酔陽亭 酩酊本処
いらっしゃいませ。酔陽亭の酔子へろりと申します。読んだ本や観た映画のことなどをナンダカンダ書いております。批判的なことマイナスなことはなるべく書かないように心掛けておりますが、なにか嫌な思いをされましたら酔子へろりの表現力の無さゆえと平に平にご容赦くださいませ。
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2006年02月09日(木) 『神はサイコロを振らない』 大石英司

 1994年に乗員乗客を乗せたまま忽然とこの世から消えた報和航空402便が10年経った2004年に現れた。彼らは10年前のまま。彼らと彼らの関係者はとまどいながらも喜び、さまざまな波紋を巻き起こしながら、再び残酷な運命が容赦なくやってくる。

 今クールで一番楽しんで見ているドラマが『神はサイコロを振らない』なのです。原作と映像化と言うのは別物だと考えるようになった今日この頃、とりあえあず原作を読み、やはりドラマとはずいぶんと違っていることに気づきました。設定や登場人物や視点がかなり大きく異なっています。でも、原作は原作でドラマはドラマでとても面白いです。原作のいいところを抽出して作り変えている感じですね。
 原作の方は視点が乗客たちに置かれています。しかも人数がかなり多い。多くのいろんな状況の人間が10年という時の流れに置いていかれた末、なにを思いなにを残すのか。これがね、やはりホロリときましたね。社会的なことにもずいぶんと警鐘を鳴らしてらっしゃるし。そうか、1994年にはそんなことがあったな、とか、その後の10年でそんなこともあったなとか、そんなことも考えさせられました。人間は忘れやすい生き物ですね。忘れちゃいけないことだってたくさんたくさんあると言うのに。

 歴史にifは付き物でも、変えるべきじゃない。神はサイコロを振らない。人間はそれを受け入れるべきだ

『神はサイコロを振らない』 2005.12.20. 大石英司 中公文庫



2006年02月08日(水) 『魔女の笑窪』 大沢在昌

 かつてある場所での生き地獄から脱出した女が都会の闇の世界で生きている。たくさんの男を相手にしてきた女は、瞬時に相手を見抜き、さまざまな事件を解決する・・・と言った感じの、サバイバル・ストーリー。主人公がいったいどんな地獄を見てしまったのか、興味を持ちつつ読み進めました。こういう物語を読むと本当に男と女は別の生き物なのだなぁと思います。最後があっけない感じだったので、彼女の物語は続くのかしら。残った片方の笑窪すら失わなければいいのだけれども・・・。大沢親分の物語は好きですねぇ。エロさが良かったv

 何かが終った。それが私の人生そのものなのか、悪夢ばかりを見た長い眠りなのか、まだ答えはでない。

『魔女の笑窪』 2006.1.15. 大沢在昌 文藝春秋



2006年02月07日(火) 『グイン・サーガ外伝18 消えた女官』 栗本薫

 本編で今は亡きナリス様の若かりし日の物語です。こういうことができるあたりがフィクションの良さですよね。亡くなったらブッツリ終わりって言うリアルとは違って、作者さえその気になれば生きていた頃の話を生み出せばいいのだもの。ナリス様ファンとしては助かっちゃった気分です。12月からグイン・サーガを読み始めて、ナリス様を崇拝していた身としては、彼の喪失感たるや半端じゃなかったのですもの。だからこういうカタチでナリス様に再会できてことのほか嬉しい。また物語の内容も全く期待してなかったのですケレドモ、栗本薫さんらしいダークな展開でけっこう面白かったですねぇ。ああ、こう言う人間いるいる・・・と顔を顰めながら読みました。またナリス様に会えるってことは本当に救いにございます。

『グイン・サーガ外伝18 消えた女官 ーマルガ離宮殺人事件ー』



2006年02月06日(月) 『グイン・サーガ』91・92+外伝17

グラチウスの申し出を受け(?)、パロにいっしょに潜入するグイン。麗しの都と言われたパロは死の都と化していた。レムスに取り憑いたアモンを相手にグインは古代機械を破壊させようとするのだが・・・!?

 物語の始まりは、麗しの都パロを攻め立てるモンゴールの攻撃でした。92巻までの間、さまざまな敵によって翻弄されたパロにやっと希望の光が。しかし、それと引き換えにグインが・・・。あ”−っ、まさかこんな作戦を心に秘めていたなんて。やはりどこまでもグインは計り知れません。参ったなぁ。
 栗本薫さんのテンションたかたかの《あとがき》は、栗本薫さんをしっかり表しているようで興味深いものであります。ただ確かに自画自賛は多いなとファンでも感じます。だからそのことをしてきっと叩かれまくったのでしょうね。気の毒だケレドモ、言いたい人、書きたい人を止めることは難しいのではないでしょうか。匿名で卑怯だと言う栗本薫さんの憤慨もモットモです。でも匿名だからこそ言えるのでしょうね・・・。私は活字中毒の末端におりますが、読んで面白くないと感じる本についてどうこう意見はしません。意見できるほどのものではありませんから。悪口や批判は読んでいて楽しいものでもありませんし。だから「いい!」と感じたものについてのみ、ここにこうしてUPしています。発言の自由だと言いますが、書いた本人がいやなこと書かれていたら、それはいい気はしないでしょう。面白くもないものに美辞麗句を書き立てることもしませんし、面白くなかったからとこきおろすこともしません。甘い感想ばかりだとよく言われますが、それが私の読書へのスタンスです。

『グイン・サーガ91 魔宮の攻防』
『グイン・サーガ92 復活の朝』
『グイン・サーガ外伝17 宝島上・下』



2006年02月05日(日) 『アコギなのかリッパなのか』 畠中恵

 聖はオヤジの事務所アキラで事務員をやりながら、大学に通っている。オヤジは元国会議員で今でも若い政治家が集ってくる。天衣無縫なオヤジたちに振り回されながら、扶養家族の弟のために聖はいろんな場所に顔を出し、変わった事件に遭遇する。

 畠中恵さんが現代モノで舞台が政治がらみという珍しいアプローチで迫ってこられました(笑)。不思議なもので力のある方の物語はその人ならではの持ち味が必ず滲み出てくるものなのですねぇ。今回の政治裏話シリーズ(?)はこのまま続くのかしら。聖くんはひょっとしたら政治家になっちゃうの??? 私は王子が好きです(笑)v

 人間、生きてきた時間全てで、その身が出来ているものらしい。

『アコギなのかリッパなのか』 2006.1.25. 畠中恵 実業之書日本社

 



2006年02月04日(土) 『グイン・サーガ』86〜90

 アムネリスは後悔と孤独のうちにイシュトヴァーンの子を出産し、ドリアン(=悪魔の子)と命名し、自害。会いたくて会いたくてたまらなかった豹頭のグインにやっと巡り合えたナリスは、その美しく気高い人生を・・・。ナリスが本当にいなくなり、悲しみと喪失感に包まれるリンダ、ヴァレリウス、イシュトヴァーン・・・さまざまな人間に影響を与えた大きなが消えたのだ。しかし、パロはレムスの子アモンの登場で危機に瀕している。生きている者たちはそれぞれの矜持とともに新たな闘いに臨んで行く・・・。

 うわー、参ったなぁ。この自分的サーガあらすじを書いてるだけで鳥肌が立ち、涙が出てきちゃった。87巻の『ヤーンの時の時』は、おそらく新米グインファンの私にとって記念碑となりましょう。活字中毒人生も長いケレドモ、ここまで嗚咽して身が震えて、本当に親しい人を失った想いをしましたもの。そしてそのことに誰より自分が驚いたのでした。誰がなんと言おうと栗本薫はスゴイし、その豊かな才能を讃えます。この物語をありがとうございます。
 さて、今回の5冊で主要人物がふたりも欠けてしまい、ある意味いきなりの大盤振る舞いだなぁとあきれてしまいました。でもちゃーんと新しい種が発芽しているあたりウマイですなぁ、栗本薫。まだ断定は怖いのでしませんが、アモンはけっこう好きになる気がします。あんな美しい極悪さって好きだから。この壮大な大河ドラマの中で多くの登場人物がいて、どうでもいい存在だった魔道師ヴァレリウスを好きになっちゃったのにも驚いています。こういう自分の変化も楽しい。好きな人はどうあってもナリス様。タイプなのはスカール様とカメロン船長。どうしようもないけれど憎めないのは淫魔ユリウス。女性ではやはりリギアとオクタヴィアが好きですね。凛々しく美しいから。その反対でマリウスにはイライラしてしまう(苦笑)。いるのよね、こういう身勝手で自分さえよければいい奴。また自分じゃ気づかずすき放題やっちゃって、後になってワーワー反省するものだから性質が悪い。今のところ受け付けないのはマリウスとレムス。学習能力がなさすぎ。そういう点ではシルヴィアちゃんも似たとこかしらねぇ。うーん(困)x

『グイン・サーガ86 運命の糸車』
『グイン・サーガ87 ヤーンの時の時』
『グイン・サーガ88 星の葬送』
『グイン・サーガ89 夢魔の王子』
『グイン・サーガ90 恐怖の霧』



2006年02月03日(金) 『年下の男』 吉村達也

 景子は36歳バリバリのキャリアウーマン。ある日、偶然出逢った年下の男の子21歳の真琴と恋に落ち、結婚。母をはじめ、周囲の反応は冷ややか。唯一、父親だけが景子の味方だった。しかし、過去の情事の相手や上司のいきなりな恋ゴコロ告白により、景子の信じていたものが崩れ始め、そして現れた真実に・・・

 吉村達也さんって気軽に気分転換に読むにピッタリな方なのです。で、気軽に読んでいると、あれよあれよとジェットコースターのような展開で落ちていき、最後に「え、そうだったの?」と狐につままれたような感じが残るのです(笑)。とくに集英社文庫さんにおけるシリーズはちょっとばかりブラッキーで人間が憐れでお気に入りであります。真剣にこの物語はどうだ!とかしかの角度からしか読めないタイプの方にはオススメしませんが(や、出来ませんが)ふやっと読んで驚かされたい方には意外とオススメです。ふふふー。

「このマンションにもいられない」
「どうして」
「くるから」
「何がくるんだ。誰がくるんだ」
「くるから」
「だから、誰なんだよ」
「くるのよー」

『年下の男』 2004.4.25 吉村達也 集英社文庫



2006年02月02日(木) 『グイン・サーガ』81〜85 栗本薫

 グインはヤンダル・ゾックに憑依されたレムスに再会する。レムスは、美しく優秀で人々から愛される姉リンダと従兄ナリスの存在に心を歪めてしまい、ヤンダル・ゾックという闇の存在に付けこまれてしまったのだった。グインはリンダを連れ、古代機会で逃げ出すことに成功する。またイシュトヴァーンはスカールと戦い、スカールの圧倒的強さに負け、川へ飛び込んで逃げ惑う。人に愛されたい、信じたいという想いが強すぎるがゆえに猜疑心の固まりとなったイシュトヴァーンは傷ついた心と体にヤンダル・ゾックにつけこまれてしまう・・・

 80巻あたりから怒涛の展開を見せるグイン・サーガ。今まで登場した人物達がそれぞれの縁(えにし)ゆえに再会し、己の存在を再確認していく・・・と言う感じでしょうか。ここまで来てしまうと書き続けてきた作家・栗本薫の尋常ではないパワーを実感せずにはいられません。さまざまな人物が登場し、人としての器の大きさの違いがあり、それぞれに悩み苦しんでいる、そこがなんと言うか勉強になります。人っていうのは完成形はないんじゃなかろうか。おそらく人を見て自分を省みて反省し、成長する。その繰り返しこそが人を磨くのだと思う。そんなことをこの長く壮大な物語は教えてくれます。自分はこれでいいんだ、とか、自分はすごいんだ、とか、そんなふうに思っているならば、ああそれは勘違い。人間はおそらく命ある限り進化できる高みに昇れる生き物なのですよ。絶対に。絶対に。

『グイン・サーガ81 魔界の刻印』
『グイン・サーガ82 アウラの選択』
『グイン・サーガ83 嵐の獅子たち』
『グイン・サーガ84 劫火』
『グイン・サーガ85 蜃気楼の彼方』



2006年02月01日(水) 『グイン・サーガ』76〜80 栗本薫

 レムスは姉リンダを捕らえ、自分の怪しい姿と野望をリンダに語る。その頃、ナリス崩御の触れがパロを震撼させる・・・。さまざまな憶測と企てが飛び交う中、しっかりと世の中の行く末を己の目で見つめていたグインは、ついにパロへ・・・。

 『グイン・サーガ』を読む楽しみに栗本薫さんによるテンションたかたかの《あとがき》があります。その時代時代で怒り喜び一喜一憂する人間臭い栗本薫さんがトテモ魅力的だなぁと思う次第。その中で80巻までにはナリス様暗殺(栗本薫によるナリス様暗殺ネ)の企てがあったと知り、大ブーイングだったのですが。いやぁ、こんなカタチで“また”ナリス様は死んじゃったのねぇ。ナリス様御崩御あたりからは、それこそ寝食を忘れ読みふけっていたのであります。ここは間違いなく大きな大きな山場にございました。はい。
 しかし、タイトルロールのグインは本編不在だったりするケレドモ、出てくると確かに物語がしまるし、安心感がありますね。主人公の器のデカサを感じさせました。すごいー。

『グイン・サーガ76 魔の聖域』
『グイン・サーガ77 疑惑の月蝕』
『グイン・サーガ78 ルノアリアの奇跡』
『グイン・サーガ79 ルアーの角笛』
『グイン・サーガ80 ヤーンの翼』



2006年01月31日(火) 『私の遠藤くん』 吉村達也

 由美香は10歳年下の男の子と結婚し、「遠藤くん」ぞっこんラブな毎日を送っている。遠藤くんが仕事で不在の無聊を慰めようとテニススクールに行き、そこで知り合った女友だちに遠藤くんとのラブラブっぷりをのろけまくることが楽しみ。しかし、遠藤くんが同窓会に参加し、由美香の猜疑心は膨れ上がり・・・

 むー、なんだか背筋が寒い思いでしたなぁ。今、テレビドラマで『小早川伸木の恋』というのをやっていて、その主人公の妻が由美香タイプ。あそこまで執着すると相手を追い詰めるのみだってことにどうして気づかないのかしら。・・・結局は自分の事しか考えていないからなのだろうなぁ。まぁどんなトラウマがあろうとも遠藤くんも伸木も優しすぎます。考えられなーいx

『私の遠藤くん』 2005.10.25. 吉村達也 集英社文庫



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