酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年07月01日(土) |
『笑う大天使(ミカエル)』 川原泉 |
超お嬢様学校《聖ミカエル学園》高等部2年に毛色の変わった猫が3匹・・・ではなくて(笑)猫かぶりっこ3名がいた。母が亡くなった後に現れたお金持ちの兄を持つ司城史緒・成り上がりの父と高貴な出身で家事全般一切合財放棄した母と教育係の俊介を持つ斎木和音・「安い・早い・美味い」大衆食堂→レストラン・グルプに成長してしまった庶民ファミリーの更科柚子。三人三様で猫をかぶりつつ学園の妙な人気者である3人がそれぞれの猫はおろして本音で仲良くなり、彼女達の青春がはじまるのだった・・・
笑うミカエルを初めて読んだのっていったいいつだったろう・・・・。思い出せない。思い出せないケレドモ、ずっと心の奥底に刻み付けられている川原作品なのであります。言葉の妙って言うものをここまでウマク表現できるマンガ家さんって他に知らないです。そう言えばこういうシュールでふざけているのに真理なマンガって川原泉さんが始まりなのかもしれないなぁ。長い時を経て映画化されることになったあたりスゴイ。久しぶりに読んでヤハリ泣きどころはおんなじでした。オペラ座の怪人で泣いてしまう・・・。ルドルフ・シュミット氏は最強のキャラです。ラストのお嬢さんがたの卒業シーン後は大好きな映画『アメリカン・グラフテイ』なとこも心を鷲づかみv 色褪せない作品の偉大さ。いいものはいつまで経ってもいい。そういうマンガの名作です。うんにゃ!
2006年06月30日(金) |
『贄の夜会』 香納諒一 |
木島喜久子は《犯罪被害者家族の集い》の帰り道、目取真(めどるま)南美を食事に誘う。家族を犯罪によって失ったPTSD(外傷後ストレス障害)に悩むふたりは互いの悲しい過去を語り合う。ハープ奏者の喜久子のコンサートを聞きに行く約束をし、別れたふたりが殺されて発見された。喜久子は両手首を切断され、南美は石段に頭を叩きつけられて。残虐な事件を担当することになった警視庁の大河内は、目取真(めどるま)南美の夫を不審に思う。事件を調べるうちに事件当日のパネラーゲストの弁護士が19年前の猟奇殺人犯だと判明する。当時14歳だった弁護士は少年を殺し、頭を切断し、頭を・・・・。
内容が快楽殺人、猟奇的殺人、少年法、透明な友人、スナイパー、警察スキャンダル等など盛りだくさんでした。好みな路線であるにもかかわらず読み通すのに時間がものすごくかかってしまいました。文章と相性が合わないのかテンポ良く読み進めることができなかったのです。読了後も面白かった!のにのになにやら悶々としたものが残っています。さっさかと読めていたらただ「面白かった!」で済むのになんだか残念気分。視点があちらこちらしすぎだったからじゃないかしら。
文は人也だよ。文章の成り立ちは、人の声や喋り方と同じくらいに、その本人を特定する材料となる。
『贄の夜会』 2006.5.30. 香納諒一 文藝春秋
2006年06月29日(木) |
DVD『木更津キャッツアイ』 |
ぶっさん(岡田准一)は余命を告知される。木更津で父・コウスケ(小日向文世)のバーバー田淵を手伝いながら、野球とビールを愛してのほほんとしていた日々。そんな毎日に期限を切られ、あと三ヶ月でなにが出来るのか、なにをしたいのか考えてみる。仲間のバンビ(櫻井翔)・マスター(佐藤隆太)・アニ(塚本高史)・うっちー(岡田義徳)たちも戸惑いながら、苦しみながら、ぶっさんとの青春の日々を駆け抜けて行く・・・
『池袋ウエスト・ゲート・パーク』のスタッフが再集結して作り上げたコノせつなくて可笑しい青春喜劇。クドカンに惚れ込んだのってコレで決定的になった気がするのです。男の子たちが馬鹿でやんちゃで一生懸命で痛々しいほどに切ない。ものすごく愛しい。 メインの5人以外の登場人物もすごくユニーク。みんなの高校時代の教師の美礼先生(薬師丸ひろ子)は、閻魔帳に《殺》(画数10)を書き上げた相手に妙な嫌がらせを繰り返す。木更津の守り神オジー(古田新太)は、記憶喪失で知能が遅れたようになっていて、なぜだか街のみんなに愛されている。キャッツの面々が高校生だった時の野球部の監督・猫田(阿部サダヲ)はイキナリ切れて暴れまくるが、物真似ヤクザの山口先輩(山口智充)に頭があがらない。色気むんむんさせ子の異名を持つモー子(酒井若菜)は実は処女で憎めない。3代目木更津ローズ(森下愛子)は木更津の青少年を性犯罪から救ってきた伝説のストリッパーでコウスケと結婚する。などなど異色な脇役がずらーり。ゲストも木更津の★氣志團やぶっさんが大好きな哀川翔や今をときめく妻夫木くんに殺人鬼面の中村獅堂などなどなど・・・。 自分にとって大切で愛しい存在が死んでしまう。そのことに父親も仲間も街の人たちも苦しんで泣いてあがいて・・・せつないなぁ。中でも父親コースケ役の小日向さんが最高にいい。前からいい役者さんだなぁと思っていたケレドモ、とことん泣かされました。ぶっさんが父親に「死ぬってこえーな」と言うシーンは涙がどれほど流れたことか。ぶっさん役の岡田准一クンは役者として花開いていたのですね。死に向って涙を流す表情たるや天下一品。岡田クン、ついていきますっ! あ。いけない。クドカンのことを書いていない・・・。ま、また池袋を見直したら書こう。うん。
2006年06月28日(水) |
『黒い朝、白い夜』 岩井志麻子 |
岩井志麻子さんが赤裸々に綴る自分の恋愛記・・・と言うことでいいのかしら。ここに描かれていることが全て本当なのか、フィクションまじりなのか。たぶん正直モノは馬鹿を見るタイプに見受けられる志麻子さんのことダカラ・・・本当のことを痛々しい自己顕示欲でもって書きまくったと言う印象ですね。ベトナムのヒモ的愛人、韓国の男のことは今までの物語やスキャンダルで知っていました。でも新しい歌舞伎町にいる中国人の若い若い男の子のことと妊娠のことは知らなかったです。ずいぶんとスキャンダルになったらしい・・・のかな? あの結婚した編集者のジミーちゃんとはもう離婚したのかしら。それとも噂どおり偽装結婚だったのかしらん。妙な動きを見せる志麻子ねぇさんデアル(笑)。 物語の中でも繰り返し自分のことをスケベエなキワモノ作家と表現されているので、どうやらご自分のことは自分で一番良くわかっているらしい。芸能プロダクションに所属したから、ああもテレビに露出していたのだなぁ。なるほど。出たがりの志麻子さんらしい。岩井志麻子さんって人はものすごくエネルギーが強くて目立ちたくて注目されたくてしかたない少女だったのだろうと想像できます。だから今がきっと楽しくて嬉しくて少し小心に怖くしょうがないのではないか。自己顕示欲は満たされていらっしゃると思うから。 毒々しい毒花のような人だなぁと怖いもの見たさで見ている(読んでいる)のですケレドモ、どこかで落ち着くといいのに心配がたってきました。ベトナムと韓国の男でどうして我慢できなかったのだろう。なにも20も年下の男の子に夢中にならなくても・・・と思ってしまうケレドモ、素直で正直なだけなのかもしれないなぁ。ただご自分でもわかってらっしゃるようだけど、年頃の岡山のお嬢さんは本当に潔癖にイヤだろうし、辛いと思います。自分の母親の奔放なセックスライフなんて読みたくないに違いないもの。もう少し大人になれば女として理解してくれるかも知れないケレドモ、少女の時期にはあまりにも過酷。いじめに遭わなきゃいいけれど。 さて、嘘か誠かわからないケレドモ、物語で描かれた二度の妊娠→早期流産については・・・きちんと避妊をせんかい(怒)と腹だたしいx 若い女ではないのだから、せめてそういうことはキッチリしろよと腹が立って。だって傷つくのは自分なんだよ。どうしてそこまで女でいたいなら自分の女を大事にしてやれないのかなぁ。何人の男に股を開こうが自由だケレドモ、簡単に妊娠したり流産したりってのはどうにもこうにも許せない。読んでいて泣けた。ここまで書いて傷つくのはアナタでしょーにxって感じかなぁ。
2006年06月27日(火) |
DVD『KAZUMA≒AMUZAK 〜アムザック〜』&『KAZUMA≒AMUZAK 〜アムザック 最後の逆襲〜』 |
警視庁のエリートキャリア一馬は連続殺人事件を追いかけていた。被害者たちには分母13の分数が血文字が連続して残されていた。奔走する一馬のもとに妻の有貴がフィリピンで連続殺人事件に巻き込まれたと連絡を受け、フィリピンへ飛ぶ。連続殺人の舞台は日本からフィリピンに移ったのだ。有貴を探す一馬は謎の襲撃に遭遇。日本から公安の森本がやってきて事件はますますと混沌としていく。この連続殺人犯アムザックには日本政府が必死に隠したい秘密が・・・!? IQ140のアムザックの正体は、一馬とアムザックが出会った時に暴かれる!?
少々(?)ネタバレいたしますが、DVDタイトルで想像がつくようにアムザックは一馬のクローン人間。10年ほど前に医学生たちが面白がってはじめたCプロジェクトがクローン人間を生み出してしまい、そのクローンは老化スピードが異常に速い・・・その特性のため政府がそれを利用して・・・と言う壮大な陰謀がアムザックという男に秘められている。成りは青年であるケレドモ精神は10歳の少年アムザック、そしてその元である一馬との心の交流。一馬がアムザックに対して父親にも似た愛情を抱いて行く過程はホロリといたしました。しかし、どうしてこうも素材がいいと言うのに大雑把な映像なのかしら。陰謀の大元となったもと医大生チームの関係・関連性についての表現があまりにも少ないからわかりにくかったのではないか、と。一馬と結婚した有貴が隠していた使命についても詳しく描いて欲しかったし、有貴が一馬に惹かれて行く流れも有貴とアムザックとの関わりも観たかったですね。・・・そう、せっかくの素材だから詳しく丁寧に観たかったと思います。作り手は流れも真相も知り尽くしていても観客はハジメテ観るのだということを忘れないで欲しいなぁ。
2006年06月26日(月) |
DVD『渋谷怪談2』 |
綾乃は自分を産んで亡くなった母の死に負い目を感じ、父親が自分を死していないと感じていた。孤独な綾乃にとって家庭教師のリエカは姉のように慕える存在。そのリエカが恐怖から廃人となり死にゆく瞬間、綾乃の手に鍵を握らせる。友達も少なく辞めたクラブの先輩にいじめられる綾乃は渋谷を歩き回り、コインロッカーを探し当てる。そのコインロッカーはプレゼントを入れておいて告白するとうまくいくという伝説になっていた。噂を信じてロッカーを使用する少女達に次々と襲い掛かる恐怖・・・。巻き込まれた綾乃の運命は・・・!?
とある講演会で伝説になるには「なにかがあった」という流れに気付き、ますます都市伝説ものに興味を抱いてレンタルしてみたこの1本。伝説のサッちゃんよりもヒロインをいじめる少女達の無神経な悪意の垂れ流しが怖かったです。どうしてあんなに無神経に人を傷つけることができるのだろうなぁ。ヒロインの綾乃を演じたのは堀北真希(漢字が違うかもx)ちゃんは今の時代のアイドルらしい。ホリプロ路線の昔ながらの素朴なアイドルって感じ。今より少し前だからか本当に初々しい高校生、少女でした。この物語はシリーズ作品を全部観てみないとわからないのかもしれないなぁ。ラストの「死んだらよかったのに」だけはゾゾゾときましたケレドモね。サッちゃん、子供だから手加減も容赦もないんだよなぁ。
2006年06月25日(日) |
『鬼や神と人は云う』高田崇史講演会in東海高校 |
作家の高田崇史さんが名作『鬼神伝』→鬼神人云→『鬼や神と人は云う』と言うテーマでハジメテの講演会をされました。もともと塾で講師をされていただけあって堂々たる&飄々たる語りっぷり!で密かにドキドキ心配していた家来もといファンとしてはホッとしたのでありました。脱線しますよ宣言通りにアチラコチラへ話が飛び火して御交流のおありになる作家さん話は嬉しいこぼれ話でありました。『あやしい』と言われるのが実は高田先生の口癖なのですケレドモ、そのあやしいなと感じられて発展してQEDシリーズが生まれているのだとよくわかりました。そういう感性から探求がはじまるのですね。鬼という記号に隠された悲しい存在に目を向けられるところに作家・高田崇史の人としてのカタチを見ているのだと気づかされました。飄々ととぼけたふりした憎い奴!(笑) そこに実在していたから言葉によって語られたことがあるから伝説が生まれる。文章に残らなかったものに目を向けてバックボーンを想像して探ってみる…そんな姿勢から高田崇史と言う作家の伝説が生まれ続けていくのでしょう。以上、証明終わり。
続・タカタカ講演会QED 嘘か誠か塾の講師はクビになったとか。ご本人曰く当時流行っていたオニャンコクラブの歌詞を懇切丁寧に説明したりして父兄からクレームがきたらしい(笑)。秋元康さんの詩はあなどれない!と言われていました。オニャンコ好きでいらしたとは意外や意外。講演会場となった東海高校は森さんとか大沢在昌さんの出身校だそうですよ。さすが名だたる進学校。私も公演前にご一緒した熱田神宮は草薙の剣を祀っている・・・こういう物質を祀るって珍しいそうです。講談社のA藤さんに話が何度も及び(笑)A藤さんのように○藤という苗字の方は藤原氏の血を継ぐ者だそうです。高田先生のかなりお気に入りの伊勢神宮は不思議がいっぱいだそうで普通神社にあるものが伊勢神宮にはナイということでナニがナイか「そこの帽子の人」と指されたのは私です(汗)x 答えは注連縄。伊勢神宮は伊勢神宮なのに一宮ではないし、注連縄はないし、そのくせ周りの家に注連縄がある・・・とお好きなだけあって熱弁にございました。おかげで気になってたまらない、伊勢神宮。昔から残る風習の不思議についてもいくつか語られていました。神輿に水をかけることや豆まきのことなどなど。もののけ(妖怪と言うのは水木シゲルさんが言い出したby京極夏彦)にしても想像上のものと言うより、実際存在していた何かが言葉を変えカタチを変え伝説になったのではないかというようなことをおっしゃっていたと思います。よそものや村八分にされていた人たちが鬼や天狗や河童と呼ばれたのであろう・・・。うーむ。深い。当たり前すぎて文章に残されなかったものに目を向けてさぐる、これが高田先生の姿勢のようにお見受けいたしました。ざっとこのようなお話をされて質問を受けられました。高田先生が歴史上の人物でなってみたい人は石田三成だそうです。知力の人・高田先生らしい願望だなぁと笑えてしまいました。誠に温かくて楽しい講演会にございました。もしかしたらまたどこかで講演会があるやもしれない(笑)らしいので、その時にはいったいなにを語ってくださることでしょう。お忙しい合間を縫われての講演会だったご様子ですが、先生にもファンにも得難い体験だったのではないかと思われます。以上、またもや証明終わり。
2006年06月23日(金) |
DVD『ハートブルー』 |
新人FBI捜査官のユタはロサンゼルスに赴任し、やる気満々。発生している連続銀行強盗の捜査に当たることとなる。この強盗団は大統領のマスクを被り、スピーディに強奪し、人を傷つけない。ユタは現場に残った手掛かりからサーファーたちに潜入する。ボーディというカリスマ性を持つリーダーとその仲間達は海に空にスポーツと恋愛を謳歌する魅力的な軍団だった。彼らに馴染み、ボーディに魅了され、友情を感じ始めたユタだったのだが・・・
この映画はねー、もう大好きで大好きでたまらない映画のひとつなのであります。パトリック・スウェイジの男くさい魅力満載! 海でも空でもおおらかで冒険魂あふれていてカッコよくってメロメロ。何度観ても風景の美しさと男の友情のせつなさにやられてしまいます。よく書くことなのですケレドモ、好きな映画によくキアヌ・リーブスが主演しています。ほんと偶然にも脇役が大好きで観ると主演がキアヌってこと多いのですよね。キアヌ自身は全く好みではないのでありますが。こういうことも不思議だなぁって思います。映画を観ていて。 今まで観て心の琴線を振るわせた映画のDVDを少しずつ揃えています。これもまた楽しいことで。海モノで言うとジャン・レノの『グラン・ブルー』が欲しいのですケレドモ、生産も在庫もないのよねぇ。なんとか探して手に入れたいものであります。海モノはドキドキしちゃって大好きなのよねぇ。
2006年06月22日(木) |
『踊る天使』 永瀬隼介 |
鹿島英次は歌舞伎町のぼったくりバーの雇われ店長。ある夜、英次の夢のために風俗で必死に働く恋人からメールが入る。《さよなら がんばて》・・・それは火事に遭遇した恋人が煙にまかれながら最期の力を振り絞って寄越したメールだった。その火災は放火だと知り、英次は復讐に立ち上がる。そして連続する放火殺人の背後にバブル時代の闇経済の真実が浮かび上がり・・・!?
放火によりエクスタシーを感じる、そんな性癖を持ってしまったら、この世は地獄ですね。全てを焼き尽くす火の猛威に立ち向かう消防士、まさに命がけでしょう。火によって人類は進化したんだなぁと思いますケレドモ、火に魔力があるのも真実なのでしょう。浄化する=火で焼き尽くすという構図もよく目にします。この物語では悲惨な生い立ちの中で火に魅入られてしまったふたりの男の壮絶な人生が語られていて、狂乱のバブル時代の経済についても語られています。バブルの時代ってこんなだったのか、と背筋がうすら寒い思いをしつつ読みました。踊る人、踊らされる人・・・踊りを冷静に眺める人。どれになるかで人生は決まってしまうのかもしれません。冷静な目線が必要なんだろうなぁ。むずかしいことだなぁ。
『踊る天使』 2006.5.25. 永瀬隼介 中央公論社
2006年06月21日(水) |
『さくら草』 永井するみ |
ローティーンの女の子をターゲットにしたジュニアブランドのプリムローズ。従来の安価さより素材&デザイン重視の高級感を徹底し、少女達に受け入れられ急成長を遂げている。ジェネラルマネージャーの日比野晶子はプリムローズのブランドイメージUP確立に必死になって奔走する毎日。社長兼デザイナーの桜子はフワフワした夢見る少女のままなので晶子の負担は増すばかり。ある日、プリムローズのお洋服を着た少女の死体がラブホテルの駐車場に遺棄されていた。過熱するプリムローズブームゆえプリロリと呼ばれるプリムローズ・ロリータの犯行か!? 少年課の刑事・白石理恵は女性ならではのファッション感性を武器に事件に立ち向かうのだが・・・。
女の子はいつだって御洒落して自分を可愛く見せたい。その深層心理に目を向けた高級志向のジュニア・ブランド。高価で素材&デザイン重視のブランドに熱中し、翻弄される少女と母親達。なんだか現代世相の一部をうまーく切り取っている物語でした。いいものを欲しい、身につけたいという思いを商売にするアパレル業界。踊る阿呆は自分の阿呆さ加減すら見失ってしまう。過熱する先に起こる事件の真相もまた人間の心の闇を映し出し・・・うーん、なかなか面白かったですねぇ。ただ残念に思ったのは刑事の白石理恵が中途半端だったこと。彼女の心の傷もチラリと描かれますケレドモ、もう少し踏み込んで欲しかったです。晶子に負けないくらいに描いてもらえてたら言うことなかったんだけどー。
「服の趣味は、如実に人間の内面を映し出すものだと思います」
『さくら草』 2006.5.30. 永井するみ 東京創元社
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