酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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里佐が惰性で開いている店にかつて恋焦がれた男そっくりの少年がやってきた。高校時代に女達の憧憬と垂涎の的だったふたりの男を欲しいままにしていた真智子の子供に違いない。里佐は復讐の思いで少年を誘惑。そして少年の弟もまた憧れの片方の男と真智子の間に出来た子どもと知り、里佐は兄弟とも狂ったようにいただいてしまう。ある日、真智子が店にやってきて二人の息子の性欲処理をしてくれたことへの礼を述べ、そのお礼として・・・
うーん、かなり禁欲的に表現しようとしてみてもえらいエロエロになっちゃいますわねぇ(苦笑)。西澤保彦さんの問題小説(大笑)モリナツ・エロエロシリーズ第三弾の中の「うらがえし」の作中エロ話なのですよ。アハハ、長い説明だなぁ。どれもこれもエロチックまっしぐらで面白かったのでありますが、この作中小説が一番きましたわー。西澤先生の妄想爆裂っぷりが楽しいですし、なによりふたつの落ちがいいv 西澤先生うまいわぁ。シロクマもどき宇宙人も可愛いし、おおいに楽しませていただきました。が、しかし、18禁にした方がよろしいかと・・・。
と里佐は、名刺の裏に『西澤保彦』と書きつけ、改めて加地に手渡した。
『キス』 2006.3.31. 西澤保彦 徳間書店
2006年03月29日(水) |
WOWOW『巷説百物語 飛縁魔』 |
江戸の町で男の黒焦げ死体が多発。男を虜にし、焼き殺す妖怪《飛縁魔》の噂が広がり、真相解明に又市たち妙なチーム4人がまたしても立ち上がる。そして又市を執拗に追いかける真兵衛に縁談が舞い込み・・・
京極夏彦さんの人気小説を堤幸彦さんが映像化した巷説百物語シリーズ第二弾であります。前回の『狐者異』よりトッテモ面白くなっていましたネ。又市チームの4人と脇を固める真兵衛さんたちの絡み具合がグーv 堤監督らしい小さなユニークさがアチラコチラに見え隠れしてる(笑)。見逃してる面白いシーンがもっとありそうだなぁ。又市役の渡部篤郎さんはカッコいい。陰間親父の治兵役の大杉蓮さんもウマイ。治兵さんは竹中直人さんでもいいかも。私が気に入っているのは真兵衛さん役の遠藤憲一さんv 舞台でナマを拝見した時にあまりの渋さに惚れちゃったのです。声もいいしステキーv まだまだ続いて欲しいシリーズなのでありました。面白かったわー。
2006年03月28日(火) |
『七つの黒い夢』 西澤保彦ほか |
乙一さん、恩田陸さん、北村薫さん、そして西澤保彦さん他という超豪華な作家さんのラインナップ! どんどん増刷されているそうですが、当然だと思います。これだけのビッグ・ネームの出来のいいブラッキーな短篇集なのですもの。乙一さんは久しぶりに拝読しましたが、なんだか大人になられた感じ。ますます面白さ倍増ですねv 陸ちゃんは残酷、北村薫さんはサスガのうまさ。そして大好きな西澤保彦さんの『桟敷がたり』は西澤保彦らしさ炸裂! こういう展開を描かせたら容赦ないほどだわ。うっとりー。他の作家さんの短編もGOODで一冊で何度も美味しい文庫であります。
『七つの黒い夢』 2006.3.1. 西澤保彦ほか 新潮社文庫
2006年03月27日(月) |
『猫目堂』 水名月けい |
とある山奥の小さなバス亭の近くに猫目堂と言う喫茶店がある。看板には『あなたの探しているものがきっと見つかります。どうぞお気軽にお入りください』と。そこを訪ねるお客さんたちは何かに惑い何かを喪失した人生の迷い子たちばかり。でも猫目堂の扉を開けてみたら・・・
なんと言うか、宮沢賢治を思います。不思議でセピアカラーで残酷で厳しくて優しくて・・・ああ私も猫目堂に行ってみたいなぁ。しみじみココロに優しい物語です。この物語は作者の水名月けいさんがネット上で公開されていた物語を纏めたそうです。すごいですよね。こういう確かな力を持つ物語はキチンと世に出てくるのですもの。そんなことにも感動しました。装丁に惹かれて大当たりでした。オススメです。
「いいえ。人生をやり直すのなんて、本当はとても簡単よ。間違えたと思ったら、そこからまたやり直せば良いだけのことだもの」
『猫目堂』 2006.3.15. 水名月けい 文芸社
2006年03月26日(日) |
『サーカス市場』 三浦明博 |
高杉は友人の浮田と飲んだ帰りに地下鉄の階段手前で倒れている若い男とその側から逃げ去る美女を目撃した。美女は毛鉤をピアスにしていた。なぜ毛鉤をピアスに? 彼女に惹かれ追いかけた彼らはサーカス市場に迷い込んでしまう。臓器売買が行われているとか、焼肉のメニューで臓器が焼かれているとか怪しげな噂に事欠かない場所だった・・・
サーカス市場と言う独特な場所で起きる事件に巻き込まれてしまう高杉。・・・巻き込まれると言うより自発的に巻き込まれてしまったと言うべきかしら。不思議で気持ち悪くて淫雑でなかなか好みな世界が繰り広げられています。淡々と語られるケレドモ、ええーっ!?って言うどっひゃーな事件の数々。面白かったなぁ。語り口がかなり好物なのでありました。
「意味意味意味、まったくいまは意味ばっかり求めたがる奴らが多すぎる。そう思わないか?」
『サーカス市場』 2006.2.28. 三浦明博 講談社
2006年03月25日(土) |
『ダ・ヴィンチ・コード』 ダン・ブラウン |
ハーヴァード大学教授ラングドンは、会う約束をしていたルーヴル美術館館長ソニエールの殺人事件に巻き込まれてしまう。ソニエールは死の時までのわずかな時間と瀕死の己の肉体を使ってメッセージを伝えていたのだ。現場に駆けつけた暗号解読官ソフィーとともにラングドンは壮大な謎に挑むのだが・・・!?
興奮して上下巻を読んだと言う感じです。ヒットした作品と言うものは侮れないものだと言うのが素直な感想。これだけ素晴らしい作品であれば売れに売れたことも納得です。映画公開を控え、文庫化もされたそうなのでまた爆発的に売れることでしょう。この感想を読まれた未読の方にもゼヒに読んでいただきたいです。 暗号とか美術とかで敬遠される方もおいでかもしれませんが、トテモわかりやすいです。このわかりやすい文章は翻訳の越前敏弥さんの手腕によるもでしょうね。イメージがわきやすいし、外国作品特有のとっつきにくさは全くありません。翻訳もセンスの時代なのだと痛感しました。宗教に疎い日本人にもこれだけスンナリわからせる力があるのですものね。すごいなぁ。 興奮してとにかくラストまで読みたくて読みました。なのでこれから映画公開まで何度も何度も読みたいと思います。細部まで頭に叩き込みたいくらい素晴らしい世界なのですもの。惚れ惚れするほど面白い。これだから読書はやめられないのですよねv 超大絶賛でオススメですw
「赦しの心は、神がお恵みくださった最高のものだ」
『ダ・ヴィンチ・コード』上下 2004.5.30. ダン・ブラウン 角川書店
2006年03月21日(火) |
『クジラの彼』 有川浩 |
言葉の感性を見初められ、イケメンの彼をGETできた聡子。しかし聡子の恋愛は前途多難だった。なぜならばイケメンの彼の仕事は潜水艦乗りだったから・・・ うー、これものすごく気にいっちゃったんですv 恋人同士になるふたりの言葉の扱いがトッテモよくて。こういう恋愛っておおいにありだよなぁってしみじみほのぼのしちゃいました。聡子をかなり応援しちゃいましたもの。人を好きになるってトッテモ素敵なことだよなぁと思えた優れもの。ちなみに私的には潜水艦は「潜る」だと思います。沈むじゃなくて潜るだわー。
『SweetBlueAge』 2006.2.20. 角川書店より
2006年03月20日(月) |
『あの八月の、』 角田光代 |
結婚を控えた友と大学の部室にもぐりこみ、過去の想い出を映像で鑑賞する女ふたりの物語。ほろ苦い青春を回想させられました。酒とつまみをもって部室に潜り込むナンテそれさえもまだ青春って感じがするのですケレドモ。角田さんってうまい書き手さんですよねv
『SweetBlueAge』 2006.2.20. 角川書店より
2006年03月18日(土) |
『時は静かに戦慄く』 木宮条太郎 |
京都下鴨神社に由紀は合格祈願に来た。従兄で秘密の恋人の健一と一緒に。由紀は父の児童相談所で働きたいと言う夢があり、夢実現のために浪人して同志社大学を受験するのだ。その帰り道、由紀は同級生の明子をが健一の父(警察官)に逮捕される同級生を目撃する。彼女はコインロッカーに産んだ赤ちゃんを捨てていたのだ。そして由紀は木乃伊化して笑っている赤ちゃんを見てしまい・・・
いやぁ、すごかったです。さすがに第六回ホラーサスペンス大賞特別賞だけのことはありました。今回の大賞作品の『キタイ』もかなり面白かったですし、ホラーサスペンス大賞関連作品は本当に侮れない。なのにどうしてこの大賞が今回で終了しちゃったんだろう。ぶんぶくぶーん(不満)。 この物語はどうしようもなくホラー。なにがホラーかと言うと幼児虐待の多発性→子殺し頻発という世紀末的なところが何とも凄まじかった・・・。ぐいぐいと読まされましたもの。ただ個人的な好みを言えば「どうして?」が全く解明されていなくって消化不良な部分は残りました。勿論きっとそれが持ち味であり、そういう意図的な流れだったのでしょうケレドモ、いったいどうしてそうなっちゃったの?と言う心に湧いた謎がそのまま残ってしまうと言う久々の放置プレイっぷり。参っちゃったなぁ。これはたぶん映像化してもかなり面白いと思うので大いに期待して待ちたいと思います。お後がよろしいようで・・・。
『時は静かに戦慄(わなな)く』 2006.1.30. 木宮条太郎 新潮社
2006年03月16日(木) |
『厭魅の如き憑くもの』 三津田信三 |
怪奇幻想作家・刀城言耶(とうじょうげんや)は神々櫛(かがぐし)村へ取材に赴いた。この村では憑き物筋の「黒の家」と非憑き物筋の「白の家」の対立があり、神隠しと言われる子供達の失踪が続いている。生霊に取り憑かれた少女、死んだはずの姉の存在に慄く少女、かつて不気味な体験をした少年・・・この村では今もまた怪異に怯えているのだ・・・
うー、しびれました〜。こういう幻想的な怪異物語でここまでキチンと読ませていただけるとおおいに満足であります。しかもキチンと謎解きもあり、ソノ上心をそそる《落ち》(=お約束)があって・・・。かなり好みなのであります。この世の中には不思議がいっぱいだなぁとしみじみ思うのですね。白と黒で割り切れるもんじゃないんだなぁ。
「谺呀治家は憑き物筋の家柄で黒、神櫛家は非憑き物筋の家柄で白 − などというように、白黒をはっきり決められることなど、実は世の中には少ないと思うんだ」
『厭魅(まじもの)の如き憑くもの』 2006.2.28. 三津田信三 原書房
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