酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年05月10日(水) 『骸の爪』 道尾秀介

 仏像をテーマにホラー小説を書こうと思った道尾秀介は、親戚の紹介で滋賀県の南端にある仏像専門工房・瑞祥房へ取材に。迫力のある仏像たちに囲まれた真夜中、秀介は「・・・・・・マリ・・・・・・マリ・・・・・・」と言う不明瞭な声を聞き、頭の割れた仏像が血を流すのを目撃。不気味な不思議な目撃を友人の真備に相談し、ふたたび調査に赴くのだが・・・!?

 うまい。不気味さをしっかりと敷きつめておきながら、謎に落ち(説明)をつけてしまいました。なるほどなぁ。声の謎はなんとなく想像がつかないでもなかったのですケレドモ、血の謎は解けなかったなぁ。人間の奥深いところに隠された想いと言うのは表に出ないがいいですね。出てくると大変なことになってしまう。人間ってやっかいだよなぁ。

「でも、きっと人の心なんて、軽軽しく論じることはできないんだろうね」
「鬼も仏も、そこから生まれるんだものな・・・・・・」

『骸の爪』 2006.3.25. 道尾秀介 幻冬舎



2006年05月09日(火) 『陰日向に咲く』 劇団ひとり

 仕事に行き詰まり、自分にとっても自由の象徴ホームレスのコスプレをするうちにホームレスになってしまう男。小学生の時に好きだった女の子を追いかけつづける男。夢見る夢子ちゃんな性分ゆえに男たちに弄ばれる女・・・

 現実とうまく折り合えない人間達の微妙にズレタ短篇集。物語の登場人物が次の物語に顔を出すという展開がなかなかウマイなぁと。独特の芸人さんらしい独特の捩れた世界。でもたぶんその捩れたところになんとなくシンパシー感じることってあるのかもしれない。だから売れたんだろうなぁ。

『陰日向に咲く』 2006.1.25. 劇団ひとり 幻冬舎



2006年05月08日(月) DVD『ティム・バートンのジャイアント・ピーチ』

 ジェームスは両親亡き後、叔母たちにこき使われる毎日。ある日、不思議な老人からもらったモノから大きな桃が育ち、その世界に迷い込む。そこで出会った虫たちと夢のニューヨークを目指して旅立つのだが・・・!?

 ティム・バートンはロアルド・ダールが好きなのですね。これもロアルド・ダール原作でした。少年ジェームスが桃の世界に入ったら、あのティム・バートンならではの人形達が大活躍! 現実での二人の叔母の怪演もあなどれないのですケレドモ(怪演と言うよりソノ風貌の恐ろしさと言いましょうか)、やっぱり人形達の愛くるしさったらたまりません〜。ゲストとして偉大なるキャラクターが海賊役で登場するもかなりサプライズで嬉しいv ハッピーエンドでほんと良かった。
 



2006年05月07日(日) 『作家六波羅一輝の推理 白骨の語り部』 鯨統一郎

 デビュー作がスマッシュヒット! しかし、その後まったく書けない作家・六波羅一輝。可愛い押しかけ編集者と取材に遠野へ出かけ、白骨死体を発見してしまう。その白骨は死後一年経過しているはずなのに、その本人は生きていた!?

 うーん(不満足な唸り)x 鯨さん大好きなのですケレドモ、このトリックは早々に見抜けますね。なんと言うか・・・もっともっとじっくり丁寧に煮込めばいいのになぁ。なんだかトッテモ残念で仕方なかったです。題材がいいだけに・・・。うーんxx

『作家六波羅一輝の推理 白骨の語り部』 2006.3.25. 鯨統一郎 中央公論社



2006年05月06日(土) 『異国の迷路』 坂東真砂子

 坂東真砂子が作家としてデビュー前に書かれたホラー短篇集です。旅先でふいっと出会ったようなコジャレたホラーと言う感じでした。ご本人もあとがきで書かれていましたが、デビュー前の青さも拝読できてなかなか興味深かったです。一番気に入ったものは「信じる?」ですが、夏木静子さんの旅先ミステリーで似たような設定(落ち)があったことを思い出しました。本人は悪気なく旅先で落としてしまった災厄の種。その種を拾った人間の死とその復讐。人間っていつ何時なにをやらかしていることか・・・と怖くなること請け合いです。うう。

「信じることは、真実となる」

『異国の迷路』 2006.5.1. 坂東真砂子 JTBパブリッシング



2006年05月05日(金) 『インディゴの夜 チョコレートビースト』 加藤実秋

 晶は名物オカマなぎさママに拉致されてママの店に行ったところ、強盗に遭遇。ママの男らしい(笑)立ち回りで撃退できたのだが、負けん気の強い晶は強盗にママのバッグを投げつける。タトゥをチラリと覗かせた強盗はバッグを持って逃走。そのバッグはなぎさママのペット・まりんの入った特注キャリーだった。なぎさママに攻め立てられ、晶はまりん奪回に奔走するのだが・・・!?

 うひゃひゃひゃひゃ。このホスト探偵くんたちシリーズって本当に爽快だなぁ。映像化を期待してるんだけど。キャラたちが生き生きとしていて文字だけに収まっていたくないって風情。見たいなぁ。動く彼らを。今回の事件たちも様々な背景を抱えていて興味深いです。お手軽なコノ世の中、そうインスタントになんでもかんでも処理できるわけじゃないってことだよねぇ。

『インディゴの夜 チョコレートビースト』 2006.4.20. 加藤実秋 東京創元社



2006年05月04日(木) 『紙魚家崩壊』 北村薫

 北村薫さんの物語を久しぶりに読みました。静かで怖くてうまくて・・・さすがだなぁと思いつつ、あっと言う間に読了。中でも「紙魚家崩壊」と「溶けていく」は怖かったなぁ。静かなる狂気・・・人間誰しも心のどこかに持っている恐怖なのではないかしら。

「様々な小説の中に、様々な人生がある。そいつを欠番のないように、総て自分の棚に閉じ込めようという執念が、まあ、いってみれば神の怒りに触れたんじゃないかな。世界を受け止めるには、この家はやわ過ぎたということさ」

『紙魚家崩壊』 2006.3.20. 北村薫 講談社



2006年05月03日(水) 『終末のフール』 伊坂幸太郎

 8年後に小惑星が地球に衝突し、世界が終る・・・その発表から動乱の5年が過ぎ、滅亡まで残すところ3年となった。5年間で大概の悲劇が巻き起こり、それなりに落ち着いた後3年・・・人々はこの残された3年をどう生きるのか。

 うーん、参りましたネェ・・・。えっとですね、あと8年で滅亡、残すところ3年となった世界で生きる人たち、死のうとする人たち、新しい出会いをする人たち、命を生み出す人たち・・・いろーんなタイプの人たちが登場し、さりげなく物語りはリンクしていました。決められた死へ一斉にカウントダウンか。なんだかなぁ。極限で人間が浮き彫りにされてしまうってところかしら。うーん。恋旦那の死を目の前で看取った私としては死ぬことにジタバタって感覚がない・・・のではないかと思っているので。腹をくくってると言うか。いつかは誰しも死ぬし、と言うか。ああ、そうだな。ジタバタしたくないなって感じなのでしょうね。願望ですね。うん。

 「明日死ぬとしたら、生き方が変わるんですか?」文字だから想像するほかないけれど、苗場さんの口調は丁寧だったに違いない。「あなたの今の生き方は、どれくらい生きるつもりの生き方なんですか?」

『終末のフール』 2006.3.30. 伊坂幸太郎 集英社



2006年05月02日(火) DVD『フライ,ダディ,フライ』

 大好きなキャラクター舜臣(スンシン)をV6の岡田准一クンが好演。最高に素敵なパク・スンシンでした。あんまり素敵なので繰り返し流して観てしまっています。てへ(スーさん笑い)v 岡田クンは小柄なのだケレドモ、均整の取れた美しい身体をしていてメロメロにメロリンパ。私の中でハッキリくっきりキムサマの存在を越えたわー。対するオッサンを堤真一さんが演じてらして岡田クンをしっかと受けて輝かせてくださっていると言う感じ。個人的には好みの役者さんではないケレドモ、うまいなぁと思いましたねぇ。なんにしても『ガンバル』ものって観ていて清々しいです。頑張って頑張って頑張った先になにかを掴む、こうでなくちゃv DVDをいずれ買っちゃおうと思っているくらいに良かったです。オススメv



2006年05月01日(月) 『イルカ』 よしもとばなな

 キミコは恋愛小説家。素敵な男と恋に落ちたが、その男には年上で妻同然の存在があった。深みに嵌り、泥沼化することがイヤでキミコはあちこちへ彷徨い、いろんな人間に出会い、家に残る悪意にうなされる。そしてそこで妊娠していることに気付き・・・

 なんて言うか、ピュアで不思議なトーンは相変わらず。よしもとばななもよしもとばななにしか描けない世界をしっかと持っているんだなぁ。子供を産むと言う女性だけが経験できることを経て、よしもとばななは何かをつかんだのかもしれません。私は子どもを持たなかったし、もう持つこともないケレドモ、描かれた子供を育む尊さ暖かさは心にスッと馴染んできました。女性なら誰しも心に染み入るように読めるのではないのかしらね。

 淋しさはウィルスのようにまず全身にしみこんでいって、体から抜けていくのに時間がかかる。毎回もうだめだと思うけれど、毎回けろりと立ちなおる。私が私であるということは、なんとすごいことだろうと思う。治癒と時間の関係については、いくら考えても奇跡だと思わざるをえない。それ以上の善なる力はこの世にないとさえ思う。

『イルカ』 2006.3.31. よしもとばなな 文藝春秋



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