッションビルに入っている本屋さんで働く杏子とアルバイトの多絵ちゃん。てきぱき働き者の杏子は次々とも舞い込んでくる妙な謎に悩み、こんな時トテモ頼りになる探偵素質ばっちりな多絵ちゃんに相談する・・・。
これはトッテモいい! 本好き、本屋好きにはたまらない魅力v 本屋に舞い込む謎にもいろいろとあるものだなぁと感心してしまいました。少し調べてみたら作者の大崎梢さんは元書店員さんでいらしたとか。きっとご自分が本をこよなく愛していて、その視線で見てきた小さな謎や不思議を物語にされたのでしょうね。表題となった『配達あかずきん』は評判どおりグーv ナイスーv でも私が気に入ったのは『標野にて 君が袖振る』でした。なぜかと言うと・・・キィパーソンとなる死んじゃった少年が恋旦那を思い起こさせたから・・・でありました。ふぅ(涙)。高校生でありながらオーラを放ついい男って本当にいるから。そしてソノ少年は少年なりに確かに悩みも苦しみもしていたから。そんなことを考えて少し涙ぐみつつ読んだのでありました。切ないケレドモ、素敵な話だった。うっとり。この杏子さんと多絵ちゃんコンビで次回作を執筆されているようなので本当に待ち遠しいです。それにしてもミステリ・フロンティアはあなどれないなぁ。面白いものがすごーく多い。タイトルも心惹かれるものばかり。やるなぁ、東京創元社!
「だろ? 自分が死んでから二十年も経って、まぁだ女を口説いておる。おかげで上田くんはまたメロメロだ。ほんとうにもう、油断もすきもあったもんじゃない」
『配達あかずきん』 2006.5.25. 大崎梢 東京創元社
2006年07月02日(日) |
『Heaven? ◆ご苦楽レストラン◆』 佐々木倫子 |
大学受験の時に母も一緒に上京し、母が受験票を持ったままディズニーランドへ行ってしまい受験すらできなかった過去をトラウマに持つ伊賀観。営業スマイルが苦手なくせにフランス料理店でサービス業経験3年。観は黒須仮名子という傍若無人な美女にスカウトされ新しくオープンする「Loin d'lci」(ロワン・ディシー)に勤めることになる。この店は駅から遠く墓地の中にある。その店名の意味は《この世の果て》・・・・。黙々と働く観と間抜けなスタッフたち。観が働いたソノ店は果たして楽園だったのだろうか?
うーぬ、なんて面白いのだろう。川原泉さんのシュールさに負けないズバヌケタおちゃらかさ。佐々木倫子さんの絵柄は動きがないと言うか、好みではナイ。でもやはり微妙な言葉&会話の妙が素晴らしくって。主人公は佐々木さん御得意の地道ないつだって損する(笑)好青年。周りに配するは無茶苦茶だったり、天然ボケだったり、・・・傍迷惑なのだケレドモ憎めない。だから主人公は一手に苦労してしまう。アハハ。自分がフランス料理をしこたま食べたいがためにオーナーとなった女・黒須仮名子。最強の我侭女であるにかかわらず、時々間違って的を射たことを言って周りを感動させる、が、本人は口からでまかせのハッタリでしかない(大笑)。この黒須仮名子の法螺に振り回されたり、あえてのってみたりする周りの人間達がトテモいい。不思議と調和が取れてしまうのだものねぇ。
なにパンがない? パンがないなら − ケーキもありませんよ! お酒を飲めばいいじゃないの!! ホーッホホホホホホ
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