酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年03月04日(土) 『シフト −世界はクリアを待っているー』 うえお久光

 とかげ男ラケルはセラを援護し、ミュージィ救出へ。この不思議な世界ではやるかやられるか。しかし、たとえ死んだとしても現実の世界に影響はない。この世界に戻れなくなり、この世界のことを忘れるだけだ。現実とソチラの世界をあちらへこちらへシフトする瞬間に「世界はクリアを待っている」という言葉が聞こえてくるのだが・・・

 いやー、参りましたな、コレは。シャッポを脱ぎます。面白くて最高にウマイ。ソノ上になんだか泣けてしまう。うーん、すごいもんだなぁ。『悪魔のミカタ』のうえお久光さんの初単行本! これはオススメです。ゲームをする人であるなら、さらに倍面白いと思いますv うえお久光さん、本当に面白かったので「敗北感」をしっかと感じましたよー!!!

「・・・・・・この、くそったれな世界のなかで、唯一、価値があるものがあるとすれば、それは          仲間、だ」

『シフト −世界はクリアを待っているー』 2005.7.30. うえお久光 メディアワークス



2006年03月02日(木) 『THE TEAM』 井上夢人

 目が不自由な人気霊能者能城あや子、飛ぶ鳥を落とす勢いの露出っぷり。彼女が《見る》相手の周囲での悩みや事件が、次々と解決、解消されていく。そしてその裏にはあや子をサポートする最強のチームの存在があった・・・!

 これは本当に本当に本当に面白い物語でした。世の中には不思議なことなど何にもないんだよ、ってことでしょうか(笑)v あや子に霊視してもらうクライアントの抱える問題も様々なものを見せてもらえるし、またザあや子チームのスタッフが最強に素敵なの。うーん、これはもう一度再読だな。

『THE TEAM』 2006.1.30. 井上夢人 集英社



2006年03月01日(水) 『快楽の封筒』 坂東真砂子

 引っ越した先の隣の主婦を狙う男、留学先イタリアの大学時代の男友達3人と寝る女、田圃で他所の亭主に抱かれる女、女子大時代にいきなりキスをしてきた女友だちと再会する女、旅先で美しい少年にハジメテの体験をする少女、女友だちの男にちょっかいを出す女、自分の性を母に理解してもらう事を諦めた女、隣の男に抱かれる様を亭主に目撃される女・・・

 出るわ、出るわ、エロい話のオンパレードっ!!! これがまた坂東真砂子さんの手に料理されると一筋縄ではいかない余韻を残すのですよね・・・。すごい作家さんだと思います。どれもこれもエロ・セクシーでめろりんめろりんになりながら読みましたが、一番身につまされたのは『母へ』でした。いろんな事情が織り成し、私にとって母親の存在は異様に大きい。荷となり、足枷にもなる。それでもソノ心を砕きたくはない・・・そういうことを思いながら読むと心にものすごく痛かったです。
 短篇集なので読みやすいですし、女の人にはオススメでありますよv

 これは、私がずっと心の中で、お母さんに出しつづけてきた手紙。お母さんは、これをたびたび受け取ってきたはずです。だけど、私はこの手紙を書かなかったふりをし、お母さんもまた、読んだりしたことはなかったかのように振る舞ってきた。
 この手紙は、書かれたけれど、存在しなかった手紙。いつか、この手紙を読む日が来るのでしょうか、お母さん。

『快楽の封筒』 2006.1.25. 坂東真砂子 集英社文庫



2006年02月26日(日) 『青山娼館』 小池真理子

 親の愛情を不足して育った奈月は、妊娠を機に男と別れシングルマザーとなった。娘・舞のために必死で働く奈月。しかし、奈月の母に預けて働きに行ったある時、舞は事故死してしまう。愛情を娘に与える事に人生を見出していた奈月は絶望のどん底に落ちていく。そんな時、高校時代の友人・麻木子とバッタリ再会。麻木子は娼婦を生業としていると言う・・・

 うー(困惑)、フィクションとして読むにはトッテモ面白い物語でした。ただどうしても身体を売ると言う行為に拒否反応があるため、そういうやり方で命を再生すると言う感性は理解できないのですね。ことに奈月が出会う麻木子の愛した男との出会いや関係はまったくわからなかったの。私はひたすら単純だからなぁ。どういう流れであれ、友人の愛した男とどうこうってのもわからないのでありました。娼婦としての麻木子の様々な体験談は興味深かったです。性ってものは深いものだなぁ・・・。なかなか強烈に面白い物語でございましたv

『青山娼館』 2006.1.31. 小池真理子 角川書店



2006年02月25日(土) 『キタイ』 吉来駿作

 文句無く面白かったですv 設定としては映画の『ペットセメタリー』をどうしても思うし、既に世に出た物語のいろんな要素をあちこちに見掛けはしました。それでもひたすらにドキドキ楽しめたのですよね。幽霊に怯える登場人物たち。彼らが何故に幽霊に付きまとわれることになったのかがわかる空恐ろしい彼らの共通の過去。そしてとある不思議な儀式《キタイ》とはいったいなになのか。とにかく何故と謎が散りばめられていて、登場人物が大変なのであるケレドモ、妙に魅力的で。キィとなる兄妹はかなり不気味できてます、来てますv この作品をもってホラー・サスペンス大賞が幕を下ろしたそうです。楽しみにしていた賞なのでトッテモ残念。これの映像化をキタイしています。

「人間は、思い出を残したがる。写真を撮り、アルバムに貼る。日記をつけ、昔話をする。無意識に自分を残そうとしてるんだ。思い出を残せば、自分の命が続くことを、うすうす感づいている。だがな、そんなことで思い出が残るわけがない。アルバムに貼った記念写真など、何の役にも立たない。ただのクズだ」

『キタイ』 2006.1.20. 吉来駿作 幻冬舎



2006年02月24日(金) 『グイン・サーガ106 ボルボロスの追跡』 栗本薫

 《風の騎士》は、かつてアムネリスに恋焦がれていたアストリアスだった。アストリアスはローラがアムネリスのお気に入りの侍女フロリーであり、彼女の息子はイシュトヴァーンとの間に出来た子供と知り、イシュトヴァーンに復讐するためにローラ母子を狙っていたのだった。グインの機転により、アストリアスの心を動かし、ローラ(フロリー)から手を引かせる事に成功する。しかし、今度はイシュトヴァーンの手のものにフロリー母子とマリウスが連れ去られ、グインとリギアは・・・
 
 恐るべし、栗本薫。グインと誰か(しかもソノ誰かが主役級のキャラばかり)と言う組み合わせを惜しげなく描いてください始めました。うーん、今回のグインとリギアってのは全く頭に無かったですからね。度肝を抜かれました。またグイン・サーガの世界で私的三大いい女の筆頭がリギアなので嬉しくてたまらないのですケレドモね。ああ、リギアがグインの片腕を無事果たし、いつかはスカールと結ばれますように。あのふたりには幸せになって欲しいのよ・・・。ね、朝の連ドラ気分でしょ。なんだかもはや知り合いなのですもん。ああ、次はいつ出るのかなぁ。なんて狂おしく待ち遠しいのことなのであろうか。ううううう。

『グイン・サーガ106 ボルボロスの追跡』 2006.2.10. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年02月23日(木) 『グイン・サーガ外伝20 ふりむかない男』 栗本薫

 カラム水、それは食の細いアルド・ナリスの好む飲物。マルガで寝たきりとなり、療養中のナリスにフェリシア婦人がカラム水にからむ不思議な噂話を運んできた。不自由な身体に明晰すぎる頭脳、退屈をもてあましていたナリスはカラム水にからむ奇怪な事件を調べ始める。動けないナリスに代わって地道に調べて周るのは勿論ヴァレリウス(笑)。ナリスが解き描いてみせたカラム水に関わった者たちの事件とは・・・

 グイン・サーガを読み、その麗しい姿と魂の高潔さに誰より心惹かれたナリス様。この方の壮絶な人生とソノ最期は活字中毒人生でハジメテの号泣でありました。あれだけ心揺さぶられたことは今だかつてありません。そのナリス様不在となった後も物語は続きます。それはそれで人生と同じように「それでも人は生きていかなければならない」から、なんだか本当に人生を読み解いている感覚ですね。
 そしてココがナマモノな人間と違ってフィクションの人物の素晴らしさ、今は亡きナリス様でも過去を描く事によって、またきらきらした彼と出会えうことが出来ました。たぶん作者の栗本さんも嬉々としてナリス様と再会されたことだろうなぁと思います。なんだか良かったねってつぶやいてしまいました。物語の中の人物がここまで影響を及ぼすってトテツモナイことですよね・・・。
 これからもナリス様の事件簿を読み続けたいと願っています。寝たきりの時であるなら助手はヴァレリウスで、若き時であるならば助手はリギアとマリウスに。なんと登場人物の層の厚いことよ(驚愕)! まだまだ栗本さん元気でいていただかないと、それぞれの人物にそれぞれの物語があるのでしょう?(苦笑)

『グイン・サーガ外伝20 ふりむかない男』 2006.1.10. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年02月22日(水) 『グイン・サーガ105 風の騎士』 栗本薫

 《風の騎士》の狙いは、清らかなローラの息子スーティだった。ローラとスーティと《風の騎士》の正体を知ったグインは、混濁した記憶ながらスーティを守る決意をする。幼いスーティが誰の子であろうとも、健やかに愛を感じて育って欲しいと願ったのだ。そしてまた運命の風に吹かれて再びめぐり合った美しい女騎士リギアの助けを借りて、グインは闘う・・・

 《あとがき》で栗本さんも触れてらっしゃいますが、第二世代がぞくぞくと登場です。こうなるとお気に入りだった悪の申し子アモンにも戻ってきて欲しいなぁ。あと似たタイプばかりにしないで信じられないほどに美しいモノを生み出していただきたい。そうあの美しかったナリス様のような・・・(願望)。
 長い物語を読み進めてきて、またもやグインが己を見失って振り出しに近いところに戻らせてしまうナンテ、あくどいぞ!>栗本薫っ と言いながらも、そんな大変な目に遭っているのはグインだけで、他のキャラクターたちはしっかり記憶鮮明だから、前と同じって訳ではない。こうなると作家・栗本薫の心身ともに健康であってくださることを心から祈るばかり。ここまで読んで未完なんてことになったら暴動が起きるわよ。とにかくどんどこ書き進めてくれ、栗本薫っ。あ、栗本薫さまっ!(年長の大御所を呼び捨てにしては大変だ)

 ちなみに私の周りで興味はあれどもソノ長さに手を出せないと考えてる方が数名いらっしゃる。私も最初はそう感じていましたが、読んでしまうと寧ろ逆でしたよ。最初の数冊をクリア(よほど厳しかったらしいx)したら、引き込まれ、馴染み、さくさく読める系なので、忙しい方の合間読書にこそオススメです。例えるならばNHKの朝の連続ドラマみたいなもん。短く毎日って感覚なのー。だから、忙しい貴方の移動読書にこそオススメよー。きっと出勤や帰宅にグインたちに会えることが喜びとなるはずですv 超オススメvv

『グイン・サーガ105 風の騎士』 2005.12.10. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年02月21日(火) 『グイン・サーガ104 湖畔のマリニア』 栗本薫

 スカールと別れ、マリウスと再会したグインは己の混乱した記憶を修正すべく、心に引っかかった名前《リンダ》に会いに旅を続ける。グインとマリウスが辿り付いたミロク教徒たちの村で、ローラという清らかな美女と彼女の息子スーティに出会う。その村付近で“光の騎士団”を率いる《風の騎士》という不思議な人物が出没し・・・

 まさか、こんなところにアノ人が!?って展開でありました。これがグイン・サーガの油断ならぬところで、長い物語の中の膨大な登場人物が長い長い時を経てひょこっと再登場するのですね。しかーも、前より大変ななにかを抱えて! うー、面白いなぁ。すっごく面白かった。この巻も。
 個人的嗜好の好き嫌いで言えばイシュトヴァーンとマリウスなんてのは頭が痛いばっかりで「なーにやってんだ(怒)」ってことが多々。しかしながら、それなのに、ああ、それなのに魅力が増していくって栗本マジックに他ならない。以前ずっと人気投票をされていたようですケレドモ、イシュトやマリちゃん人気もわからないではないなぁ。それでもやっぱりああいうオトコたちは私にはNG。イシュトとマリちゃんは犬猿の仲だけど、子供のまんまおとなになったって点では同じタイプだと見ています。やっぱスカール様がええなぁ。でれでれ。

『グイン・サーガ104 湖畔のマリニア』 2005.10.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫



2006年02月20日(月) 『グイン・サーガ103 ヤーンの朝』 栗本薫

 グイン捜索隊のヴァレリウスやケイロニア戦士たちは、あたりの異様な魔界天象風情に動揺する。グインの気を求めて空に飛んだヴァレリウスが見たものは、壮絶な黒魔道師《闇の祭司》グラチウスと白魔道師《ドールに追われるオトコ》イエライシャの闘いだった・・・!?

 世界征服を目論む(?)ひょうきん魔道師グラチウスの底力をヴァレリウスが目の当たりをしたシーンが興味深かったですねぇ。グインの壮大な世界の中で忘れちゃならないのがコノ魔道師たちの存在。この魔道師たちが正義につくか、悪につくかで世界のありようを左右しかねないのであります。またこういう不思議な存在がグイン・サーガの世界をしっかと守ってくれている気がしています。確かにグインもイシュトヴァーンも超戦士ではあるのだケレドモ、そういう戦いのシーンにはそう食指を動かせない。まぁ、これは読み手の好みでありましょうが、私は魔道師の存在にかなり心惹かれるのであります。しかし、貧乏くじをひいた男が多い中、ヴァレリウスほど損するオトコは珍しいかも・・・。そして最初は全く眼中になかったキャラクターだったのに今は好き好きキャラに食い込んでしまったヴァレさんなのでありまする。

『グイン・サーガ103 ヤーンの朝』 2005.8.15. 栗本薫 ハヤカワ文庫



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