酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年06月10日(土) |
『棄霊島』上 内田康夫 |
浅見光彦は「旅と歴史」の藤田からピンチヒッター取材を頼まれ、長崎県五島列島へ旅をすることに。飛行機ギライの浅見はフェリーに乗り、元刑事の後口能成という老人と知り合う。カメラが趣味だと言う後口と意気投合し、気のいい後口は浅見を島の案内を買って出てくれる。後口から軍艦島の悲しい歴史を聞き、胸を震わす浅見だったが、後口は軍艦島に関してなにやら屈託がある様子が見て取れた。そして東京へ戻った浅見は、後口が事故死をしたと知らされて・・・!?
ミステリー会の寅さん(笑)こと浅見光彦ぼっちゃんは、またまた事件にすすんで巻き込まれてしまいました。今回の旅先は五島列島、隠れキリシタンの悲しい歴史だけでなく日本人の汚れた愚かな過去まで隠し持っていた。負の歴史を日本人はどう償って生きるべきなのか。汚れた歴史に目をそむけたままでいいのか。見ないふりをしてしまいがちな日本人気質について考えさせられています。下巻で内田センセはどうおさめてくださるのやら。起こったこと、起こしてしまったこと・・・その過去を変えられないのであれば、今をこれからをどう向き合って生きるかを考えなければならないのかもしれません。
過去は振り返らない主義 ー というより、振り返りたくない過去ばかりだ。その罰として生かされているような気がする。確か、死ぬことのできない罰があると聞いた。四十歳を不惑といい、その倍も生きていながら、不惑どころか妄執の雲に包まれたような生きざまを変えられない、己が性格はおぞましいばかりだ。
『棄霊島』上 2006.4.30. 内田康夫 文藝春秋
2006年06月09日(金) |
『グイン・サーガ108 パロへの長い道』 栗本薫 |
グインとリギアはマリウスとフロリーとスーティを連れて逃亡を続けていた。利発で可愛らしいスーティを父親の元に奪われる混沌を困難を避けるため、フロリーとスーティの平穏を守るため。あまりにも有名で伝説の豹頭のグインは大きすぎる存在ゆえ身を隠すに大変だった。追っ手から逃れ、グインたち一行は不思議な城へ紛れ込む。コングラス城の主カーディシュに悪意は感じられない。しかし不気味で不思議な城の中でグインは・・・!?
記憶リセットされたグインはリンダに会えば記憶が戻ると信じてパロを目指す。しかしタイトル通りにパロへの道はどうやらまだまだ長いらしい(笑)。なんだかこのダラダラ蛇行する感じが栗本薫さんの持ち味なんだよなぁと感動してしまいました(苦笑)。昨日、本屋さんのレジ横に積んであって迷わずプラスして購入! レジ横って言うのはホットポイントだそうで、見てしまうとついついプラス購入されるようなものを置いておくらしい。必然としてデスノートやら必ず売れ筋商品が置かれるわけで。グイン・サーガも必ず売れるシリーズなんだなぁとしみじみしました。去年末から読み始めたグイン・サーガは本当に面白い世界です。長くて壮大だから忘れてることも多いのですケレドモね。えへへ。さて、記憶を失った悩めるグインも愛らしい。記憶を失ってリンダを求めてるってのがグインのココロ模様である気がしますね。完結するまでは絶対に死なないで欲しい>栗本薫!とまたしても切に願うのでありました。だけど栗本薫ってものすごーく長寿って気がする、なんだか。妖怪?(笑)
『グイン・サーガ108 パロへの長い道』 2006.6.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫
2006年06月08日(木) |
『渚にて』 久世光彦 ※内容に触れています! |
クルージング・スクールに参加した少年少女たちが海難事故に遭遇、辿り付いた孤島で生き抜くことになる。冒険モノでもファンタジーでもなく、ひたすら生きるために智恵を絞り、現実に向き合う少年少女たち。なんとまぁヘビイなサバイバルさ。生と性・・・若いから当然で。だけど一人の少年が二人の女の子にモテモテで関係もっちゃうてのはあり得ないー! それに女の子が妊娠はするのに生理について描かれていないって不自然だった。読んでいて女としてはソレが一番問題なんだぞー!と今は亡き久世さんに突っ込んでみたり。ラストにも大いに疑問を感じるぞー!と天国の久世さんに叫んでみたり。ラストだけは幻想と言うかファンタジーでありました。いやむしろ残酷物語って感じも・・・x あり得ない。しっかり者のリーダーの少年の苦悩や葛藤や壊れて行く過程は痛いほどにわかってしまって・・・そこは問題でした。私もたぶん似たように頑張って頑張ってプッツンして壊れちゃうよう。逞しく強かに孤島で生き抜いていける人間になりたい。そう思いました。あいあい。
『渚にて』 2003.9.30. 久世光彦 集英社
2006年06月07日(水) |
『続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム』 山田宗樹 |
笙は人生に迷ってしまっていた。就職に失敗、夢も目的もなくフリーターな毎日。恋人だった明日香は医者になる夢を追いかけ、笙と別れ、佐賀県の医大に入学しなおしていた。ある日、自分の歴史を売っている(下着など)ファニーフェイスのユリと知り合い、彼女に連れられて彼女の劇団へ行く。劇団の主催者ミックさんは一風代わった年齢不詳の男。笙は成り行きから舞台に立つこととなり、演じる魔力に取り付かれて行く。明日香は年下の彼氏に学生結婚を申し込まれ、悩み戸惑う。大きな病院の跡取息子である彼との結婚は玉の輿。しかし、明日香の医療への夢はソコとは違う方向を示していた。笙と明日香の生きる道は・・・
『続・嫌われ松子の一生』と言うタイトルなので、アノ川尻松子さんをどうやって登場させるのか興味深々で読みました。『嫌われ松子の一生』で松子の人生を辿る松子の甥・川尻笙のその後の人生を描くと言う形でした。まぁ、確かに松子のことを笙くんは追想するケレドモ・・・うーん。物語は面白かったです。嫌われ松子でナイスキャラだった沢村めぐみ姐さんもしっかり登場してくれて笙にいろんな言葉を伝えてくれるから。沢村姐さんは松子の分身みたいなもので粋で素敵な女性。こういうふうに年を重ねたいというカッコよさがあります。笙も明日香もトテモいい子で、人生に迷いながら悩みながら自分の生きる道を見つけてまっすぐに進もうとする・・・ほんと気持ちいいほどに、羨ましいほどに。笙と明日香のその後をまた読みたい。『続々・嫌われ松子の一生』で(笑)v
「世の中の人がぜんぶ、自分と同じわけじゃない。よく考えたら、そんなの当たり前だよね。価値観、習慣、その他、みんな違うってことを、まず認める。認めた上で、その違いを尊重し、受け入れる。・・・・・・そう、共感じゃなくて、尊重するんだよ」
『続・嫌われ松子の一生 ゴールデンタイム』 2006.5.20. 山田宗樹 幻冬舎
2006年06月06日(火) |
TBS昼ドラマ『我輩は主婦である』 |
クドカンに寄る初昼ドラ!?なので録画してはチェック中のこのドラマ。お、おもしろい。夏目漱石が主婦に乗移っちゃって現代を観察しつつ、驚きつつ、なんとなく順応すると言う・・・実はどこかで読んだことがあるような設定(笑)。まぁ、それは森鴎外が現代にタイムスリップしてきてモリリンなんて呼ばれちゃうのでちょこっと違うケレドモ、テイストは似てるかな(笑)。でもそこはほれ奇人変人天才クドカンの脚本だから笑える、笑える。乗移られちゃう主婦のみどりちゃん役はスケ番デカ(違う)斎藤由貴さんで、彼女がうまいのよね。みどりちゃんの気障な亭主・赤パジャマことタカシ(ミッチー)の母親が竹下景子さん=泣き女で、二大女優の掛け合いが漫才みたい。竹下景子さんが姑しかもおばあちゃんナンテお嫁さんにしたいナンバー1も寄る年波には勝てないのか。がくり。みどりちゃんと漱石=我輩が出たり入ったりしちゃうのを御向かいのクリーニング屋のやすこちゃん=なまはげ(大受け!)がやたらめったらヤナ家(あ、みどりちゃんの嫁ぎ先がヤナさん)に出入りして食べるわ飲むわ寛ぐわ悪態つきまくるわのやりたい放題なんだケレドモ・・・彼女が最高にいいっ!!! 元レディースでちょっくらお馬鹿ちゃんなんだけど愛嬌があって憎めない。亭主も子供もいると言うのに変な女なの。子供が「おかあさんゴハン」と言うと「向かい(=ヤナ家)で食べて来い」と平気で本気で言うような女。彼女は池津祥子さんと言う女優さんで聞き覚えのある声だと思っていたら池袋ウエストゲートパークでキングの女=ジェシーを演った女優さんだった。あれってインパクト強かったもの。クドカンファミリーなのでしょう。これから楽しみな女優さんだわv あ、そうそう忘れちゃいけないヤナ家の家業、無論勿論古本屋さんデス。みどりちゃんに乗移った漱石が漫画を読んで(ケンシロー)面白い・・・と言わせるあたり、クドカンならではだなぁ。テーマソングもトッテモらぶりぃで(斎藤由貴&ミッチーのデュエット)どうやら「うたばん」に出演する模様。またミッチーがぶっ飛ばすんだろうなぁ。期待。期待。
2006年06月05日(月) |
映画『ポセイドンアドベンチャー』 |
豪華客船ポセイドン号はカウントダウンを目前にパーティで盛り上がっていた。誰しもが新年を祝い、喜び合う中で海底地震発生・・・大津波がポセイドン号を襲い、豪華客船は転覆。上下さかさまになった船はどんどん浸水が始まる。上になっている船底の厚み他の部位より薄く、そこから救助がくるはずだと信じたスコット牧師と数名の命をかけた冒険が始まった・・・!
現在、公開中の映画『ポセイドン』は『ポセイドンアドベンチャー』のリメイクで、設定だけは同じで登場人物や人間模様は全く新しいものとなっているそうです。カート・ラッセルとリチャード・ドレイファスと言うお気に入りの俳優さんが出演されているので『ポセイドン』を見に行きたいと思っていたところ、テレビで『ポセイドンアドベンチャー』を放送してくれました。らっきーv 70年代前半の映画ですケレドモ、なかなかよかったです。ジーン・ハックマン演じる神父さまの苦悩や神への問いかけが胸に痛くて・・・。自分の人生を自分で選んで進む厳しさを教えてくれる映画でした。
2006年06月03日(土) |
『獣の夢』 中井拓志 |
1995年、ある小学校で猟奇的事件が発生。夏休みに学校へ忍び込んだ小学生たちが屋上で遊ぶうちに一人の少年が頭を強打して死んでしまった。彼らは熱に浮かされたように少年を解体して捨てた。屋上から撒いたのだ。事件は世の中を震撼させ、彼らの中にいたひとりの美少女に注目をした。世間は少女をこう呼んだ、『獣使い』と。そして9年後、またもや同じ学校でバラバラ死体が発見される。その直前に少女は当時の担当刑事を呼び出し、「『獣』が戻ってきます」と告げていた。獣とは・・・、獣つかいとは・・・?
『獣』が抽象的でなんとなくわかるケレドモ核の部分を掴みきれないもどかしさが残りました。こういう異常な事件や何故だか似たような事件が連鎖していくことも本当に世の中に発生しています。結局、ハッキリと掴めなくて確かな言葉で表現できないからこそ恐怖や不安となるのでしょうね。この物語のヒロインの美しき獣つかいにもっともっと焦点をしぼって欲しかったです。面白かったケレドモ不完全燃焼で悶々としています。
『獣の夢』 2006.1.10. 中井拓志 角川ホラー文庫
2006年06月02日(金) |
『無傷(むしょう)の愛』 岩井志麻子 |
嫌いなのに気になる存在、それを「裏のアイドル」「マイナスのアイドル」にする女。アイドルを見つめ続け、的確に悪意を届ける。それが快感・・・
岩井志麻子さんが描いた「ここだけの話」、それは立場が違えば顔がガラリと変わってしまう。言い分はそれぞれにあり。どちらが正しい訳でもない。しかしその顔にはくっきりと悪意が浮かんでいる・・・って感じの短編集です。一番怖いと感じたのは『偶像の部屋』でした。怖いって言うか解読不能ゆえに不気味でした。解読不能であるケレドモ、ありそうなのだもの。自分は心優しい善意の存在だと信じて疑わない女のうかつなまでの馬鹿さ愚かしさも悪意を撒き散らしていくし。人間の心の闇に潜むものはなかなか恐ろしいものだわ。
・・・・・・会社に、うかつな女がいる。悪気がないというのはわかっている。ただうかつなのだ。その女が、善意の顔でいったのだった。
『無傷(むしょう)の愛』 2006.5.25. 岩井志麻子 双葉社
2006年06月01日(木) |
映画『嫌われ松子の一生』 |
中島哲也監督と言えば、『下妻物語』の監督。それより前ではサッポロ黒ラベル(山崎努VS豊川さまの卓球編)などのCMディレクターと言った方が有名かもしれません。「X’smap 〜虎とライオンと五人の男〜」のテレビドラマも手がけられていました。こうした流れを見てみると、いかに映像に魂をこめる方かわかりそうなものですね。その中島哲也監督がタイトルに惹かれ映像化した『嫌われ松子の一生』は原作とは全く違う世界を見せてくれました。『下妻物語』は意外に原作に忠実で成功したことを思えば、ここまでガラリと雰囲気を変えて成功してるってスゴイなぁと思いました。壮絶で悲惨な松子の人生をミュージカル仕立てでコミカルテイストを加え、悲惨だけど笑えちゃう・・・みたいな出来上がりでした。そこに賛否両論はあるのかもしれないケレドモ、私は原作に負けず劣らず素晴らしいと思いました。映像全てにぎっしり濃いものが詰まっていて目を離すことができない。こういう映像って見終わって疲れちゃいますけれどね。なんか虚脱しました。中島哲也さんの作品はこれからもものすごく楽しみだなぁ。 ヒロイン松子を演じた中谷美紀さんは綺麗でした。細いのに胸はあるし、スタイル抜群で風俗嬢の場面での色気あふれる演技の艶っぽさにはノックアウトされてしまう。あんまり好きな女優さんではなかったケレドモ、ハマリ役だったと思います。刑務所で知り合って親友となる沢村役の黒沢あすかって人はたまりません〜。見ていてゾクゾクしちゃう女っぷりですぅ〜。ドラマや映画でも気になる女優さんでしたがますます好きになりました。決して正統派美女ではないケレドモむちゃくちゃいい女v なによりアノ声がいい。ああ、思い出してもめろめろ。俳優さんたちはとにかく一癖も二癖もある役者さん揃いで贅沢な映画でありました。好き嫌いはハッキリ分かれそうな映画ですが、私からは超オススメ。ドン底から這い上がろうとした松子のこれからを観たかったなぁ・・・。
2006年05月31日(水) |
『虹の彼方』 小池真理子 |
高木志摩子は過去に恋多き女優と呼ばれていた。数々のスキャンダルを乗り越え、今は優しい夫を持ち48歳の落ち着いた大女優となっている。志摩子が座長となり舞台をやることになり、その原作者・奥平正臣と運命的に出会い、ふたりは激しく狂おしく恋に落ちて行く。しかし、正臣にも妻がいて双子の娘がいた。許されない関係ゆえ、ふたりの思いは燃え盛り行き着く果てに・・・
うーむむむむぅぅぅ。なんだかスゴイ恋愛モノを読んでしまいました。やっぱり女が描く熟女の激しい恋っておそろしく生々しいですね(苦笑)。どんなに美しくても48歳と言う年齢に女が女を意識しない訳が無いだろうなぁと想像できて・・・なんだか怖いなぁ、切ないなぁ、苦しいなぁ・・・と巡り来るその日を本気で真剣に憂えてしまいました。女が女をわかる恋愛モノって厳しい。美しい女優さんですらこうならば、一般ピープルはどうなるのよ。トホホ。 結婚して伴侶より他に目が行ってしまう、それはまぁあるかもしれない。それが家族も仕事も何もかもぶち壊してまで欲しいものとなったら、きっとそこは自分達も関係各位も巻き込んだ生き地獄。自分達はそれでも自分達の思いゆえだからいいとしても、巻き込まれて壊れて行く人たちは気の毒。だからって思いは止められなくて。うーん、深くて重くて苦しいことだなぁ。なんだかものすごくのめりこんで読んでしまいました。熟女が若い男と恋をする夢物語にはのめりこまないケレドモ、この路線はけっこうぐっときちゃいました〜。
「地獄の種類が違う、と言われてしまえばそれまでだけど、でも、少なくとも捨てる側には、それまで保ち続けてきた絆を一刀両断に切り落とすための覚悟がいる。それは何だろう・・・・・・そうだな、たとえて言えば、登山をしていて、ザイル一本でつながっている相手を、自分が生き延びるためにどうしても切り落とさなくちゃならない事態に陥って、どうしようもなくナイフを使ってしまう時の、あの地獄の悲しみに似ているのかもしれない」
『虹の彼方』 2006.4.15. 小池真理子 毎日新聞社
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