酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年03月15日(水) |
映画『エミリー・ローズ』 |
神の問題を人間が裁けない・・・ラストの字幕に出た神父さまの言葉に頷いてしまいました。神の存在、悪魔の存在。日本人にはピンとこない感覚だと思いますが、世の中に奇跡は起こっているし、神も悪魔も存在する気がします。そしてやはり人間は無力なのかしら、いやいや人間にできることだってあるのじゃないのか!・・・なんてアレコレ考えてしまいました。 この映画はホラーではありません。実話に基づいた映画。実話に基づいてこんなことがあったってことは十二分にホラーだと言えますけど。エミリー・ローズと言う少女に取り憑いた悪魔。その悪魔を祓おうとする神父様。神父様の行動が彼女を死へ至らしめたと裁判が起こってしまった・・・その裁判で神父様の弁護をした女性がこの物語を書いたのだそうです。 映画を見ていて何故悪魔はエミリーを選んだのだろう? 悪魔が選ぶ基準は何なのだろう?とずっと思っていました。その答えをエミリーと一緒に知ることとなり、けっこう呆然としました。うーん(困惑)x こういうことを考える時にいつも遠藤周作さんの『沈黙』を思い出します。神の沈黙は何故なのか、と。しっかりとした宗教を持つことは強い事なのかもしれませんね・・・。うーん。
2006年03月14日(火) |
『KAIKETSU! 赤頭巾侍』 鯨統一郎 |
久留里一太郎は浪人。寺子屋で子供達に読み書きそろばんを教えながら、その裏で怪傑(解決?)赤頭巾侍に変身し、世の中の悪を切り捨てていた・・・!?
鯨統一郎さんらしいスピーディでユーモラスな短編集でした。久留里さんは早とちりでワルモノを成敗し、勘違いに気づいて慌てて(笑)、しかし頭脳でキッチリ解決する、という流れ。ワルモノに違いない相手を成敗した後で自分の間違いに気づき一瞬あわあわする久留里が可愛らしい。でもキッチリ頭脳で解決v だからやっぱり解決赤頭巾侍が正しいのじゃないかしらーん。
『KAIKETSU! 赤頭巾侍』 2006.2.28. 鯨統一郎 徳間書店
2006年03月13日(月) |
『秘密クラブ、海へ行く!』 椹野道流 |
藤堂要平はインターハイ目前に平常心を失っていた。真面目な要平は自分に充分な力を持っているにも関わらず、特待生として恥じない成績を残したいがゆえの焦りだった。長期出張(?)から戻った黒崎理事長もなにやら夢見が悪いらしく体調が優れない様子。そこで秘密クラブの面々は気分転換と療養を兼ねて海へ合宿に行くのだが・・・!?
笑顔が癒しや清浄の力を持つ真透くんがキュートな秘密クラブ・シリーズも3冊目となりました。椹野道流さんの描かれる世界はトテモ読みやすいのですケレドモ、物語の中にたくさんのメッセージが込められていてあなどれないのですよね。さくさく簡単に読み捨てるシロモノではなく、なにかココロに清いものが残ります。それって椹野道流さんの人となり、もしくは清純なココロが投影されているのだろうなぁと思います。今回も仲間が仲間を思いやる大切な暖かいものを読み取れました。こういう物語を読んで若い人たちがどんどん本を好きになってくれると嬉しいなぁ。
だからと言って気が緩むわけではなく、鼓動は相変わらず速かったが、頭からはすっと余剰な血が下がっていった気がした。
『秘密クラブ、海へ行く!』 2005.12.1. 椹野道流 小学館パレット文庫
2006年03月12日(日) |
『ストロベリーナイト』 誉田哲也 |
姫川玲子は27歳で警部補昇進、警察庁本庁捜査一課殺人犯捜査係の主任。そこそこの美貌とスタイルに恵まれた玲子は、同僚からのセクハラにめげず働いている。ある日、丁寧に梱包されながら放置されている遺棄死体が発見され、玲子は持ち前の勘の鋭さで捜査の核心へ。一緒に捜査する公安あがりの勝俣は何故だか玲子を目の敵にし、かつて玲子が巻き込まれた事件のことを・・・
面白かったです! 姫川玲子が良かったですし、異様なオッサン勝俣もまた良いキャラでv 勝俣の常軌を逸脱した玲子への関心についてもう少し掘り下げて欲しかったくらい。勝俣のアナザー・ストーリーって言うのもいいかもしれないなぁ。物語の犯人については冒頭で登場するので、おおまかな輪郭はつかめてしまいます。また黒幕についてもなんとなくわかっちゃうかな。でもそれでもぐいぐい読ませてくれる面白さ炸裂でありました。たくさんの屈折を盛り込み過ぎていて描ききれていない勿体無さはあるかもしれないなぁ。ひとりひとりが主人公になれると言うことでもありますね。あ、なにやら大絶賛してますねぇ。好きなんですよ、こういう物語。ウキウキ。
「いいか。人間なんてのはな、真っ直ぐ前だけ向いて生きてきゃいいんだよ」
『ストロベリーナイト』 2006.2.25. 誉田哲也 光文社
2006年03月11日(土) |
『輪廻』 大石圭 原作:清水崇 |
大森は娘・千里の背中に亡くなった妹・美弥子と同じ黒子を見つけ、娘は妹の生まれ変わりであると信じ、おかしな実験を始めた。ネズミに焼き鏝で印をつけ、殺すのだ。それは生まれ変わりを確認する実験だった。そして同じ印をつけたネズミの誕生を確認し、次に大森は人間を殺しまくった。殺した人間に印をつけ、生まれ変わりの確認の目印とするために。そして35年後・・・
清水崇監督の映画『輪廻』のノベライズです。清水さんと言えば発禁寸前ビデオ『呪怨』v あのビデオの怖さは私が見たホラーでナンバー1の怖さを誇るシロモノであります。なかなかアレを越える怖さはないだろうなぁ。あんな怖い思いしたのってホラーで初体験だったもの。近いくらいに怖かったのは『富江』かしらねぇ。どちらも不条理な怖さ。理屈のつけられない恐怖って考えるだけでも恐ろしいー! この『輪廻』も映画をまだ観れていないのでありますが、ノベライズが結構面白いので映画もいい出来なんじゃないのかしらん。なんと言っても異色俳優・椎名キッペイさまがホラー初出演されてるし。観たいなぁ。 人間の魂は何度も転生しているという説は、なんとなく心惹かれるのでありまする。よく生まれ変わりが話題になった人って言うのは若すぎる死や突然の死ゆえってことが多いようです。その衝撃が生まれ変わった先の魂までにもリセットされることなく持続しちゃう。たった一度の人生に前の人生が割り込んでくるって言うのはちょっと辛すぎることではありますね・・・。
わたしの娘。わたしの妹。来世ではいったい・・・・・・わたしの何になってくれるのだ?
『輪廻』 2005.12.25. 大石圭 原作:清水崇 角川ホラー文庫
2006年03月10日(金) |
『サイレン』 進藤良彦 |
天本由貴は、弟・英夫の病気療養のために父と共に夜美島(やみじま)へやって来た。この島では29年前に島民消失事件が発生し、たったひとりの生き残りがいたらしい。サイレンが鳴ったら外へ出てはならない、そう教えられた由貴が島で遭遇する奇妙な出来事・・・
堤幸彦監督の映画を観たいと思いながら読んで見たノベライズですが、どうやら小説のラストはアナザー・エンディングとなっている模様。この小説のラストが理解できていないので悶々としています。ラストの彼女はいったい・・・? 映画とゲームから小説が生まれ、アナザー・エンディングとは御洒落なものだなぁと思います。そしてやはり小説なのに映像を見ているような読みやすさが魅力。これは映画も観なくてはv さすがにゲームには手をださないケレドモ。
『サイレン』 2006.2.10. 進藤良彦 小学館
2006年03月09日(木) |
『ガール』 奥田英朗 |
奥田英朗さんらしいワーキング・ガールたちの物語。小粋だったり、頑張っていたり、腹の中で毒づきながらカッコいいヒロインたち。でも・・・これってちょっと違うわよねって言うのが女からの本音。物語だし、フィクションだし、違って当然なのだケレドモ、うーん、でもやっぱり「実際の女は違うよ。奥田さん」と言う微妙なところ。男目線なんだよなぁ。でも面白いことに違いなかったです。割り切って楽しめばよいのだろうに、なんだかちょっと反感を感じている自分が可笑しかったです。やっぱりワーキング・ガールでありたい女としては、それ違うよーってネ。ははは。頑張りすぎちゃうから、ガールは。
『ガール』 2006.1.30. 奥田英朗 講談社
里美は7歳の時に神隠しにあったが、その時の記憶がない。考古学を専攻する里美はフィールドワークで自分の故郷の村へ向う。そこは隠れキリシタンの村で奇妙な村八分状態の部落があった。古来よりソノ地域で7歳の子供ばかり神隠しにあうのはいったい何故なのか・・・?
伝説の諸星大二郎さんの原作が映画化されると聞き、観たかったケレドモ、観ることが出来ず、やっとノベライズを読めました。そうか、あの異端の考古学者・稗田礼二が登場するのだったかー(驚)v ノベライズを読んだらますます映画を観てみたくなってしまいました。木乃伊取りが木乃伊に。 日本に置ける宗教と言うのは、外国に置けるキリスト教のように絶対的なものはなく(と無宗教な私は思う)、それなのにキリスト教を題材にしてだいじょうぶなのか心配しながら読みましたが杞憂だったようです。日本であればこそ、こういうことありそうに思えたくらい・・・。読みやすいし、内容も面白かったなぁ。
『奇談』 2005.10.25. 行川渉 角川ホラー文庫
2006年03月06日(月) |
『レンタル・チルドレン』 山田悠介 |
息子が死んだ。喪失感から泰史と冬美は立ち直れずにいる。心配した泰史の兄から、P.I.(プレジャー・インビテーション)という子供をレンタルする会社の噂を聞く。ダメ元でP.I.を訪れたふたりは死んだ息子ソックリな子供をリストから発見。迷わずその子をレンタル、そして購入したふたりだったが・・・!?
なかなか面白かったです。設定も落ちもありがちかもしれませんが、この作家さんは着実に“面白く”描く力を磨かれている感じを受けました。若い世代がこの作家さんによって本の楽しさに目覚め、読書の迷宮へ迷い込んでくれたらいいなぁと思える物語でした。読書のとっかかりは手軽なものでよいのではないかと考えます。これはそう言う意味で読みやすいし、謎だし、適度にホラーだし、なかなかいいんじゃない、と思った次第でありました。
『レンタル・チルドレン』 2006.1.25. 山田悠介 冬幻舎
2006年03月05日(日) |
『盗作』 飯田譲治+梓河人 |
彩子の弟カヅキは聾児。聴力が全く無いカヅキだが、家族に愛され、不思議な力を秘めていた。彩子の幼馴染のミチは美しい少女。彩子とミチの同級生で女王様である紫苑は、自分より目立ってしまうミチを敬遠していた。ある日、彩子はトテツモナなにかを体中に受取り、一心不乱に1枚の絵を描く。人々の心に感動を呼び、魅了してやまない絵。彩子はあっと言う間に熱狂の渦に巻き込まれてしまう。有名な画家に認められ、前途洋洋に思われた彩子だったが、紫苑がその絵をかつて見たことがあると気づく。それは原野アナンのモザイク『天を走る』という作品。天国から一転、彩子は盗作疑惑の地獄へ突き落とされるのだった・・・
すばらしーいv 大好きな飯田譲治さんの物語、しかもあの『アナン』の流れを汲む物語を読めることができる幸せ。たまらない読書タイムでした。上下巻なんて気にならないでさーっと読まされてしまいました。ああ、飯田譲治さんの世界は映像であれ、物語であれ、愛しいなぁ。素晴らしいなぁ。手放しで褒めちぎっちゃう。『アナン』は文庫化され、『アナン、』と改題、そして大幅改訂されたとか。買わなくちゃ。買わなくちゃ。そわそわ。 今回のヒロイン彩子は、大きなエネルギーを受信し、表現することが出来てしまい、それが人生に数度も起こってしまい、彼女は翻弄されます。彩子がどこかでペシャンと潰れてしまうのじゃないかと心配でハラハラしどおしでした。でも家族と友人に支えられ、彩子の彩子だけの人生を全うします。なんてスゴイことなんだろう。 飯田譲治さんの物語には救いや癒しが散りばめられていて、読むヒーリングだと思っています。出会いは『ナイト・ヘッド』(テレビ版)でした。サイキックな兄弟が大変な目に遭いながら、岬へ到達する物語。あれも大きな癒しだったわ・・・。なつかしい。今回の物語にアナンはチラチラ影を落とします。アナンも頑張っているんだなぁ、と昔馴染みの近況を知ることが出来て嬉しいような心持なのでありました。
「世の中のほとんどのことはわかんないまま過ぎていくけど、ちゃんと元気に生きていけるもんよ。いつか死ぬまでにわかるかもしれないし、わかんないかもしれない。そういうことがあるっていうことを覚えるのには、これはいいチャンスかもしれないけどね。ま、あたしたちが若いときにはいろいろあったわよ。娘に知られたらびびるような騒ぎもたくさん起こしてきたけど、人なんかそのうち忘れちゃう。思い詰めないで。ゆったりかまえておいで」
『盗作』上・下 2006.2.3. 飯田譲治+梓河人 講談社
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