酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年04月20日(木) 『今夜は心だけ抱いて』 唯川恵

 47歳の母、17歳の娘。離婚のために離れて暮らしていたふたりが同居することになる。しかもある突発的出来事でふたりの心が入れ替わってしまい・・・!?

 心の入れ替わり・・・唯川恵さんにしてはベタな題材を持って来られたなぁと思ったケレドモ、あーらヤラレタ。すごい内容になっていました。女の女ならではの醜さや欲望や焦りが二人の女の心を入れ替えることでこうまで鮮やかに浮き彫りにされてしまうとは。いやはや読んでいてオソロシカッタですね。天晴れでした。女としての曲がり角を越え、焦りまくる母親は17歳アゲインに浮かれ喜びまくる。これはホントわからないではないですね。失笑しつつ「わかるワカル」と思いました。ただ・・・残酷な事実もたくさん気付いてしまうのですケレドモね。いきなり30年間を増量して47歳になってしまった娘、こちらの瑞々しい感性には感動しました。これってコノ娘って素晴らしいわ。なかなかこうはいかないんじゃないのかなぁ。これはファンタジーな気がします。綺麗過ぎるの、このコってば。女をやってることにため息をつきながら、よしまたやってくべーvと何故だか元気までもらってしまいました。驚愕のエンディングここに至るまでの感情の運びは素晴らしい巧の技でした。いやぁ、実はラストに泣けました。・・・私は、私にはこのラストは耐えられない。残酷で厳しすぎます。はい。オススメv
 追伸、個人的にミチルという脇役美女が意外に好きで彼女の台詞の「駄目よ、自分でおばさんなんて言ったら。おばさんっていうのはウィルスみたいなものだから、受け入れちゃったら、瞬く間に増殖するの」ってのに大きく同意しました。だから私は自分をおばさんだナンテ絶対に言わないものvv そしてあるナイスミドルの言葉に心打たれました。↓こんなふうに言えるように年を重ねたい。

「まあ、そうだな。でも、寂しいのは事実だよ。ありきたりだけど、出会いもあれば別れもある、それが人生だ。ただ、こうして五十年生きてみてわかったことがある。人生は生きてみないとわからないってことだ。ま、みんなも楽しんで生きてくれ。じゃ乾杯」

『今夜は心だけ抱いて』 2006.3.30. 唯川恵 毎日新聞社



2006年04月19日(水) 『お見世出し』 森山東

 京都に出張に来た私は同期にお茶屋へ連れて行かれる。お茶屋とは舞妓遊びが出来る場所。未踏の場所へ恐る恐る足を踏み込み、可愛らしい舞妓・小梅と出会う。八月八日にお見世出しをしたと言う小梅が語り始めた恐怖の物語・・・

 京都と言う街の魅力は多々あれど、私は何より血みどろの歴史に魅力を感じます。怨念と怨みの渦巻く京都、ふと迷い込んだらもう戻れないような、そんな街。この『お見世出し』は京都の中でも狭い舞妓さんの世界を描いていて、不気味でありそうで本当に怖かった。さすがはホラー大賞です。

「六道さんの迎え鐘の日どす。つまり、地獄の釜の蓋があいてる日どす。こんな日でもよろしおすんやね?」

『お見世出し』 2004.11.10. 森山東 角川ホラー文庫



2006年04月18日(火) 映画『プロデューサーズ』

 会計士のレオはブロードウェイ・ミュージカルの《元》売れっ子プロデューサーのマックスの帳簿の管理に出向く。レオの夢はプロデューサー。落ちぶれて色ボケ婆様たちから金を巻き上げているマックスの帳簿を見ていて、制作費を集めて→すぐにコケれば大金を丸儲けすることが出来ると呟く。それを聞いたマックスは最低の人材を集めて、最低のミュージカルを製作して丸儲けしようとする。集めた変な人間ばかりで出来上がったミュージカル、それが大当たりしてしまい・・・!?

 最高に楽しい映画です!!! もともとブロードウェイで大ヒットを飛ばしたミュージカルの完全映画化。ああ、この舞台を観たい観たい観たい〜!!! 貯金をおろして大枚はたいてでも観たいくらいの素晴らしさ。このふたりの舞台も最高傑作だったに違いないですよね。なんて人生は可笑しくて楽しいのだろう。生きてるって素晴らしい。笑えるって楽しい。ちっぽけなウジグジなんて吹き飛ばしてくれる大きなパワーを持った映画です。超オススメvって言うか、必見デス。



2006年04月17日(月) 『怪談人恋坂』 赤川次郎

 郁子の16歳年上の姉・裕美子が死んだ。寝たきりだったケレドモ、いつも優しい微笑で力づけてくれた。その死んだはずの裕美子から伝えられた悲しく衝撃的な郁子の出生の秘密。その時から郁子の周りで殺人事件が多発しはじめて・・・

 赤川次郎さんとか内田康夫さんとか大御所の作家さんの物語は安心して身をゆだねてソノ世界を遊べるので読んでいてとてもラクです。コメディ推理路線を読みたいとは思わないのですが、今は突如赤川次郎ホラー・ブーム・アゲインvなのであります。やっぱりうまい。うむ。

「言い回しの古くさい所は直しておきました。言葉は生き物ですから、やはり時代に合わせて行かないと」

『怪談人恋坂』 赤川次郎 角川書店



2006年04月16日(日) 『チェケラッチョ!!』 秦建日子

 沖縄の大自然の中、青春まっただなかな唯と透、暁、哲雄の3馬鹿トリオ。透は父親が脱サラして沖縄にやってきたウチナンチュー。唯は透を好きな訳ではない!ケレドモ気になって仕方がない。いけてる姉貴のミナ姉がどーんと年上のアメリカ人と結婚すると言うので唯パパは不貞腐れまくり。ミナ姉が大好きな沖縄バンドワーカホリックのライブに行き、3馬鹿トリオはヒップホップに目覚めてしまい・・・!?

 いやぁ、なんて楽しい物語なのでしょう。素晴らしいわ。映画化されたみたいなので映画も観たいくらいにファンキー。きっと鬱屈した気分なんて晴らしてくれるくらいに楽しいことでしょう。ウフフ。観にいこう。青春ストーリーの王道で胸キュンで爽やか、そしてほろ苦い。たった一度の10代。ああ、素敵〜。ちなみにタイトルの「チェケラッチョ!!」はラッパーが愛用する「Check it out!」というフレーズをもじった合言葉なのだそうです。なるほど。

「ま、言わずに陰で泣くよりさ、当たって砕けたほうが人としてはカッコいいぞってコト」

『チェケラッチョ!!』 2006.2.10. 秦建日子 講談社



2006年04月15日(土) 『【猿若町捕物帳】にわか大根』 近藤史恵

 南町奉行所同心・玉島千蔭は女ゴコロにゃ疎いケレドモ、捜査の腕は天下一品v
 若いおしかけ女房がやって来たり、人気役者が大根役者になりさがったり、怪しい錦絵師が登場したり、今回もなかなか賑やかながら千蔭はじっくり物事の本質を見極めて・・・

 近藤史恵さんの時代劇ミステリー「猿若町捕物帳」シリーズの最新作です。堅物の千蔭さんにイライラさせられつつ、こういうタイプって今はいないかも・・・と新鮮に惚れ惚れしてしまうと言う粋な構図が浮き上がります。何事にもお手軽なコノ世の中、千蔭さんみたいな人がいたらいいのになぁ、と。心にチクリと刺が刺さったり、ほっこり身体の芯から暖かくなったり近藤史恵マジック健在ですv

 あの人は馬鹿みたいに優しいから、持てないものまで抱え込む。

『【猿若町捕物帳】にわか大根』 2006.3.25. 近藤史恵 光文社



2006年04月14日(金) 『べっぴんぢごく』 岩井志麻子

 シヲは乞食をしながら女を売る母に付いて周って生きていた。母が死にキチガイの娘の代わりに分限者の娘となり、美しさを武器に生きはじめる。シヲの産んだ娘は不細工、しかし孫娘は別嬪。何故だか交互に美醜を繰り返すシヲの末裔なのだった・・・

 うーむ、志麻子ねぇさんはコノ手の物語りを描くと唸るくらいにウマイですねぇ。陰湿で淫靡で田舎特有の空気をまざまざと感じることが出来ます。志麻子ねぇさんが描くと美しさには必ず淫靡さとセット。清々しい美しさを絶対に描くことはないのですね。ここまで突っ走ると天晴れと褒め称えたいです。岡山の県北を舞台にしているそうですが、横溝御大シカリで岡山の田舎のイメージがおどろおどしく固定されちゃうことはなんとも複雑なのですケレドモ・・・うーん。

「この家は絶えりゃあせん」

『べっぴんぢごく』 2006.3.20. 岩井志麻子 新潮社



2006年04月13日(木) 『地に埋もれて』 あさのあつこ

 愛する男に埋められた優枝は白兎と言う少年に助け出された。二種類の藤の蔓が大樹に巻きつき花を咲かせている。花の色は薄紫と白。優枝は生きているのか、それとも・・・!?

 少し前にビッグネームの作家さん陣によるホラー・アンソロジーにこの『地に埋もれて』の中の一章が載っていました。不思議な物語で読み終わった後に納まりが悪い感じを抱いたのですが、こうして通しで拝読するとストンと胸に落ち着きました。あさのあつこさんの描く静かで不気味なホラー・ファンタジー。春の夜長にぴったりです。

「人はどうせ死ぬんやから・・・・・・だから、生きなあかんよ」

『地に埋もれて』 2006.3.30. あさのあつこ 講談社



2006年04月12日(水) 『チョコレートコスモス』 恩田陸

 響子は幼い頃から舞台に立ち、名声と人気を欲しい侭にしていた。恵まれた環境で優等生のままトップを走っていた響子がハジメテ焦りや嫉妬を感じた。それは従姉妹の葉月の主演映画の素晴らしさを実感したからだった。与えられ続けた響子が自分から欲しいと思った舞台のオーデションに関わるうちに、トテツモナイ天才少女・飛鳥と出会った時に・・・!?

 ウフフ、陸ちゃん版『ガラスの仮面』と言ったところですねv ものすごーく面白かったぁ。舞台に情熱をかける人たちをこんなふうに描くことができるなんてすごいなぁ。生まれながらのサラブレッドの響子と運命に導かれた天才少女・飛鳥が出会った時に見える世界・・・読んでて手に汗を握る感じでした。そして作中の舞台で演じられる演目が独特でホラーで恩田陸ここにあり!と鳥肌でした。ああ、陸ちゃんってば絶好調ですねー。

 芝居の場合、役者のみならず観客も演技することを必要とされる。舞台の上で起きている世界を信じ、舞台の上で役者が演じていることを信じる演技である。芝居は役者と観客との共犯関係によって成立するものなのだ。

『チョコレートコスモス』 2006.3.5. 恩田陸 毎日新聞社



2006年04月11日(火) 映画『コープス・ブライド』

 19世紀ヨーロッパ、ビクターは親の言いなりのまま政略結婚をする羽目に。婚約者のビクトリアは清楚で美しい女性だが、彼女の両親は家柄を重んじてビクターたちを見下していた。気の弱いビクターは今ひとつ乗り切れないまま結婚式のリハーサルに参加。しどろもどろのビクターは失敗ばかり。ひとりで練習をしていると指輪を落としてしまい、ひょんなことからその指輪がコープス・ブライドの指にはめられてしまい、ビクターは死後の世界へ呼び込まれてしまう。びくびくしながら戸惑うビクターだったが、死後の世界は破滅的に明るく(?)自堕落で魅力的だった。ビクターはビクトリアを忘れ、死者の世界で結婚してしまうのか・・・!?

 ああっ、ティム・バートン最高v 『ナイトメアー・ビフォア・ザ・クリスマス』に勝る出来栄えです。どうしてパペットたちにこんなにも生き生きと表情や感情が出るのだろうか。ホラーで不気味なタッチで描くミステリアスな死後の世界は本当に楽しそうで。人間界よりも死後の世界の方が生き生きしてるナンテとっても皮肉。何度観てもあきることない素晴らしい物語です。もう流しっぱです。コープス・ブライドが可哀想なんだ・・・。クスン。



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